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第二話 自爆キャノン 1/4

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 俺は焦った、もう二十年の人生の中で一番焦った。というより完全にパニック。


 一体誰なんだ?!俺が勝手に金を造ったのがバレたのか?
バレたにしてもなんでバレたんだ?

     いやバレる筈がない!


 正か、あの外国人か?それともその仲間か何かか?!

 くっ!まだ玄関のドアを叩いてやがる。
宗教の勧誘?NHK?
いや、奴等はあんなにしつこく叩かねぇ!


 俺は震える手で大量の五百円玉硬貨、一万円札等をスポーツバッグへ放り込む。

 動揺で手が震え、金をバッグの回りに落としては拾い、落としては拾いを繰り返し、何とか全てを入れ終えた。


 ブンッと頭を振り玄関を見た。
一応ドアノックパンチは止んだようだ。


 どうする?!居留守を決め込むか?!

 幸いこのアパート、家賃は安いが、カメラ付きのインターホン装備だ。
とりあえず、ドアの向こうが何者かだけでも見ておくか?


 俺は正におそるおそる、インターホンの受話器のある柱に向かう。
この狭い部屋を、こんなに広く感じたことはない。


     モニターを見た。


   「何だよ!!はぁーーー……」


 俺は安堵のあまり、その場でへたり込んだ。

 小さなモニターに写っていたのは、バイト先の友人、村田 将(むらた まさる)と虎南 歳三(こなん としぞう)の超ガリと超マッチョの二人組であった。


 一息つくと、もう玄関までは狭い安アパートに戻っていた。
        

 ガチャッ。

 汗を拭い、鍵を空けてやる。
赤いジャンパーの銀髪イケメンと目が合う。


 村田将(まさる)、略してムラマサである。

 「おい!おせーぞ!寒いんだから早く空けろよな!

 なっ?居ただろヤッパリ」
後ろの黒い革ジャンの筋肉塊に振り返る。


 「ウム、だが昼間とはいえ、あのノックは近所迷惑だぞ、ムラマサ……」
腕を組み、前に立つチャラチャラした村田をたしなめる。


 「でもこいつ、スマホ電源オフってるし、仕方ねーだろ?」
細長い指で、室内の俺を指差す銀髪。


 う~む、とりあえず今は、この左手の能力は誰にも秘密だ。

 コイツらも含め、ハッキリ言って見せびらかしたい気持ちはある。

 だが、人に知られるのは避けなければならない。

 まぁこれだけの力だ、必ずや俺の手を調べ、利用したがるやつも現れるだろう。

 こりゃ国家レベルで狙いに来るぜ!!

 う~、もう二度と手首をもがれるなんて体験は御免だ。

 はっ!もしかすると、命すら危ないかも知れない!


 俺は左拳を握りしめた。


 し、しかし、いつもつるんでるコイツらに門前払いは逆に不自然、か……。

 仕方ない。
茶でも飲ませて、早目に帰すか。


 「まぁ入れ」

 俺は一応、虎南の分厚い体の後ろをひょいと覗き、チェーンロックを解除、キッチンへ向かった。
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