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8話【偽りの聖域 ―― バーカウンターに立つ「第3の顔」の衝撃】
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私の調査は、「誰を愛しているのか」という個人的な問題から、「誰に操られているのか」という、巨大で冷たい情報戦へと、確実に移行していた。
涼太の背後にある「真の黒幕」に、私は一歩、踏み込んでしまったのだ。
再び桐谷蓮について調べ始めたその夜、デスクの明かりの下でキーボードを叩く私の指は、なぜか落ち着きなく震えていた。
検索ワードは同じなのに、胸のざわめきは、真実を知る前とは比べものにならなかった。
次々と画面に並ぶ噂の断片。 その中で、特に目を引かれたのは「引退後、過去を捨て、別人格として生きている」というものだった。
アメリカで実業家になっている──。 名前を変えて東南アジアで暮らしている──。 偽名でビジネスを始め、完全に別の「ペルソナ」を持っている──。
掲示板の書き込みはどれも曖昧で、たぶん根拠のない憶測なのだろう。 けれど、不思議とどれも「あり得るかもしれない」と感じさせる説得力があった。 「影武者」という存在によって、桐谷蓮本人が「消滅」したという事実が補強されていたからだ。
「もしも……涼太が桐谷蓮、あるいは彼の完璧な代役だとしたら、なぜ、私に近づいたんだろう?」
口にした瞬間、胸の奥にひゅっと冷たい風が吹き込んだような心細さが広がる。 彼の接近の理由──それが私とどう関わってくるのか。
大手商社で私が携わっているITセキュリティプロジェクト……その専門知識、特に「機密情報管理のプロトコル」が、もしや彼の「真の任務」に繋がるのではないか。 そんな考えが、冷徹なロジックとして脳裏をかすめた。 このロマンスは、情報収集のためのカモフラージュだったのではないか。
私はノートPCを閉じ、代わりに積み上げていた資料に手を伸ばした。 桐谷蓮の活躍していた当時の記事、インタビュー、芸能雑誌。図書館で借りた古い新聞まで並べて、一つ一つ指で辿るように読み返していく。
華々しい経歴の裏で、彼には常に謎めいた影がつきまとっていた。 交際報道が出ても「真剣な交際ではない」と彼の側近がコメントするだけ。 仕事のドタキャンが続いた時期も、理由は伏せられたまま。
どの情報も核心には届かない。 彼の姿は、意図的に作られた「秘密主義」という蜃気楼のように、掴もうとすればするほど遠ざかっていく。
次に、私は涼太のSNSアカウントを探し出した。 彼の趣味、交友関係、生活のリズム……何でもいい、手がかりが欲しかった。
しかしアカウントはしっかり鍵付き。 公開されている情報は、Odyne社に勤めていることと、出張が多いという程度。 淡々としていて、味気なく、どこか「必要な外側」だけを見せているような、計算された印象が拭えなかった。
そのとき、ふと江ノ島の夕暮れが脳裏に蘇った。 初デートで彼と並んで撮った写真。 あの時、夕日に照らされていた涼太の穏やかな笑み。 それがどれほど私の心を解きほぐしてくれたか……。
私は震える指で、その写真のデータを拡大していった。
そして、拡大する画面の隅に──「それ」があった。
人影。
それは、初デートの日、私たちの偽りの愛を完成させたあの瞬間を、静かに記録していた。こちらを向いているような、望遠レンズの奥からの、感情のない冷たい視線。
それは、ただの影ではない。 彼と私が「愛し合っている瞬間」を、記録し、監視していたという動かぬ証拠だった。
背筋がじわりと冷えていく。
「……彼と私のロマンスは、すべて誰かの監視下にあった?」
彼は最初から、私を騙し、監視していた? あるいは、彼自身も誰かに監視されながら、私を騙していた?
考えれば考えるほど、胸の奥がざわざわと落ち着かなくなる。 この「影」こそが、次に追うべき「オニヅカ」に繋がる、決定的な手がかりだと直感した。
いても立ってもいられず、私は親友の理沙に連絡した。 カフェに呼び出し、これまでの影武者疑惑、オニヅカの警告、すべての恐怖を話すと、理沙は真剣にうなずきながらも、突然ぱっと表情を輝かせた。
「よし!情報収集はプロの領域よ!一緒に涼太さんのこと徹底的に調べてみよう!」
その瞬間、彼女はスマホを取り出してSNSのチェックを始めていた。 流行にも情報にも敏い理沙の行動力と、匿名性の確保には、いつもながら驚かされる。
「えーっと……いいねしてる写真は……あ、ほら見て彩花!」
理沙が見せてきた画面には、巨大なマグロを釣り上げた涼太の写真が。 海の上、太陽を背にして満面の笑みを浮かべる涼太──「大手商社勤務」の涼太からは想像もできない、野性的な顔だった。
「釣りが趣味っぽいよ! しかもガチ勢じゃんコレ! この写真に嘘はない」
「……へぇ。そんな一面があったんだ……」
意外すぎて、一瞬息を呑んだ。海の上、太陽を背にして満面の笑みを浮かべる涼太。その表情は、私に見せていた繊細な微笑みとは対照的な、野性味に溢れたものだった。
けれど、見つめているうちに、私の背筋にまた別の寒気が走った。 釣りやゴルフ――それは、ガードの固い資産家や政財界の重鎮に、最も自然に、かつ長時間近づくための「工作員の標準スキル」ではないのか。
趣味ですら、ターゲットの懐に入り込むための洗練された武器(ツール)だとしたら……。あの屈託のない笑顔さえ、獲物を油断させるための高度な技術に見えてくる。
さらに理沙はスクロールしながら、「あとね、同僚っぽい人が“今度ゴルフ行こう”ってコメントしてる……ゴルフも好きなのかな? これも計画のうち?」と、まるで職業探偵のように、彼の周辺を丹念に読み解いていく。
「ちょっと理沙……まさか、会社の人にも連絡したとか……?」
「当然でしょ! 匿名で聞けばバレないし、彩花のためだよ!」
にこにこと笑いながら言う理沙に、感謝と、彼女を巻き込む罪悪感が入り混じった複雑な気持ちが湧く。 でも、胸の奥がじんわりと温かくなる。 こんな風に、誰かが自分のために全力で、危険を顧みずに動いてくれていること……その事実だけで涙が出そうだった。
そんなときだった。
「彩花、これ見て! 決定的な情報よ!」
理沙が差し出した画面には、桐谷蓮のファンサイトの掲示板が映っていた。
そこに貼られていた──「桐谷蓮そっくりさんの目撃情報」。
添付された写真には、「ユウト」という別人の名前が書かれている。
けれど──顔は、涼太と酷似していた。
「……嘘。 そっくりどころじゃない。 涼太そのものよ……」
息が止まったように喉が固まり、指先が震えた。 企業人、恋人、そしてバーテンダー。 涼太には、いくつ顔があるのだろうか。
「都内のバーで働いてるって! 本人か、影武者の分身か、確かめるしかない! 行ってみようよ!」
理沙は目を輝かせ、一歩も引く気がなかった。
私は迷った。 もしバーテンダーが涼太だったら、彼の嘘は現場で暴かれることになる。 涼太が私に囁いたあの言葉、“あなたに出会うための人生だった”──その真実を、私はこの「第三の舞台」で確かめずにはいられなかった。
「……行こう」
強く頷くと、胸の鼓動が一段大きく跳ねるのを感じた。 これは、ロマンスの終わりか、あるいは真実の始まりか。 どちらにせよ、もう後戻りはできなかった。
薄暗いバーの扉を押すと、静かな音楽と低い照明が私たちを包み込む。 目を慣らしながら奥へ進んでいくと──カウンターの向こうに、張り子の面を剥がしたような「涼太の横顔」があった。
「……涼太……?」
声にならないほどのかすれた声だった。 その横顔、線の細い顎、伏せた睫毛……あの桐谷蓮の面影そのものだった。
胸がぎゅっと締めつけられる。 時間の流れがゆっくりと歪んだように感じた。
理沙がそっと私の手を握りしめる。 「ほら……話しかけてみなよ。 もしかしたら、何かわかるかもしれない」
私は喉を震わせながら一歩近づいた。
「あ、あの……もしかして……桐谷蓮さん、ですか……?」
彼は一瞬だけ冷たい刃のような瞳でこちらを見て──そして小さく首を振った。
「違います」
その短い返答が、刃のように胸に突き刺さった。 彼の声は感情を切り離した、プロフェッショナルなものだった。
でも同時に、彼の瞳の奥に、ほんの一瞬だけ、何かを訴えるような、囚われた光が見えた気がした。「何か言えない理由がある」──そう思わせる、深い影のような光。
「……桐谷蓮さんでは、ないんですね?」
もう一度尋ねると、彼は曖昧な表情を隠すようにして、
「ええ。 違います。 どうして、わざわざ私をそのように疑ったんですか? 私の人生を、勝手に決めつけないでいただきたい」
その瞬間、私は息が止まりそうになった。 彼は、涼太が私と話す時に必ず見せていた「優しく目を細める癖」も、柔らかい声の抑揚も、一欠片も持っていなかった。 目の前にいるのは、涼太と同じ造作を持ちながら、中身が完全に「他人」へと入れ替わったような、空っぽの器。 ――彼らは、人格さえも「着脱」できるプロなのだと、本能が警鐘を鳴らしていた。
その牽制は、私への明確な威嚇だった。私は言葉を飲み込む。
「……知り合いに……似ていたので……」
「そうですか。 失礼します」
短くそう告げて、彼は視線をそらした。 会話は、彼の完璧なガードの前で終わりを告げた。
涼太の背後にある「真の黒幕」に、私は一歩、踏み込んでしまったのだ。
再び桐谷蓮について調べ始めたその夜、デスクの明かりの下でキーボードを叩く私の指は、なぜか落ち着きなく震えていた。
検索ワードは同じなのに、胸のざわめきは、真実を知る前とは比べものにならなかった。
次々と画面に並ぶ噂の断片。 その中で、特に目を引かれたのは「引退後、過去を捨て、別人格として生きている」というものだった。
アメリカで実業家になっている──。 名前を変えて東南アジアで暮らしている──。 偽名でビジネスを始め、完全に別の「ペルソナ」を持っている──。
掲示板の書き込みはどれも曖昧で、たぶん根拠のない憶測なのだろう。 けれど、不思議とどれも「あり得るかもしれない」と感じさせる説得力があった。 「影武者」という存在によって、桐谷蓮本人が「消滅」したという事実が補強されていたからだ。
「もしも……涼太が桐谷蓮、あるいは彼の完璧な代役だとしたら、なぜ、私に近づいたんだろう?」
口にした瞬間、胸の奥にひゅっと冷たい風が吹き込んだような心細さが広がる。 彼の接近の理由──それが私とどう関わってくるのか。
大手商社で私が携わっているITセキュリティプロジェクト……その専門知識、特に「機密情報管理のプロトコル」が、もしや彼の「真の任務」に繋がるのではないか。 そんな考えが、冷徹なロジックとして脳裏をかすめた。 このロマンスは、情報収集のためのカモフラージュだったのではないか。
私はノートPCを閉じ、代わりに積み上げていた資料に手を伸ばした。 桐谷蓮の活躍していた当時の記事、インタビュー、芸能雑誌。図書館で借りた古い新聞まで並べて、一つ一つ指で辿るように読み返していく。
華々しい経歴の裏で、彼には常に謎めいた影がつきまとっていた。 交際報道が出ても「真剣な交際ではない」と彼の側近がコメントするだけ。 仕事のドタキャンが続いた時期も、理由は伏せられたまま。
どの情報も核心には届かない。 彼の姿は、意図的に作られた「秘密主義」という蜃気楼のように、掴もうとすればするほど遠ざかっていく。
次に、私は涼太のSNSアカウントを探し出した。 彼の趣味、交友関係、生活のリズム……何でもいい、手がかりが欲しかった。
しかしアカウントはしっかり鍵付き。 公開されている情報は、Odyne社に勤めていることと、出張が多いという程度。 淡々としていて、味気なく、どこか「必要な外側」だけを見せているような、計算された印象が拭えなかった。
そのとき、ふと江ノ島の夕暮れが脳裏に蘇った。 初デートで彼と並んで撮った写真。 あの時、夕日に照らされていた涼太の穏やかな笑み。 それがどれほど私の心を解きほぐしてくれたか……。
私は震える指で、その写真のデータを拡大していった。
そして、拡大する画面の隅に──「それ」があった。
人影。
それは、初デートの日、私たちの偽りの愛を完成させたあの瞬間を、静かに記録していた。こちらを向いているような、望遠レンズの奥からの、感情のない冷たい視線。
それは、ただの影ではない。 彼と私が「愛し合っている瞬間」を、記録し、監視していたという動かぬ証拠だった。
背筋がじわりと冷えていく。
「……彼と私のロマンスは、すべて誰かの監視下にあった?」
彼は最初から、私を騙し、監視していた? あるいは、彼自身も誰かに監視されながら、私を騙していた?
考えれば考えるほど、胸の奥がざわざわと落ち着かなくなる。 この「影」こそが、次に追うべき「オニヅカ」に繋がる、決定的な手がかりだと直感した。
いても立ってもいられず、私は親友の理沙に連絡した。 カフェに呼び出し、これまでの影武者疑惑、オニヅカの警告、すべての恐怖を話すと、理沙は真剣にうなずきながらも、突然ぱっと表情を輝かせた。
「よし!情報収集はプロの領域よ!一緒に涼太さんのこと徹底的に調べてみよう!」
その瞬間、彼女はスマホを取り出してSNSのチェックを始めていた。 流行にも情報にも敏い理沙の行動力と、匿名性の確保には、いつもながら驚かされる。
「えーっと……いいねしてる写真は……あ、ほら見て彩花!」
理沙が見せてきた画面には、巨大なマグロを釣り上げた涼太の写真が。 海の上、太陽を背にして満面の笑みを浮かべる涼太──「大手商社勤務」の涼太からは想像もできない、野性的な顔だった。
「釣りが趣味っぽいよ! しかもガチ勢じゃんコレ! この写真に嘘はない」
「……へぇ。そんな一面があったんだ……」
意外すぎて、一瞬息を呑んだ。海の上、太陽を背にして満面の笑みを浮かべる涼太。その表情は、私に見せていた繊細な微笑みとは対照的な、野性味に溢れたものだった。
けれど、見つめているうちに、私の背筋にまた別の寒気が走った。 釣りやゴルフ――それは、ガードの固い資産家や政財界の重鎮に、最も自然に、かつ長時間近づくための「工作員の標準スキル」ではないのか。
趣味ですら、ターゲットの懐に入り込むための洗練された武器(ツール)だとしたら……。あの屈託のない笑顔さえ、獲物を油断させるための高度な技術に見えてくる。
さらに理沙はスクロールしながら、「あとね、同僚っぽい人が“今度ゴルフ行こう”ってコメントしてる……ゴルフも好きなのかな? これも計画のうち?」と、まるで職業探偵のように、彼の周辺を丹念に読み解いていく。
「ちょっと理沙……まさか、会社の人にも連絡したとか……?」
「当然でしょ! 匿名で聞けばバレないし、彩花のためだよ!」
にこにこと笑いながら言う理沙に、感謝と、彼女を巻き込む罪悪感が入り混じった複雑な気持ちが湧く。 でも、胸の奥がじんわりと温かくなる。 こんな風に、誰かが自分のために全力で、危険を顧みずに動いてくれていること……その事実だけで涙が出そうだった。
そんなときだった。
「彩花、これ見て! 決定的な情報よ!」
理沙が差し出した画面には、桐谷蓮のファンサイトの掲示板が映っていた。
そこに貼られていた──「桐谷蓮そっくりさんの目撃情報」。
添付された写真には、「ユウト」という別人の名前が書かれている。
けれど──顔は、涼太と酷似していた。
「……嘘。 そっくりどころじゃない。 涼太そのものよ……」
息が止まったように喉が固まり、指先が震えた。 企業人、恋人、そしてバーテンダー。 涼太には、いくつ顔があるのだろうか。
「都内のバーで働いてるって! 本人か、影武者の分身か、確かめるしかない! 行ってみようよ!」
理沙は目を輝かせ、一歩も引く気がなかった。
私は迷った。 もしバーテンダーが涼太だったら、彼の嘘は現場で暴かれることになる。 涼太が私に囁いたあの言葉、“あなたに出会うための人生だった”──その真実を、私はこの「第三の舞台」で確かめずにはいられなかった。
「……行こう」
強く頷くと、胸の鼓動が一段大きく跳ねるのを感じた。 これは、ロマンスの終わりか、あるいは真実の始まりか。 どちらにせよ、もう後戻りはできなかった。
薄暗いバーの扉を押すと、静かな音楽と低い照明が私たちを包み込む。 目を慣らしながら奥へ進んでいくと──カウンターの向こうに、張り子の面を剥がしたような「涼太の横顔」があった。
「……涼太……?」
声にならないほどのかすれた声だった。 その横顔、線の細い顎、伏せた睫毛……あの桐谷蓮の面影そのものだった。
胸がぎゅっと締めつけられる。 時間の流れがゆっくりと歪んだように感じた。
理沙がそっと私の手を握りしめる。 「ほら……話しかけてみなよ。 もしかしたら、何かわかるかもしれない」
私は喉を震わせながら一歩近づいた。
「あ、あの……もしかして……桐谷蓮さん、ですか……?」
彼は一瞬だけ冷たい刃のような瞳でこちらを見て──そして小さく首を振った。
「違います」
その短い返答が、刃のように胸に突き刺さった。 彼の声は感情を切り離した、プロフェッショナルなものだった。
でも同時に、彼の瞳の奥に、ほんの一瞬だけ、何かを訴えるような、囚われた光が見えた気がした。「何か言えない理由がある」──そう思わせる、深い影のような光。
「……桐谷蓮さんでは、ないんですね?」
もう一度尋ねると、彼は曖昧な表情を隠すようにして、
「ええ。 違います。 どうして、わざわざ私をそのように疑ったんですか? 私の人生を、勝手に決めつけないでいただきたい」
その瞬間、私は息が止まりそうになった。 彼は、涼太が私と話す時に必ず見せていた「優しく目を細める癖」も、柔らかい声の抑揚も、一欠片も持っていなかった。 目の前にいるのは、涼太と同じ造作を持ちながら、中身が完全に「他人」へと入れ替わったような、空っぽの器。 ――彼らは、人格さえも「着脱」できるプロなのだと、本能が警鐘を鳴らしていた。
その牽制は、私への明確な威嚇だった。私は言葉を飲み込む。
「……知り合いに……似ていたので……」
「そうですか。 失礼します」
短くそう告げて、彼は視線をそらした。 会話は、彼の完璧なガードの前で終わりを告げた。
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