異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。

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密かに固い決意を固められていることには気づかない

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心なしかよろよろと馬車から降りてきた姉弟の表情がぱっと華やぐ。
慣れない長時間の移動による疲れにか、いつもより精彩を欠いていた表情がクラレンスの姿をとらえたとたんに色を変えた。

「クラレンス様!」

「兄さま!」

「いらっしゃい、2人も」

仲良く手をつないでたたたっと駆け寄ってくるシルクとエリシュオンを出迎えたクラレンスは直後……わわっ!とたたらを踏んだ。

抱き着かれた勢いでバランスを崩すも、なんとか持ちこたえる。
3人で地面に倒れることはなんとか回避した。

感動の再会……?から約30分後、クラレンスはエリシュオンの髪をなでていた。

「疲れちゃったんだね」

すぴすぴ、すやすやと眠る顔は穏やかで可愛らしい。
まるで宗教画の天使のようだ。

ついさっきまで、移動中に見た景色や昨日泊った宿でのことなど珍しくはしゃいだ様子で話してくれていたエリシュオンだが、いまは電池が切れたようにぐっすりと眠っていた。

侯爵家の泊まるペンション的な建物は広く、それこそ寝室には立派なベッドがある。目をこすりはじめたエリシュオンにベッドに行くことを勧めたが……みんなと居たかったのかだいじょうぶと首をふりふりしていた彼だが、案の定眠ってしまった。

なお、シルクたちの強い希望もあってクラレンスも今日からこっちにお泊りだ。
騎士団での薬草採取のお仕事は昨日までに終わらせたので、こっからはただの旅行です。

「シルクは休まないで大丈夫?」

ソファの隣に座るシルクへと問いかけた。

「大丈夫ですわ」

はにかむような笑顔を浮かべたシルクは、さりげなくレースのあしらわれた白いシンプルなドレス姿。
いつもより格段に装飾は少ないが、まれに見る美少女っぷりと相まって華やかさにはことかかない。これで日傘でもさせばまさに“お忍び中のお嬢様”といった感じ満載。

そしてそんな感をみじんも隠せていない生粋のお嬢さんは、なんともいえない表情でじっとクラレンスの手元と弟をガン見している。

そう、クラレンスに膝枕されている弟を。

最初はグラグラしはじめた頭へと自分の肩を差し出したクラレンス。
だけど頭の自重に首はさらに下へとたれ……不安定な体制にクラレンスは幼い体をそっとソファに横たえた。

「膝枕……」

なぜか目を見開いたシルクにどうしたの?という風に首を傾げれば、「い、いえ」と両手を顔の前で振ったシルクだが、以来その視線はくぎ付けだった。

可愛らしい弟の寝顔に愛おしさが沸く一方で、どうしても湧き上がる違う気持ちも抑えきれない。

「くっ……羨ましいっ……!」

声が響かないよう顔をそむけたシルクは口元で拳を握りつつ心の底から呟いた。

だって膝枕。

乙女趣味の女の子の憧れです。
自分がされるのもいいし、するのもいい。

いつか自分も必ず!

密かにそう誓うシルクの心の内など当然ながらマイペース男子ことクラレンスは気づかず、呑気にエリシュオンの髪を撫でている。

対面のソファでは両家の母親たちがそんな様子を微笑ましそうに、実に楽しそうに見守っていた。
なお、今日は母は自由日なので付き添いです。

「そういえば母さん、王子さまはいつくるの?」

「11時ごろにはいらっしゃるはずよ」

「いっしょだってわかってたらお弁当もっとたくさん作ってたんだけどなー……」

本日の予定はピクニック。
作ってきたお弁当の出番です!

あ、日数立ってますけど、魔法の鞄マジックバックは状態維持機能つきなんで大丈夫ですよ?
賞味期限の問題もなければ、アイスだろうが、お茶だろうがそのまま保存できます。超便利。

ただお弁当を準備した段階では王子さまもピクニックに同行するって知らなかったので人数分に足りないのです。
ここにも立派なキッチンがあるし、到着したばっかりのシルクたちの休憩も必要なので出発はお昼前。なので追加でパパっとなにか作ることも可能だ。

可能だが……せっかく来てくれたシルクたちをほっぽりだしてキッチンにこもるのもどうだろう?

あごに手をあてて考え込んでいると侯爵夫人がコロコロと笑った。

「シェフが軽食を用意してくれてるから平気よ」

「あっ、よかった」

侯爵家のお抱えシェフの料理があるなら問題ないだろう。

「お弁当を作ってくださったんですよね?楽しみにしてますわ!」

「私もよ。なんでもイリーネがおにぎりがかわいい!って騒いでたわ」

「おにぎり?……ってあのお米をにぎった??おにぎりがかわいいの?」

「ええ、よくわからないんだけどそう言ってたわ」

おにぎりとかわいいが結びつかなかったのだろう。
その場の女性陣たちは盛大に首をかしげていた。
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