Amor et Odium

佐野絹恵(サノキヌエ)

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アレンが女!?

……………

いゃ、悪魔は幻術が使えると聞いた事がある
幻覚と考えるのが妥当か

「…っ…」

申し訳ないが確認させてもらうぞ





ハァ…思わず溜め息が漏れた
悪魔の紋章は身体に当たらなかった
 
紋章がなかったのは嬉しい事だが

では何故、アレンが女なんだ?
教会では女はシスターの格好をするはず
男装までして教会に居るのは何故だ

「……………」

様々な事が起き過ぎて、疲れた
こんな状況だが、少し休ませてもらうか…
疲労が溜まり過ぎて頭も体も動かない

俺は申し訳程度にアレンの隣に横になる

目を瞑ると睡魔に襲われ
そのまま眠りについてしまう





「…起きて…ぃ…起きて下さい、セドリックさん」

アレン?目が覚めたのか…

目は閉じているがアレンの声が傍で聞こえる
瞼(まぶた)を開けたいが
身体の自由が全く効かない

え?

何故だ…何故…身体が…動かない…?
しかも…頭の…回転も悪い …

「ぎゃ!!ぎゃーーーーー!!」

俺の傍で騒々しい物音が聞こえる
耳を劈(つんざ)く様なアレンの悲鳴が響いた

瞬間 頬に暖かいそよ風が触れる

何だ!?

身体の自由が効き
瞼(まぶた)を開く事が出来た

「……………」

目の前の光景を見て
驚きのあまり声を出す事すら忘れてしまう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
此処は静寂に包まれた洞窟の中
無数の蝋燭に火が灯され、周りの景色が見渡せた

腐敗臭がする赤黒く濁った池
池には…人間の頭蓋骨が浮いている
頭蓋骨だけではない、他の部位の骨が無数浮いている
池の傍では血がついた肉片が落ちていた

「まさか!!」

池だと思っていた赤黒い水は血なのか!?

あれは!?

池の傍には鉄の椅子に項垂れたアレンがいる

「アレン!?」

俺はアレンに駆け寄り身体を揺する

「アレン!!目を覚ませ!!」

俺の声掛けにアレンはゆっくりと目を開けた

「行くぞ、悪いが身体の心配している暇はない」

「え!?ここ何処ですか!?」

アレンは辺りを見渡す、酷く困惑している

目を覚ましたら、全く見知らぬ場所
しかも此処は異様な場所だ
アレンが困惑するのも無理もない…しかし

「俺にも分からない、取り敢えず此処を出るぞ」

俺達は洞窟の出口を目指し向かう





出口に向かってい途中
巨大な化け物を見掛けた

何だ、あれは!?

……ン?あの化け物、目が潰れている
目が見えないのか
しかし、視覚が駄目な分
聴覚に長けているはず

俺はアレンにその事をジェスチャーで伝え
息を殺し物音を立てない様にその場を立ち去った

洞窟の端から光が見えた
思わず安堵の溜息が漏れる

「ギャォォォオオオ!!!!」

化け物の喚き声が洞窟中に響く

「何だ!?」

後ろを振り向くと
先程、見掛けた巨大な化け物が
こちら目掛けて走って向かって来る

「逃げろ!!」

俺達は出口に向かって全速力で走った
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

…ハァ…ハァ…ハァ……ハァ…

何とか化け物から逃げ切り、今は洞窟の外

洞窟は俺達が脱出した途端に崩れてしまい
そのおかげで、化け物に殺されずにすんだ

「すっ…すみません…少し、休憩しましょう…」

アレンの要望を呑む事にする
此奴には聞きたいがある

休憩中に事情を聞くとしよう

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