249 / 258
レーズンウィッチもお土産にもらった
しおりを挟むお友達に小動物認定されたのは思うところがないわけでもないが…………わりとよくあることといえばよくあることなのでさほど気にはしなかった。
それはともかく……。
ああは言われたものの、いざ対面した公爵夫人は美しくいかにも貴婦人然としていて……とてもではないがデーヴィッドの言葉を真に受けることができず、クラレンスは緊張していた。
…………が、これはもしや。
「おいしいです」
にっこり、へにゃりと笑って見せる。
「そう」
扇子で顔を隠した公爵夫人が素っ気なく応じる。
「バタフライピーと青いお花、気に入ってもらえましたか?」
「ええ、ありのままの赤バラや白バラも美しいけれど、このバラは幻想的でとても素敵だわ。色が変わるハーブティーも華やかさと話題性で人気になること間違いなしね。おまけに美容にもいいなんて素晴らしいわ。この度のご提案、改めてお礼を言わせて頂きます」
社交辞令的な淡々とした口調。
だけどきっとそれは本心なのだ。
お礼の言葉にはにかむと水色の瞳が微かに細まる。
それを見てクラレンスは確信した。
デーヴィッドくんの言ってたとおりだ。
そう思いながら唇がムズムズと緩む。
はじめに感じた違和感はデーヴィッドが公爵夫人に「青が似合う」と言ったとき。
あの時も夫人の反応は素っ気なかったけれど、だけど確かにクラレンスは見たのだ。
ほんの少しその口元が嬉しそうに綻ぶのを。
赤い唇は愛息子の気づかいを喜んでいるように見えた。
バタフライピーの変化に長いまつげをふるわせパチリと瞬いた瞳。
シルクやエミリアのように大げさな驚きではなかったけれど、あれは彼女にとって驚きの現れだったのだろう。
はしゃぐシルクたちを微笑まし気に眺める自分に注がれていた視線、表情を引き締めた途端にほんの少しだけ感じた残念そうな雰囲気。
あれらはすべて勘違いではなかったのだ。
「デーヴィッドくんってお家ではいつもどんな感じなんですか?」
「おいっ!急になにを……」
にこにこしつつ問いかければ、デーヴィッドが焦ったように身を乗り出す。
「とても優秀な子よ。家庭教師が来る日には予習と復習を欠かさないし、勉学だけでなく最近は剣の鍛錬にも力を入れているようね。優しい子でわたくしの好きなお花をよくプレゼントしてくれるの」
「ちょっ……!母上っっ!!」
「この間はエミリアさんに贈るハンカチの相談をされたわ。この子ったらどれがいいか真剣な顔で数時間も悩んで……」
「母上っっ!!やめてくださいっっ!!」
淡々と語り続ける公爵夫人についにデーヴィッドが叫んだ。
ガシャン!と食器を鳴らして立ち上がった彼の顔は真っ赤だ。
若干涙目の息子を切れ長な瞳がつぃと見る。
口元を隠したまま瞳を細めるその様子は無作法を咎めているようにも見える。
さっきまでのクラレンスならそう判断し、自分が咎められたように背を伸ばしていただろう。
だが違うのだ。
あれはたぶん……照れた愛息子の姿を“可愛い”と思っている。
ついでにサラッと零された暴露に、染めた頬を両手で押さえて大感激してる将来の息子の嫁の姿も。
そのことがだんだんクラレンスにもわかってきた。
社交辞令的な訪問のあいさつもお礼も、全然感情がこもってなさそうなこの人の言葉は全部本心だし、冷たそうな表情も態度も見た目どおりじゃない。
デーヴィッド曰く、「笑顔と感情表現が超ヘタ」なんだ。
こんな完ぺきな貴婦人っぽいのに……。
そう理解したらなんだか笑えてきた。
淡々とした真顔で不器用に息子を自慢する公爵夫人も、婚約者のプレゼント選びに真剣に悩んでいたことを暴露されて焦りまくっている友人の珍しい姿も。
可愛らしく照れてる友人と、呆気に取られて目を丸くしてる隣の婚約者。
すべてがおかしくてふふふ、と唇から笑みがこぼれる。
「笑うな」
友達がギンッ!と瞳を尖らせて八つ当たりのように叫ぶけど、それすらもおかしくて声がもれる。
もはや当初の緊張はすっかりと解けていた。
「えっと……クラレンス様?」
唐突にはじまった公爵夫人の淡々とした息子自慢と、顔を真っ赤にしたデーヴィッドやエミリア、一変したお茶会の雰囲気にとまどっているシルクにお腹を抱えながらにっこりと笑った。
「僕も今度シルクにハンカチあげるね。可愛いの選ぶから楽しみにしてて」
「……!!嬉しいですっ!宝物にします」
まだあげてもいないのに宝物宣言してくれるシルクにうれしくなって「ん」とうなづく。
怖くなくて、緊張する必要のない相手だとわかれば、フェリックのように相手が王族だろうと、アイザックのように一見とっつきにくい相手だろうと、さほど気にしないのがマイペースなクラレンスだ。
値踏みするようなアイスブルーの瞳が、小動物を愛でるそれだと理解したクラレンスは緊張を解いてお茶会を楽しんだ。
わかりにくく大歓喜した公爵夫人に「ぜひまた来てね」と社交辞令でないお誘いをもらいました。
455
あなたにおすすめの小説
レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか
宮崎世絆
児童書・童話
うたた寝していただけなのに異世界転生してしまった。
公爵家の長男レイルーク・アームストロングとして。
あまりにも美しい容姿に高い魔力。テンプレな好条件に「僕って何かの主人公なのかな?」と困惑するレイルーク。
溺愛してくる両親や義姉に見守られ、心身ともに成長していくレイルーク。
アームストロング公爵の他に三つの公爵家があり、それぞれ才色兼備なご令嬢三人も素直で温厚篤実なレイルークに心奪われ、三人共々婚約を申し出る始末。
十五歳になり、高い魔力を持つ者のみが通える魔術学園に入学する事になったレイルーク。
しかし、その学園はかなり特殊な学園だった。
全員見た目を変えて通わなければならず、性格まで変わって入学する生徒もいるというのだ。
「みんな全然見た目が違うし、性格まで変えてるからもう誰が誰だか分からないな。……でも、学園生活にそんなの関係ないよね? せっかく転生してここまで頑張って来たんだし。正体がバレないように気をつけつつ、学園生活を思いっきり楽しむぞ!!」
果たしてレイルークは正体がバレる事なく無事卒業出来るのだろうか?
そしてレイルークは誰かと恋に落ちることが、果たしてあるのか?
レイルークは誰の手(恋)をとるのか。
これはレイルークの半生を描いた成長物語。兼、恋愛物語である(多分)
⚠︎ この物語は『レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか』の主人公の性別を逆転した作品です。
物語進行は同じなのに、主人公が違うとどれ程内容が変わるのか? を検証したくて執筆しました。
『アラサーと高校生』の年齢差や性別による『性格のギャップ』を楽しんで頂けたらと思っております。
ただし、この作品は中高生向けに執筆しており、高学年向け児童書扱いです。なのでレティシアと違いまともな主人公です。
一部の登場人物も性別が逆転していますので、全く同じに物語が進行するか正直分かりません。
もしかしたら学園編からは全く違う内容になる……のか、ならない?(そもそも学園編まで書ける?!)のか……。
かなり見切り発車ですが、宜しくお願いします。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
『ラーメン屋の店主が異世界転生して最高の出汁探すってよ』
髙橋彼方
児童書・童話
一ノ瀬龍拓は新宿で行列の出来るラーメン屋『龍昇』を経営していた。
新たなラーメンを求めているある日、従業員に夢が叶うと有名な神社を教えてもらう。
龍拓は神頼みでもするかと神社に行くと、御祭神に異世界にある王国ロイアルワへ飛ばされてしまう。
果たして、ここには龍拓が求めるラーメンの食材はあるのだろうか……。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる