30 / 68
ヴァイスのお願い
しおりを挟むびくりと身を震わせると、ヴァイスの哀しそうな目が合った
「ウール、怖がらないでくれ。君はまだ子供で、バース性の衝動もわからないと思うけど、君は運命で、君が好きで、君を欲しがっていることを忘れないで欲しい…」
運命?すでに迷信めいたそれは、運命の番と言われていて、相性が良く、出会った瞬間から強く惹かれ合うのだという
ぼくは、ヴァイスをどう思っているのか、自分ですらよくわからない
ただ、子供相手に必死な姿で手を取り、ぼくの言葉を待っているヴァイスを見るとなんとなく胸の奥がうずくような気もする
「よく、今はわかりませんが、大人になったら、わかるのでしょうか…」
「大人になったら、すぐにでも奪う」
ぼくの髪を梳きながら、唇を髪につけるヴァイスが悪戯そうに笑うのを見て、変な気持ちが沸き起こってくるようだ
褐色の健康そうな肌に、不思議な色の虹彩が輝くような瞳が嬉しそうに細められ、なんとなく気恥ずかしくなってきた
「旅に出すなんてとんでもない。ましてや魔族と戦わせるなんて……」
ぐっと肩を引き寄せられて、されるがままになっていると、首を舐められた
「ウール、忘れないで。力をつけたら、すぐに迎えに行くから。それまでは、なるべく戦わず、逃げるんだよ。戦いなんて同行者に任せればいいからね。ああ、どうしてウールが……」
嘆くヴァイスの髪を撫でていると、膝小僧を撫でられた
「誰にも触らせないでね?もし誰かが触れたら……」
泣きながらヴァイスに顔を覗き込まれて、こくこくと必死に頷く
忘れてはいけない、ヴァイスは暴君だということを
「今後はウールを見守ることも難しくなるのか…」
いつ見守っていたのかは、わからないがなんとなくぞわぞわしたので、ヴァイスの腕から抜け出して、勇者の剣に駆け寄る
重たくて、封印されまくっているので鈍器にしかならず、引きずりながらヴァイスに礼をする
「では、魔王を討伐するために旅立ちます」
「ウール…約束を絶対に忘れないでね」
腕から抜け出した後の、腕を眺めながらヴァイスは呟くように言うので、再び頷く
長時間になってしまったら、まずいような甘い空気が漂っていたので、早々に広間から退出すると、パンパパが心配そうな顔で、待っていた
「ぶ、無事かな?良かった。ベータ性の大人の冒険者3人と、パンがついていくから、ウール様は安心してくださいね」
後ろに控えていたであろう3人の男達が握手を求めてくる
「俺はゴルディ、戦士だ」
「僕はミルディコ、ヒーラーだよ」
「初めまして、俺はクイン、闘士だ」
ゴルディは体が大きく、ベータ性なのに随分体格がいい。しっかりと意思が強そうな顔をしている
ミルディコは柔和な男で、優しそうだ
クインは遊び人のような風貌で闘士には見えなかったが、なんとなく強そうに見える
まあ、パンと2人だけとかお子ちゃまだけで魔王討伐はないだろうなとは思っていたけれど
211
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
αとβじゃ番えない
庄野 一吹
BL
社交界を牽引する3つの家。2つの家の跡取り達は美しいαだが、残る1つの家の長男は悲しいほどに平凡だった。第二の性で分類されるこの世界で、平凡とはβであることを示す。
愛を囁く二人のαと、やめてほしい平凡の話。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる