最強くのいちアヤメは異世界で恋愛がしたいようです

有角 弾正

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 アヤメはキョロキョロと辺りを見回す。

 「え?!私、部屋で寝てたはずなのに?!あれ?えー?!何でこんなところにいるのー?」

 その時グーと船が揺れた。

 「わわわわわ!やっぱり揺れてる?!」
 アヤメは海というものを実際に見るのは初めてだった。

 「えー?!ちょっと待って!」
 大きなマストにしがみつこうとする。

 その足元をヨシロウがコロコロと転がる。
 「うわー!」
 なんと子熊は声を上げた。

 アヤメがとっさに手を伸ばす。
 「ヨシロウ大丈夫?」
 何とか黒い小さな手をつかまえた。

 「うん。ちょっと転がっただけだよ」

 アヤメが驚く
 「ヨシロウがしゃべった?!」

 「うん、ボクもアヤメと一緒に行きたいって狐神様にお願いしてたんだよ」

 「そーなんだー?って何でしゃべれるの?!あっ!そっかー、まだ夢かー!」

 揺れは大人しくなった。

 「これが全部私の想像なんだー。雑誌とか本で見た海ってこんな感じなのかな?
 んー、陸は見えないなー。」
 暴れる黒髪を指でとかし、真昼のきらめく波を眺める。

 「でも夢にしては何かスゴくリアルだなー。
 ノリかワカメみたいな臭いもするし。」
 潮の香りをかぐ。

 ヨシロウもクンクンし
 「アヤメ、これ夢じゃないよ。ボクたち違う世界に来たんだよ。
 悪い王様がこの世界で好き放題に暴れてるみたいなんだ。
 アヤメはそれをやっつける為に来たんだよ。」

 アヤメはひきつった顔でそれを見下ろしていたが
「んなバカな」

 細い人差し指を子熊の鼻に持っていき
 「じゃヨシロウ、これ思いっきり噛んでみてー?」

 ヨシロウは心配そうに額にしわをよせて
 「えー?ボクまだ歯は小さいけど、きっと痛いよ?
 アヤメ、ボクの話を信じてないの?」

 「信じるも何も、どんな忍術使っても一瞬で家から海の上とか、子熊がしゃべるとか無理でしょ?」

 ガリ!

 「いったぁーい!!」
 あわてて人差し指をヨシロウの口から抜いた。
 血は出ていなかった。

 ヨシロウがアヤメの足に手をついて
 「ゴメンね、やっぱり痛かったでしょ?」

 アヤメは首を振って黒いロングの髪をなびかせ
 「ちょっとびっくりしただけ、大丈夫だよ。
 えっ?!じゃあこれ夢じゃないの?!
 えー?!ホントにあの白いキツネが私を違う世界に送ったっていうの?
 そんな……そんな事って……」
 あらためて大海原を眺める。

 美少女がぼうぜんとしていたその時、船室の扉が開いた。

 ノッソリと出てきたのは、たくましい人間の体に、耳にも口にもピアスたっぷりのブタの頭を乗せた、大きな革鎧姿だった。
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