へっぽこ勇者と色情狂いの王様

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ヴァイスのお願い

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びくりと身を震わせると、ヴァイスの哀しそうな目が合った

「ウール、怖がらないでくれ。君はまだ子供で、バース性の衝動もわからないと思うけど、君は運命で、君が好きで、君を欲しがっていることを忘れないで欲しい…」

運命?すでに迷信めいたそれは、運命の番と言われていて、相性が良く、出会った瞬間から強く惹かれ合うのだという

ぼくは、ヴァイスをどう思っているのか、自分ですらよくわからない

ただ、子供相手に必死な姿で手を取り、ぼくの言葉を待っているヴァイスを見るとなんとなく胸の奥がうずくような気もする


「よく、今はわかりませんが、大人になったら、わかるのでしょうか…」

「大人になったら、すぐにでも奪う」

ぼくの髪を梳きながら、唇を髪につけるヴァイスが悪戯そうに笑うのを見て、変な気持ちが沸き起こってくるようだ

褐色の健康そうな肌に、不思議な色の虹彩が輝くような瞳が嬉しそうに細められ、なんとなく気恥ずかしくなってきた

「旅に出すなんてとんでもない。ましてや魔族と戦わせるなんて……」

ぐっと肩を引き寄せられて、されるがままになっていると、首を舐められた

「ウール、忘れないで。力をつけたら、すぐに迎えに行くから。それまでは、なるべく戦わず、逃げるんだよ。戦いなんて同行者に任せればいいからね。ああ、どうしてウールが……」

嘆くヴァイスの髪を撫でていると、膝小僧を撫でられた

「誰にも触らせないでね?もし誰かが触れたら……」

泣きながらヴァイスに顔を覗き込まれて、こくこくと必死に頷く

忘れてはいけない、ヴァイスは暴君だということを

「今後はウールを見守ることも難しくなるのか…」

いつ見守っていたのかは、わからないがなんとなくぞわぞわしたので、ヴァイスの腕から抜け出して、勇者の剣に駆け寄る

重たくて、封印されまくっているので鈍器にしかならず、引きずりながらヴァイスに礼をする

「では、魔王を討伐するために旅立ちます」

「ウール…約束を絶対に忘れないでね」

腕から抜け出した後の、腕を眺めながらヴァイスは呟くように言うので、再び頷く

長時間になってしまったら、まずいような甘い空気が漂っていたので、早々に広間から退出すると、パンパパが心配そうな顔で、待っていた

「ぶ、無事かな?良かった。ベータ性の大人の冒険者3人と、パンがついていくから、ウール様は安心してくださいね」

後ろに控えていたであろう3人の男達が握手を求めてくる

「俺はゴルディ、戦士だ」

「僕はミルディコ、ヒーラーだよ」

「初めまして、俺はクイン、闘士だ」

ゴルディは体が大きく、ベータ性なのに随分体格がいい。しっかりと意思が強そうな顔をしている

ミルディコは柔和な男で、優しそうだ

クインは遊び人のような風貌で闘士には見えなかったが、なんとなく強そうに見える

まあ、パンと2人だけとかお子ちゃまだけで魔王討伐はないだろうなとは思っていたけれど







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