Amor et Odium

佐野絹恵(サノキヌエ)

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曇天の空に
私の心まで憂鬱になる

本日は
セドリックさんの葬儀が行われる

私は以前の様に
長い髪を結い
全身を黒い服装に包み
最後にカトリック信者の証
黒いベールを顔を覆い
馬車に乗り込み
以前、仕えていた教会に向かった
━━━━━━━━━━━━━━━
馬車に揺られ数時間
見覚えのある景色になる

外気を吸う為、子窓を開けた

何気なく街の様子を伺うと
人の多さに驚愕する

葬儀に参列に
村の人達も含まれているけれども
流石にこの数は…

教会付近で馬車は停りドア開かれる
御者の手が差し出され
手を添え外に足を下ろす





教会の出入り口には
大勢の人で道を塞いでいる

私は呆気に取られ








大勢の人の間を通り抜け
開かれた教会の扉を潜る

教会の内(なか)も大勢の人がおり
先端部には黒い棺があるのだが
そこには誰もおらず近づく者もいない

まるで皆、神父様の説教を聞きに来たかの様に
長椅子に腰を下ろしている

今日は正真正銘
セドリックさんの葬儀が行われる日
だが…棺の中は空っぽ
名を出さなければ誰の葬儀か分からない状態

私も棺に近づかぬまま
空いている席、後部席に腰を下ろす





しばらくすると辺りは静寂に包まれた
祭壇に司祭様が現れ、御言葉を述べている

私は手を組みお祈りを捧げているのだけれども
全然、集中できない

…やだ…
ここに仕えていた時は…
こんな事…なかったはずなのに…





…レン…ア……アレン…さん…アレン!!

「は、はい!!」

名前を呼ばれ私はその場に起立する
まだ教会に仕えていた時の癖は抜けない

辺りを見渡すと
先程まで大勢の人がいたはずの教会内には
数えられる程の人数しかいない

「…!?…申し訳ありません…名前を間違えました…
アレクサンドリア様…」

私の傍に立つ司教様が
名前を間違え呼んでしまった事に 
申し訳なく思っているのか萎縮している

「司教様、そんな風にならないで下さい!!
以前はこちらで仕えていたのですから
無理もありません」

それから小一時間程、司祭様と話しをした後
帰路に着いた





揺られる馬車の中で私は項垂れていた

凄く…疲れたわ…
家に帰ったら早く温かいお湯に浸かって
柔らかいベッドで眠りにつきたい…

自宅までまだ数時間はかかる
仮眠を摂る為、目を閉じて睡眠を摂る事にした
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
目を覚ますと
陽は傾き空は薄暗くなっている
仮眠のつもりが眠り過ぎてしまった様子

少しすると
馬車の走る音は止み馬車も停る

自ら馬車の扉を開けて
御者を待たず外へ飛び出る

まだ馬に跨(またが)っている御者は
私の様子を見て怪訝そうな顔をしていたが
お構い無しに自宅の扉を開ける

「ただいま…疲れたぁ…」

私は思わず疲労が溜まった声が漏れたる
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