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再びの試練
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早朝のバスに間に合った光瑠は左側の前から3列目の窓際の席に座ることが出来た。
慌ただしい朝から解放されて一息つくと、何とはなしに窓からの景色に目を向けた。
こんなに走ってもバムさんから受け継いだ心臓は元気に働いてくれていて、省吾はこちらが照れる程に愛を伝えてくれる。
ただ静かに安らかな死を待っていたあの頃に比べたら、今の自分はなんと幸せなのだろうか。
少しだけ健一のことが気がかりではあるが、強烈に健一を想う彼女もいるのだから、たぶん彼も幸せになってくれるだろうと光瑠は楽観的に考えていた。
それに、実は省吾と光瑠はいまだにプラトニックな関係だった。
光瑠が退院して本当に体が回復するまで待つと言っていた省吾自身も、己の医師の仕事に忙殺されて、二人が一線を越えるチャンスを逃している。
光瑠とて省吾を欲しくない訳がないが、実際肌を見せ合うとなると己の中で生きずくバムの事を考えずにはいられないのだ。
でもやはり、自分から言ってあげるのが一番いいのだろうと、光瑠は決意する。
『俺、省吾さんのマンションで帰りを待とうか?』
『え、それって・・・。』
急に誘われた省吾は驚いて一瞬言葉を失った。
『ご、ごめんなさい。俺からなんて下品だよね。こんな体、傷だらけだし。』
無言の省吾に不安を覚えた光瑠は、言ってはいけなかったのだと、すぐに後悔した。
不安気な瞳で見上げてる光瑠を省吾は抱き寄せながら言った。
『嬉しすぎて言葉が見つからなかったよ。それに自分の体をそんな風に卑下しないで欲しい。』
『光瑠、今週の金曜日は俺の部屋に泊まりにおいで。』
『う・・うん。大したものは作れないけど、夕飯作って待ってるね。』
光瑠の手料理を食べれるのかと、子供のように大げさに喜ぶ省吾がおかしくて、その姿を見ていた光瑠も笑みが止まらなくなった。
二人はしばらくツボにでも入ったかのように、お互いの顔を突き合わせて笑いあった。
*****************
その事を思い出し、ふふふと光瑠は口元に思い出し笑いを浮かべた。
金曜日まではあと3日。
早く省吾と一つになりたいのは光瑠とて同じ気持ちなのだから、待ち遠しいのだ。
こうしてバスの窓から見える家の一つ一つにも家族があって、愛する人がいて、地球は回っているのだろう。
『楽しそうね。』
急に声を掛けられて驚いた光瑠は弾かれたように隣の席の人物に目を向けた。
そして、その姿を見て驚いた。
『あ・あなたは・・健ちゃんの彼女・・・。』
『健一さんの彼女って思ってくれるのね、でもね、当の本人は私を拒絶するのよ。』
『そ、それは・・俺には・・どうすることも・・・』
『あんたが悪いのよ!死ねば良かったのに、図々しく生き残るから!だから健一さんは私を愛してくれないのよ!』
彼女の唇は強い怒りでブルブルと震えていた。
光瑠さえ居なくなれば健一は自分を見てくれると信じているのだ。
そんなことを言われるとは思いもよらない光瑠は驚いて最初は声も出なかった。
しかし、小刻みに震えるこの女性も、きっと勇気を奮い起して俺に話しかけたのだろうと、理不尽に責め立てられているのにも関わらず、光瑠はひどく冷静に事態を受け止めていた。
しかも早朝のバスに同乗してくるなんて、いつから俺を待ち伏せていたのだろうか。
もしかしたら俺の行動パターンを調べて、朝のバスを選んだのかもしれない。
『俺の生死は関係ないよ。君が女性として、いや一人の人間としてイキイキと過ごしていれば健ちゃんも振り向くかもしれない。他人がどうかじゃなくて己を輝かせるのが近道だよ、きっと。』
『勝ち組の論理ね!なによ!えらそうに!』
女はそう吐き捨てるように言うと、隠し持っていたナイフを光瑠の心臓めがけて振り下ろした。
慌ただしい朝から解放されて一息つくと、何とはなしに窓からの景色に目を向けた。
こんなに走ってもバムさんから受け継いだ心臓は元気に働いてくれていて、省吾はこちらが照れる程に愛を伝えてくれる。
ただ静かに安らかな死を待っていたあの頃に比べたら、今の自分はなんと幸せなのだろうか。
少しだけ健一のことが気がかりではあるが、強烈に健一を想う彼女もいるのだから、たぶん彼も幸せになってくれるだろうと光瑠は楽観的に考えていた。
それに、実は省吾と光瑠はいまだにプラトニックな関係だった。
光瑠が退院して本当に体が回復するまで待つと言っていた省吾自身も、己の医師の仕事に忙殺されて、二人が一線を越えるチャンスを逃している。
光瑠とて省吾を欲しくない訳がないが、実際肌を見せ合うとなると己の中で生きずくバムの事を考えずにはいられないのだ。
でもやはり、自分から言ってあげるのが一番いいのだろうと、光瑠は決意する。
『俺、省吾さんのマンションで帰りを待とうか?』
『え、それって・・・。』
急に誘われた省吾は驚いて一瞬言葉を失った。
『ご、ごめんなさい。俺からなんて下品だよね。こんな体、傷だらけだし。』
無言の省吾に不安を覚えた光瑠は、言ってはいけなかったのだと、すぐに後悔した。
不安気な瞳で見上げてる光瑠を省吾は抱き寄せながら言った。
『嬉しすぎて言葉が見つからなかったよ。それに自分の体をそんな風に卑下しないで欲しい。』
『光瑠、今週の金曜日は俺の部屋に泊まりにおいで。』
『う・・うん。大したものは作れないけど、夕飯作って待ってるね。』
光瑠の手料理を食べれるのかと、子供のように大げさに喜ぶ省吾がおかしくて、その姿を見ていた光瑠も笑みが止まらなくなった。
二人はしばらくツボにでも入ったかのように、お互いの顔を突き合わせて笑いあった。
*****************
その事を思い出し、ふふふと光瑠は口元に思い出し笑いを浮かべた。
金曜日まではあと3日。
早く省吾と一つになりたいのは光瑠とて同じ気持ちなのだから、待ち遠しいのだ。
こうしてバスの窓から見える家の一つ一つにも家族があって、愛する人がいて、地球は回っているのだろう。
『楽しそうね。』
急に声を掛けられて驚いた光瑠は弾かれたように隣の席の人物に目を向けた。
そして、その姿を見て驚いた。
『あ・あなたは・・健ちゃんの彼女・・・。』
『健一さんの彼女って思ってくれるのね、でもね、当の本人は私を拒絶するのよ。』
『そ、それは・・俺には・・どうすることも・・・』
『あんたが悪いのよ!死ねば良かったのに、図々しく生き残るから!だから健一さんは私を愛してくれないのよ!』
彼女の唇は強い怒りでブルブルと震えていた。
光瑠さえ居なくなれば健一は自分を見てくれると信じているのだ。
そんなことを言われるとは思いもよらない光瑠は驚いて最初は声も出なかった。
しかし、小刻みに震えるこの女性も、きっと勇気を奮い起して俺に話しかけたのだろうと、理不尽に責め立てられているのにも関わらず、光瑠はひどく冷静に事態を受け止めていた。
しかも早朝のバスに同乗してくるなんて、いつから俺を待ち伏せていたのだろうか。
もしかしたら俺の行動パターンを調べて、朝のバスを選んだのかもしれない。
『俺の生死は関係ないよ。君が女性として、いや一人の人間としてイキイキと過ごしていれば健ちゃんも振り向くかもしれない。他人がどうかじゃなくて己を輝かせるのが近道だよ、きっと。』
『勝ち組の論理ね!なによ!えらそうに!』
女はそう吐き捨てるように言うと、隠し持っていたナイフを光瑠の心臓めがけて振り下ろした。
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