dreadnought/ドレッドノート 神と悪魔の手

有角 弾正

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第四話 昇格 2/4

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 一秒、二秒、三秒……。
二十まで数えた。


 危機は去ったようだ、隣の部屋のインターホンが鳴っている。


 はーー!何とかなったー……。



 スポンッ!


 虎南のぶっ太い指が、ムラマサの鼻孔から抜ける音がした。

 ははは、まるでワインの栓抜きみたいだ。
赤い汁が着いているとこも似ている。

 ふふふ、コイツ怪力だからな。
安堵のせいか、少し笑えた。


 ムラマサ「フガ!ムグゥ……虎南!このバカ!
お前、力の加減てモノを知らねーのかよ?!

 おーっ痛ったぁー!」

 飽くまで小声ではあるが、ムラマサは猛抗議し、鼻を押さえ、キッチンのシンクに前のめる。


 虎南「ウム、背に腹は変えられん、というやつだ。
中々の英断であった、と思うが。」

 朱に染まった己の指を洗う為、同じくキッチンに向かう。



        10分後。


 俺たちは元の席に着いた。

 ムラマサがこよりを抜き、止血を確認した。

 タバコに火を着け
「ふぅ、警官はヤバかったな、流石に。

 それにしても聞き込みってなんだろうな?
もしかしたら、謎外国人の死体とか?
それか、お前の生まれつき生えてた手首とかが見つかったのかもよ?……。
ヌハハハハ。」


 ヌハハハハじゃねぇよ!
ちっとも笑えないぞ!


 ムラマサ「いやいや、片方の警官は気持ち悪そうにしていたから、ホントそうかもな。」

 警官二人のやりとりを思い出し、俺も虎南もうなずいた。


 ムラマサ「あ、河村、俺のスマホは?

 全く誰だよ!超修羅場にしてくれちゃったやつはよー!」

 俺に向かって、スマホをよこせ、と痩せた手を出す。


 あれッ?そういえばさっきミュートにした後から見てないな。

 確か……手で挟んでー、更に足で挟んでー。

        ん?

 俺は足元を見た。

  ない。

 そのまま周りを探す。
ん?ない、ないぞ?!


 虎南が無言で、自分のスマホを耳にあてる。


 「ウム、電源が入っていないか、電波の届かない場所にあるらしい。」


 バカな!第一、さっきは鳴ったじゃねーか!
だから修羅場になったんじゃないか!


 「も、もう一回かけてみろ!」



 数秒後、虎南が首を横にふった。


 「えっ?!なんで?!この部屋、別に電波悪くないぜ?!」

 おかしい!何か変だ!

 俺の胸中に、嫌な予感の様なものが、急速に広がってゆく。


 ムラマサは顔をしかめ、痛む鼻から紫煙を昇らせ
「河村、まぁ落ち着け。たかがスマホだ。

 それよりな、今俺が気になっているのは、お前の右掌だ。」

 携帯用灰皿に灰を落とした。


 「はっ?右?」
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