へっぽこ勇者と色情狂いの王様

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旅立つ前に

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「よろしくお願いします…」

大人に囲まれて恐縮していると、少し嫌な感じでニヤニヤしている3人に気がついたが、パンパパが気にしていないようなので、見て見ぬ振りをする

なんか嫌だなあ。パンが来るなら大丈夫かな?そういえばパンがいない

「パンは来ないの?」

パンパパに問いかけると、留守番をさせているから、後で合流するとのこと

まあ、宮廷に来られて、兄だと偽った匂いがパンだとバレてもマズいし、そのほうがいいか

恐らくアルファ性だと判明すると、ヴァイスあたりに反対されるからだろう

バース性が定かでない年齢ではあるが、何年かかるかわからない旅でもあるから多分反対される

「パンパパはついてきてくれないの?」

「行きたいのは山々なんだが、山岳の民俗の侵攻の防止のクエストを年単位で契約してしまっているんだよ。パンに任せておけば、大丈夫だから。年長者の言うことをよく聞いて、パンの後ろに隠れておきなさい。夜にパンと訓練するんだよ」

頭を撫でながら言われて、頷く

なるほど、パンが来れないのは、パンパパの代わりを務めているからか

子供あつかいされて、くすぐったくて胸が熱くなった

「わかった。訓練、ちゃんとするね」

「ああ、侍女をつけると言っていたが…ああ、来たようだ」

廊下の向こうから、この煌びやかな宮廷に似つかわしくない汚らしい格好の女が手枷と足枷をされたまま引き摺るように連れて来られる

うすら笑いを浮かべたカンナは目も虚で、異臭までする

ニヤニヤしていた3人も、ギョッとして、少し引いているようだ

「…カンナ!カンナ!ひどいよ、カンナ…湯浴みと手当をして準備をしてあげて」

駆け寄ると、カンナを連れてきていた侍衛が顔を見合わせる

「わかりました。侍女の準備の間、陛下が渡したいものがあるから、一人で陛下の部屋までくるようにとのことです」


自衛の言葉に口元が引き攣る

ヴァイスの私室に2人なんて危険すぎる。でも、命令も無視できない

どうしたもんか

「わ、わかりましたあ、パンパパ、部屋の前、途中までついてきて欲しいなあ。宮廷に1人で行くの怖いんだよ」

甘えるようにパンパパの腕をつかむと、侍衛たちは困ったように慌て始める

「くれぐれもお一人で来るようにとのことです!」

それが嫌なんだが

パンパパを見上げると、青い顔をして固まっていたので、ため息を吐いて諦める

仕方ない、1人で行くとするか

人ばらいをされているとはいえ、応接間より私室は危険な気がしてしまう

本当に大丈夫だろうか?

ヴァイスの私室に続く長い廊下を、侍女に先導されながら歩くと、大きな扉の一室に辿り着いた

ここが、ヴァイスの私室か



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