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盾と矛 2
しおりを挟むそれは普通の剣とは一線を画した。
何よりも異質なのは、その色。
美しく輝くその刀身の色は漆黒だった。
ぎらついた輝きとはまた違う、思わず魅入られてしまいそうな漆黒の輝き。
「リフ」
共についてきていたリフへ声を掛ければ、すぐさま丁度いい高さの切り株の上に鉱石が置かれた。
そのまま後ろへ下がるリフを待って、柄を握った手に力を籠める。
一閃。
振るった刃は漆黒の残像を残し、鉱石が置かれた切り株ごと両断した。
腕を組んだアインハードがヒュウッと高く口笛を吹く。
リフがすぐさま鉱石を拾い上げ、その断面を見せてくれる。
綺麗に真っ二つに割れた断面。
「どうだ?ご希望には応えられたか?」
答えをわかりきって問いかけてくるアインハードに「勿論」と二つ返事で頷き返す。
手にした剣の刀身を改めて眼の前に翳した。
「希望通りどころか、期待以上です。流石は竜の爪を材質としているだけのことはあります。最高硬度を誇る筈の鉱石が真っ二つだ」
漆黒の刀身は極僅かな曲線を描いている。
この剣を造らせるにあたって、イメージしたのは日本刀。
何故なら俺にはその方が向いていると判断した為。
別に剣の扱いが苦手なわけではない。
むしろ俺の剣捌きは以前も言った通り並みの騎士をも凌ぐ。
そんな俺の決定的な弱点。
圧倒的な力に欠けること。
別にひ弱じゃない。
決してひ弱ではない。
大事なことなので二度言った。
ひ弱ではないのだが(三度目)、体格に恵まれていない以上、力押しをされると押し負ける恐れがある。
実際師匠との手合わせの敗因もそれが主だった。
そして戦闘スタイルとしても押し切る・貫くよりも、スピードを活かし切り裂く方が俺には合っていた。
なので刀身は西洋風の剣よりも剃刀のような切れ味を持つ日本刀をイメージ。
但し、日本刀にしてしまうと転生者バレする恐れもあるので片刃ではないし、あくまで日本刀の刃をイメージしつつ諸刃の剣である。
俺的に転生者バレは控えたいんだよね。
周りに奇異の眼で見られるのもあるし、何よりボロが出るとそこから一気にキャラが崩れて取り繕えなくないそうな予感しかしねーし。
立場的にも俺のこの内面を晒すのは抵抗が……。
脱線した。
剣の素材はまさかの竜。
提供は討伐経験のあるアインハード氏。
作成者は名工たる伝説のドワーフ。
紹介は顔の広いアインハード氏。
特別な材料で・特別な技法で・特別な形状で創られた俺だけの剣!!
全てを切り裂くと例えられる竜の爪に恥じぬ素晴らしい切れ味だ。
むしろ伝説の剣じゃねぇ?!
エクスカリバー的な!
応援ありがとうございます!
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