Amor et Odium

佐野絹恵(サノキヌエ)

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「旦那様、お嬢様がお話があるようです」  

私はセバスチャンに、サビーナがここに来た理由を尋ねる前に
セバスチャンは私に説明をした

「…サビーナ…」

セバスチャンがサビーナに私に話す様に促す
恐る恐るセバスチャンの背後から出て来たサビーナは俯いたまま
震えた唇から一生懸命に言葉を発する

「お…お父様…私……どう…なるの…?」  

サビーナの声はか細く
瞳には不安と恐怖の感情が込められている

言葉の意味は直ぐに理解した
恐らく屋敷内で噂になっている事だろう 
サビーナの耳に入ってもおかしくないはずだ

私はサビーナの身なりを、下から上へ目線を移す

…令嬢と言うには程遠い、身なり…これも、私のせいか

私は深い溜息をつき
椅子から立ち上がると、セバスチャンに告げる

「私はこれかサビーナと出掛ける
身支度と馬車を頼む」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
四輪馬車に揺られ森に向かっていた
屋敷を出て約1時間程経過した頃だ

今、私の目の前にはサビーナが座っている

馬車の小窓から外の景色を眺め、私は口を開く

「サビーナ、お前には説明してなかった事がある」

「……はい……」

サビーナは俯いたまま返事をする

「お前は屋敷に居たら命は奪われていた」

「………」

返事はないが私はそのまま話を続ける

「お前は使用人の間に出来た子だ
あいつ(お母様)に嫌われていたのもそのせいだ
お前が胎にいた頃は大きな騒ぎになってな──────────」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私はお父様の話を途中から聞くのを止めた

目の前に座る男に憎悪と嫌悪感が湧く
私の出生した生い立ち等どうでもいい

周りの噂話で嫌という程、聞かされている
さっさと結論を話せ、私はどうなる?

「…お……お父…様…私は…どうなる…のですか?」

私の発言に目の前の男は暗い顔をした

「お前は……すまない…命を奪わないといけない」

「……そう…ですか……」

私は俯いたまま呟く

「ここらでいいか…止めろ!!」

男の一言で馬車は止まる
男は馬車のドアを開けると、自然豊かな森林が広がっていた

「お前は…殺さない…行け!!」

男の言葉に私は馬車を飛び出し森の中へ駆け出す

背後からは馬車が走る音が聞こえた
馬車の走る音は小さくなり、次第に聞こえなくなる

私は後ろは振り向かず、前に足の歩みを進めた
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一体どれ程の距離を歩いたのだろうか?
辺りは既に暗くなっている

身体が…重い、足が痛い

私は足の歩みを止め、その場に座り込む
足に履いてる革靴を脱ぎ、ゆっくりと地面に身体を倒す

………………………

「……っ...…」

私の瞳からは大量の涙が流れる

屋敷では、いつも声を押し殺し涙を流していたので
必要のないこの現状でも
私は声を押し殺し、涙を流す

「…………………」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━私はいつの間にか、深い眠りについていた

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