Amor et Odium

佐野絹恵(サノキヌエ)

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私は村に戻って来た
本来なら喜ぶはず…しかし
私の傍にはサビーナとモルテがいる

あんなに信頼し仲が良かったサビーナも 
今では不信感と恐怖しかない

空を見上げる

陽は沈みかけ
村は夕暮れに染まっている

私は夕陽は好きなのだけれど…
今日に限っては、不気味に感じる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
屋敷の主に
サビーナとモルテ共に
私の住む村に向かう様に命じられた

始めは、家まで送り届けてくれるのかと思ったが
2人の様子を伺うと…そうではないと理解する

そもそも、私を家に送り届けるのであれば
仕事として村に送り込まない

屋敷を出る前
サビーナにフード付きのコートを渡される

「村にいる間は決してフードを下ろさないように」

と告げられ
様々な事を疑問に思いながらも
断る事が出来ぬまま了承をし
フードで顔を隠し村を訪れた
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
サビーナとモルテが村の地を踏む
私も2人の後ろを付いて歩く

私の心臓の鼓動が、徐々に早まるのが分かる

2人が向かっているのは私の家の方向
足を止めた場所を見て、私の心臓は一瞬止まる

ここは…私の家
この時間帯は両親が夕食をしている頃

2人は乱暴に家のドアを開け、中へ侵入して行く
私は2人の行動に恐怖のあまり身体が動かない…

少しすると
家の中から【ぎゃーーーー!!】と
絶叫する悲鳴が聞こえた

悲鳴がトリガーになり
身体が動ける様になり
私は急いで家の中へ入る

「…お…お母…さん…お父さん…」

目を疑う様な光景が広がっていた

…何故…こんな事に…

家の中は酷く荒れ散らかり
食卓を囲む部屋の壁と床に大量の血が染まっている

床に両親が倒れている姿がある

!?

私は両親の傍に近寄り、安否の確認を取る

良かった…息はある…

2人は意識を失っているだけであって、酷い外傷はない
では…この血は誰の者…?

「大丈夫か!!」

悲鳴を聞きつけたのか
家のドア付近に他の村人達が集まっている

「お前は誰だ!!」

中年の男性が私の姿を見て叫ぶ
数人の村人の手には、クワが握られていた

「私です!!エマです!!」

慌ててフードを外し、村人に顔を見せる
すると村人は驚きの顔を浮かべた

「エマちゃん!!おめぇ今までどこ行ってただ!!
3ヶ月もの間、姿をくらまして!!」

……え……3ヶ月…?
私は3日程、屋敷に泊まらせてもらった

「おじさん?本当に…?
私は3ヶ月もの間…いなかったの?」

私の声は恐怖と驚きで震えている

どういう事なの?

「村人総出でエマちゃんを探しただよ…
んだけどぉ…」

目の前で説明をするおじさんの言葉が
全く耳に入らなくなった
次第に視界が霞(かすみ)音も遠くなり
その後の事はあまり覚えてない





気が付くと私は村外れの教会にいた 

私の様子がおかしいので
村人の誰かが連れて来てくれたのだろう

両親は教会で只今治療中らしい

私は長椅子に座り項垂(うなだ)れていた

「…エマ…」

私の名前を呼ぶ男性の声が聞こえる
声がした方に顔を向けると

「…ジャン…」

私の婚約者、ジャンがその場にいた

彼は村の教会の神父
教会にいるのは不思議ではない
私は直ぐに彼から顔を逸らし俯く

彼が許せない…だって彼は…他の女性と…
裸で抱き合っていた!!

「エマ」

彼はが私に近寄り、耳元で囁(ささや)く

「君には悪魔が憑いている
直ぐに悪魔祓いの儀式を行なう」

ジャンの言葉に私は顔を上げ彼を見る
優しいでは見た事のない、鋭い目付きで私を見ていた

「僕が君を必ず助ける」

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