誰も助けてくれないのだから

めんだCoda

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第29話 ルイの考え

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「どうした?ルイ?」

 1人窓の外を眺めるルイを心配し、ジャンがルイに近寄る。
 ルイは近づいてくるジャンの心配そうな顔に気づき、少し申し訳なさそうに笑うと、大きく息を吐き背中を壁によりかからせる。

 ルイは続けてまた大きく息を吐くと、斜め上を見上げ、誰を見ることなく口を開く。

「俺さ、実家に帰るわ」

「えっ……帰る…って、授業どうするんだ…?」

 驚いたジャンは、自分の後ろに立つスカイとケイシを振り返り見ながら、また前方のルイの方も見て、と忙しなく顔を動かす。

「あー…休む。まぁ、前も休んでたし。でも、今回は前ほどは休まない、かな」

「急にどうしたんだよ、理由は?」

 ケイシは、ルイの突然な話に心配して尋ねる。

「理由は……なんていうか、親に聞きたいことができたから、かな」

「聞きたいことって…なんだよ。それに、おれ達になんの相談もなく休むって……なんかあまり気分良くないな」

「あぁ、そのことなら、ごめん。もっと早く言うべきだったね」

 ケイシはルイから理由を聞きたかったが、申し訳なさそうな顔を見せるだけのルイに、少し腹が立った。

 一方、ルイとケイシの会話を聞いていたスカイは、そんなルイの核心を濁したような回答に苛立っていた。

「あー、そうかよ。公爵様の息子さんは自由でいいよな。休みたいと思ったら好きに休めて。だいたい、公爵家様はお家でも勉強できるんだしな、わざわざここに来る必要もないよな。あーそれから、同部屋のオレ達に何も話せないってなら、もう部屋出てけよ。気分で出てったり、戻ってきたり、こっちは迷惑だから」

「おい、スカイ!お前、言い過ぎだぞ」

 ケイシはスカイの肩をひき、眉間に皺を寄せてスカイの顔をじっと見る。
 いつも温和な表情のケイシが怒るのは珍しく、そんなケイシの顔を見たスカイは、感情のままに話したことは良くなかったとすぐに思い直す。

「…悪かった、ルイ。言い過ぎた」

「いや、いいよ。スカイの言うとおりな部分もあるし。それに、シャーランの件以降、みんななんかピリピリしてるのも分かってるしさ。それに、そうだよな…何も話さない俺も悪いな」

「いや、言いたくないんだったら、別にいいよ」

「ははっ、ケイシは気ー遣いだな、相変わらず。言いたくないわけじゃないんだけどさ、ただシャーランが関係してくることだからさ、言ってまた皆んなの気持ち下げたらやだな、ってのもあってさ」

「ええっ?なに、帰省するのとシャーランのことと、どういう関係があるの?」

 ジャンは、廊下を歩いてきた人に道を開けるため、窓側の壁にサッと避けながら、ルイに尋ねる。

「個人的なことだし、それにあくまで俺の推測なだけなんだけど」

 ルイは一度目を伏せた後、すぐに顔を上げ、ジャン、スカイ、ケイシの顔をじっと見つめる。

「俺の父親はさ、前も言ったけどセントラル国王と仲が良いって言っただろ?もしかして、俺の父親はセントラル国王からシャーランのことを聞いていて、あの本に記されていない他の何か情報を知っているんじゃないかって思ってさ。そうすれば、シャーランの助けにもなるかもしれないし、一旦帰って聞いてみようと思ったわけ」

「あ~なるほどな、確かに、それはありえそうだな」

 ジャンは顎に指を当て、うんうん、と大きく頷く。

 スカイは頭をかいて、ふう、と上に大きく息を吐いた後、ルイに視線を戻す。

「ルイ、お前も色々考えてたんだな」

 スカイがそう言うと、ルイははにかんた笑顔をみせる。

「まぁね。ただの自由気ままな坊ちゃんだと思われてたみたいだけど」

 ルイは、イタズラっぽい笑みを浮かべ、前髪をかきあげる。

 ははっ、と白い歯を見せて笑うスカイは、ルイに近付くと、ルイの肩に自分の腕をまわし、ガッと力強く肩を組む。

「ちょっと思ってた。けど、違ったな。大変利発で行動的な男前坊っちゃんだな」

「ははっ。それはどうも」

 ルイは嬉しそうに笑いながら、自分の肩から下がるスカイの手をポンポンと優しく叩く。

「で、いつ行くんだ?ルイ」

 ケイシは、戯じゃれてる2人を優しく見守りながら、ルイに聞く。

「俺は気になったことは、なるべくすぐ解決したいタイプなんだよね。急だけど、明日行こうと思ってる」

「明日ねー」

 ジャンが自分のノートを開き、パラパラとめくる。

「明日の授業は…んー、まぁ変わったのもなくいつも通りだし、僕らも大丈夫だろ」

「——は?僕らも大丈夫だろ、って…」

 スカイに肩を組まれたルイは、驚いた顔で皆の顔を見回すと、ジャンがニヤッと笑う。

「僕らもついて行くよ、なぁ?」

「おう、オレらもいくぜ」

 スカイが、ルイの肩を更にグッと力強くしめる。

「ルイの家もどんな感じなのか、興味あるしなー」

 ケイシも腕組みをし、楽しそうに笑ってルイを見る。

「うわー、それって、ただの観光目的じゃん」

 わざと顔を背けて笑いながら話すルイは、皆の気持ちが嬉しくて、気持ちを照れ隠しする。

「…でも、ありがとな」

「えっ?なになに、聞こえない、今なんて言った?」

 ボソッとお礼を言ったルイに、スカイ、ケイシは、わざと、いたずらっぽくルイに絡みからかう。

「よし!そうと決まれば、今から部屋に戻って、出発の準備をしないとな」

 ジャンが部屋へ戻ろうと手で合図をしたとき、学園の事務員証を首から下げた事務員が、前方からキョロキョロと誰かを探しながら早歩きでやってきた。

 その事務員がこちらを見た途端、あっ!と口を開き、目を大きく開け走って近づいてくる。

 スカイ、ケイシ、ジャン、ルイが、互いに顔を見合わせ、何事だ?と、訝しげな顔をする。

 事務員はこちらに駆け寄ると、はぁはぁ、と息を切らしながら、早めの口調で喋り出す。

「そちらにいらっしゃるのは、ルイさんですよね?」

「はい、そうですけど…」

 名指しされたルイは、少し動揺する。
 この学園では、事務的なことをすることもなく、選択している授業の先生意外とは、全く接点がないので、事務員に話しかけられるなんて、異例中の異例だ。

「お父様のファースト公爵様が、いらしております。今は学園長とお話中ですが、急いで下に降りてきていただけますか?」

「……はい?父が…ここに?来ているのですか?」

「はい、そうです。なので、急いで…」

 ルイは、事務員の言葉の途中で走り出す。

 スカイ、ケイシ、ジャンも慌てて走り出し、急いでルイを追った。
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