悪役令嬢に転生風~無表情執事を添えて~

猫野 肉球

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第9話 初めての絵本

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「ふぉぉ……」

 広い。
 その一言に尽きるような書斎。
 図書館と言っても頷ける。

「アリーは書斎に来るのは初めてだったね?説明するから、おいで」

 父に手を引かれ、恐る恐る入ってみる。
 古本屋のような、なんとも言えない懐かしい乾いた香りに包まれる。

「アリーが読めそうな絵本とかは、手の届くような低い所に置いてあるから、好きなように読んでいいよ。上にある本は、重かったり、僕が仕事で使ったりする本だから、触らないようにね」

 バチコン!とウインク付きの解説。
 キラキラオーラで目がやられた。

「分かったわ、お父様」

 私も、お返しとばかりにウインクをしようとしたのだが。
 ムギュっと両目を瞑ってしまった。
 下手くそか。

「あぁあ……!可愛すぎて発作が! 」

 だが、隣で崩れ落ちる父には、充分すぎるほどの威力だったらしい。
 ユズは出来るのかしら?とふと気になり、後ろを振り向くと。
 心得た、とばかりにひとつ頷き。
 そっと両目を暫く閉じた後、目を開いた。
 あ、私より酷いのいたわ。
 ちょっと長めの瞬きじゃん。


「さてアリー、読んでみたい絵本はあるかい?お父様が読んであげよう」

 発作から回復した父が、声を掛けてくれる。

「ん~と、王子様が出てくる絵本が読みたいわ! 」

「アリーは、王子様に興味があるのかい? 」

 父の表情が少し強ばる。

「えぇ!だって、王子様ってお父様みたいな人なのでしょう? 」

 瞬時にデロデロな表情になる父。
 ナイスフォロー私。
 そしてイケメンに有るまじき表情だな、父よ。

「それじゃあ、この絵本にしようか」

 そう言って、父が取り出した一冊の絵本。
 タイトルは【闇の王子と光の姫】
 …闇堕ちした王子様のお話かしら?
 ちょっと恐怖を感じながら、父に読んでもらう。
 男の人らしい低い声、でも何処か落ち着く声で、読み聞かせが始まった。

「それは、昔々のお話です……」
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