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天使と出会い、ジョブチェンジ 2

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 そして______

 訪れた運命の日。

 神殿で下された『無能』の判定。
 その場の誰もが青ざめ、騒然とする中、俺は一人静かな微笑みを浮かべていた。

 そうして物語の通り、本人や付き添いの家族にしか知らされない筈のその異能の判定の結果は世間に広まることとなり_______だけど俺が物語のようにやさぐれ、落ちこぼれることはなかった。

 唯、一つだけ。判定を下されるその場に母さんが居なかったことだけは良かったのかも知れないと思う。
 公爵夫人だった母さんは去年亡くなった。母さんと父さんは凄く仲が良かったから、不義の子だなんて噂が出れば酷く悲しんだかも知れない。

 いや、儚げな見た目に似合わず豪快な人だったからブチ切れたかも知れないけど。

 正直自分が二人の子じゃないかも知れないっていうのは今でも信じていない。
 だってそれぐらい二人は愛し合っていた。

 現に不義の子の噂に父さんはブチ切れてる。お蔭で噂はちょっと下火。
 流石に公爵に面と向かって喧嘩を売る奴は少ない、水面下では消えることはないだろうけど。

 因みに俺の顔立ちは父さん似。

 瞳の色とかは違うけど、顔だち、特に目元と口元がよく似てる。

 権力大好きな親戚連中としたら俺が母さんとよその男の子で、公爵の血筋を継いでいないっていうのがベストなんだろうけどあまりにも似てるから公爵家の血筋を否定出来ずにいる。残念でしたー。

 そうして俺は見事な掌返しを見せた周囲にめげることもなく努力を続けた。


 そして遂に運命の出会いを果たす。

 俺が9歳の夏。

 弟が生まれた。
 誰だ、傲慢俺様攻略対象者とか言った奴。天使だった。

 後妻として公爵家に嫁いだ義理の母。
 所謂いわゆる、俺にとっての継母ままははは俺を酷く嫌っていたがそんなこたぁ知ったこっちゃない。
 腹を痛めた自分の子の方が可愛いのは当然だし、他人の子より自分の子を跡継ぎにしたい気持ちはよくわかる。

 手酷い嫌がらせをされたなら兎も角ともかく、生粋のお嬢様である彼女がしてくることは嫌味をいうだけ。女系家族で育った俺のポテンシャルを舐めるなよ。そんな可愛い嫌味程度笑顔でそつなくかわしますとも。

 むしろ俺にとっては義母は天使を遣わしてくれる聖母ですが、何か?

 そんな義母とお揃いの綺麗な金髪と燃えるような紅い瞳。

 名前はガーネスト。
 異能は『炎』。

 天使との運命の邂逅に感極まった俺は危うく「ガーネスト!」と名前を呼びそうになった。
 
 危ない、危ない。
 俺はまだ天使の名前を聞いてない筈なのに、天使の魅力恐るべし!


 そして再び運命の出会い。

 俺が10歳の春。

 妹が生まれた。
 誰だ、悪役令嬢で我儘姫とか言った奴。天使だった。

 はい、可愛いー!ガーネストと並べると可愛さ倍増。
 やっぱり綺麗な金髪と透明度の高いシトリンのつぶらな瞳。

 名前はベアトリクス。
 異能は『魅了』。

 またも天使との邂逅に「ベアトリクス!」と名を呼びそうになった俺。
 危なかった。前回の教訓を硬く胸に抱いていた筈なのにこうも容易たやすく俺を陥落させるとは。

 はっ!既に異能を習得済みですか?

 俺は既に魅了にかかっているのかも知れない。恐るべし天使!


 こうして俺は『無能』で空気なモブキャラから

『無能』でブラコン&シスコンなモブキャラへと華麗なジョブチェンジを果たしたのだった。


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