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ヴァイオリンの王子
第13話 願いは2回じゃないの?
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「あ、涼太が来たかな」
インターフォンの音が聞こえ花蓮は、ピアノの椅子から立ち上がると、1階に下りていく。
花蓮は階段の途中で後ろを振り返ると、大きな瞳でスタインをじっと見つめる。
「いい?さっき約束した通り、涼太やバリウスと言い合うのはもうダメだよ」
「分かってるって」
笑顔を見せるスタインに、花蓮は小さくため息をつくと階段を勢いよく下りていく。
ガチャ
「こんにちは。お2人とも、いらっしゃ~い!」
花蓮は玄関のドアを開けると、ヴァイオリンを持った涼太とバリウスを家の中へと招き入れる。
「失礼いたします」
頭を下げ入ってくるバリウスは礼儀正しく、玄関のドアを閉める所作も優雅で紳士的だった。
バリウスの美しさに、花蓮は思わず見惚れていたが、ハッと我にかえると背後にいるスタインに目配せをする。
スタインは、うっと苦い表情をしたが、呼吸を整えるとバリウスを見る。
「バリウス…はよ」
「おはよう、スタイン」
バリウスは、ホッと安心したような笑顔をスタインに向け、スタインはバリウスの素直な反応に少し居心地が悪そうにしていた。
スタインは花蓮の方を向くと、これでいいだろ?といったような顔をし、鼻から息を出す。
花蓮は、そんなスタインに向かってクスッと笑い、はいはい、と口をパクパクさせる。そんな花蓮を、涼太はじっと無言で見ていた。
4人は特に会話をするわけでもなく、練習部屋へ向かうと、花蓮は部屋の壁際に置いてある椅子を指さす。
「スタインとバリウスの2人は、そこで腰掛けて聞いててね」
そう言うと、花蓮はピアノの椅子に座り楽譜をペラペラとめくり一音を出すと、その音を聞きながら涼太がヴァイオリンの音を出し調律を始める。
涼太はヴァイオリンの調整が終わると、椅子に座るスタインとバリウスを見る。
「今から俺たち2人で弾くが、同時に音が出ていてもスタイン、バリウスのそれぞれがチャージされるのか?」
「あぁ、される。ソロでないとならないという制約はない」
椅子に座る体勢を整えながらスタインが答えると、隣でバリウスも小さく頷く。
「おーけー。そうしたら花蓮、いくか」
涼太はヴァイオリンを構えると、花蓮も鍵盤に指をのせ互いに目をじっと見つめ合う。
阿吽の呼吸で一緒に弾き出すと、お互いに滞ることなく音が流れていく。
最近は上手く弾けないことで悩んでいた花蓮も、不思議と次から次へと流れるように指が動き、好調な自分に楽しくなり気持ちが良くなる。
演奏中に、チラッとスタインを見ると、目を閉じたスタインの顔は紅潮しており、こちらも同様気分が良さそうだった。
2人が演奏を終えると、スタインとバリウスは笑顔で拍手をしてくれた。
涼太は斜め後ろを振り返り、花蓮に笑顔を見せる。
「花蓮、絶好調じゃないか。不調だって言ってたのは、本当だったのか?!今のが本番でもいいくらいだった」
涼太はやや興奮気味にそう話すと、花蓮を見つめ顔いっぱいの笑顔を向ける。
花蓮は幼馴染にこんなに褒められ、急に恥ずかしくなり顔の前で手を振る。
「そんなことないよ。所々、失敗しちゃったし…」
花蓮が顔を赤くすると、スタインがやってきて横に立ち、ピアノに手を付き花蓮に顔を近付ける。
「花蓮、すごく良かった。今日1日、もう演奏はいらないくらいだよ」
ニコッと笑うスタインの笑顔はやはり破壊力抜群のイケメンで、花蓮は胸の鼓動が跳ね上がる。
「あ、ありがとう…!」
あまりの胸のドキドキに次の言葉が出てこなくなってしまった花蓮。近くにあるスタインの顔にどんどんと鼓動が早まる。
(…これ以上は、心臓がもたない…!)
花蓮は、たまらず視線を横に晒した。
涼太はそんな2人を面白くなさそうな顔で見つめていたが、ふとある疑問が浮かびバリウスを見る。
「聞きたいんだが、チャージに演奏の良し悪しは関係あるのか?」
バリウスは椅子に座ったまま、顎に手をやり、うーん、と考え込む。
「その辺りはまだハッキリとは解明されていないのですが、演奏の質がいいと我々自身は体力の回復が早いように感じています」
「なるほどな。だが、その辺りをハッキリとさせておいた方が、今後、俺もやり易い気もするな…。そうだな…、3つの願いのうち1つを、その解明に使ってもいいか?」
「え…!そ、そんな…!お考えは嬉しいですか、もったいないです。せっかくの限られた願いなので、涼太様に関する願いに使ってください…!」
「いや、3つ願いをと言われても、1年以内に思い浮かぶかどうか分からないしな…」
「ちょ、ちょっと待って?」
ピアノの椅子に座っている花蓮は、体を前のめりにしてピアノに手を付き、スタインの体の横から顔を出しバリウスを見つめる。
「願いって、…2つじゃないの?私、スタインから2つって…そう言われたよ?」
花蓮の言葉にバリウスは驚いた顔をしたが、その後、眉間に皺を寄せ、視線を下に落とした。
「…通常は3回です」
「…え?」
困惑した花蓮は、すぐ側に立つスタインを見上げると、スタインは今にも泣き出しそうな儚い眼差しで花蓮を見つめていた。
「…スタイン、なんで私は2回なの…?」
花蓮が小さな声で問うと、スタインは腕を伸ばし花蓮を優しくギュッと抱きしめる。
「…うまく説明できないんだけど、俺、楽器の国で色々あってさ、花蓮の1回分は花蓮が使ったようにみせかけて俺が使った。ごめん」
「えっ…?どういうこと…?わけが…」
「ごめん。今は詳しくは話せない」
そう言うと、スタインはギュッと更に強く花蓮を抱きしめる。スタインの話す声は今までとは違って弱々しく、花蓮はどこか不安になり優しくスタインの腕を撫でた。
涼太は訳がわからず説明を求めようとバリウスを見たが、椅子に座ったバリウスは肩を落として悲しそうな表情で俯いており、とても話しかけられるような雰囲気ではなかった。
涼太は頭をかくと、花蓮とスタインを見る。
「おい、どういう理由があるのか知らないが、合わせはこの1回で終わりじゃない。花蓮、まだ続けてやるぞ」
「あっ…うん、そうだよね。ごめん」
花蓮はスタインを自分からそっと離し顔を見上げるが、スタインは花蓮と目を合わせずに椅子に戻ってしまった。
(…なんだろう…なんか胸がざわざわする…)
花蓮は落ち着かない気持ちだったが、なるべく考えないようにして、またピアノの鍵盤に手を下ろす。
インターフォンの音が聞こえ花蓮は、ピアノの椅子から立ち上がると、1階に下りていく。
花蓮は階段の途中で後ろを振り返ると、大きな瞳でスタインをじっと見つめる。
「いい?さっき約束した通り、涼太やバリウスと言い合うのはもうダメだよ」
「分かってるって」
笑顔を見せるスタインに、花蓮は小さくため息をつくと階段を勢いよく下りていく。
ガチャ
「こんにちは。お2人とも、いらっしゃ~い!」
花蓮は玄関のドアを開けると、ヴァイオリンを持った涼太とバリウスを家の中へと招き入れる。
「失礼いたします」
頭を下げ入ってくるバリウスは礼儀正しく、玄関のドアを閉める所作も優雅で紳士的だった。
バリウスの美しさに、花蓮は思わず見惚れていたが、ハッと我にかえると背後にいるスタインに目配せをする。
スタインは、うっと苦い表情をしたが、呼吸を整えるとバリウスを見る。
「バリウス…はよ」
「おはよう、スタイン」
バリウスは、ホッと安心したような笑顔をスタインに向け、スタインはバリウスの素直な反応に少し居心地が悪そうにしていた。
スタインは花蓮の方を向くと、これでいいだろ?といったような顔をし、鼻から息を出す。
花蓮は、そんなスタインに向かってクスッと笑い、はいはい、と口をパクパクさせる。そんな花蓮を、涼太はじっと無言で見ていた。
4人は特に会話をするわけでもなく、練習部屋へ向かうと、花蓮は部屋の壁際に置いてある椅子を指さす。
「スタインとバリウスの2人は、そこで腰掛けて聞いててね」
そう言うと、花蓮はピアノの椅子に座り楽譜をペラペラとめくり一音を出すと、その音を聞きながら涼太がヴァイオリンの音を出し調律を始める。
涼太はヴァイオリンの調整が終わると、椅子に座るスタインとバリウスを見る。
「今から俺たち2人で弾くが、同時に音が出ていてもスタイン、バリウスのそれぞれがチャージされるのか?」
「あぁ、される。ソロでないとならないという制約はない」
椅子に座る体勢を整えながらスタインが答えると、隣でバリウスも小さく頷く。
「おーけー。そうしたら花蓮、いくか」
涼太はヴァイオリンを構えると、花蓮も鍵盤に指をのせ互いに目をじっと見つめ合う。
阿吽の呼吸で一緒に弾き出すと、お互いに滞ることなく音が流れていく。
最近は上手く弾けないことで悩んでいた花蓮も、不思議と次から次へと流れるように指が動き、好調な自分に楽しくなり気持ちが良くなる。
演奏中に、チラッとスタインを見ると、目を閉じたスタインの顔は紅潮しており、こちらも同様気分が良さそうだった。
2人が演奏を終えると、スタインとバリウスは笑顔で拍手をしてくれた。
涼太は斜め後ろを振り返り、花蓮に笑顔を見せる。
「花蓮、絶好調じゃないか。不調だって言ってたのは、本当だったのか?!今のが本番でもいいくらいだった」
涼太はやや興奮気味にそう話すと、花蓮を見つめ顔いっぱいの笑顔を向ける。
花蓮は幼馴染にこんなに褒められ、急に恥ずかしくなり顔の前で手を振る。
「そんなことないよ。所々、失敗しちゃったし…」
花蓮が顔を赤くすると、スタインがやってきて横に立ち、ピアノに手を付き花蓮に顔を近付ける。
「花蓮、すごく良かった。今日1日、もう演奏はいらないくらいだよ」
ニコッと笑うスタインの笑顔はやはり破壊力抜群のイケメンで、花蓮は胸の鼓動が跳ね上がる。
「あ、ありがとう…!」
あまりの胸のドキドキに次の言葉が出てこなくなってしまった花蓮。近くにあるスタインの顔にどんどんと鼓動が早まる。
(…これ以上は、心臓がもたない…!)
花蓮は、たまらず視線を横に晒した。
涼太はそんな2人を面白くなさそうな顔で見つめていたが、ふとある疑問が浮かびバリウスを見る。
「聞きたいんだが、チャージに演奏の良し悪しは関係あるのか?」
バリウスは椅子に座ったまま、顎に手をやり、うーん、と考え込む。
「その辺りはまだハッキリとは解明されていないのですが、演奏の質がいいと我々自身は体力の回復が早いように感じています」
「なるほどな。だが、その辺りをハッキリとさせておいた方が、今後、俺もやり易い気もするな…。そうだな…、3つの願いのうち1つを、その解明に使ってもいいか?」
「え…!そ、そんな…!お考えは嬉しいですか、もったいないです。せっかくの限られた願いなので、涼太様に関する願いに使ってください…!」
「いや、3つ願いをと言われても、1年以内に思い浮かぶかどうか分からないしな…」
「ちょ、ちょっと待って?」
ピアノの椅子に座っている花蓮は、体を前のめりにしてピアノに手を付き、スタインの体の横から顔を出しバリウスを見つめる。
「願いって、…2つじゃないの?私、スタインから2つって…そう言われたよ?」
花蓮の言葉にバリウスは驚いた顔をしたが、その後、眉間に皺を寄せ、視線を下に落とした。
「…通常は3回です」
「…え?」
困惑した花蓮は、すぐ側に立つスタインを見上げると、スタインは今にも泣き出しそうな儚い眼差しで花蓮を見つめていた。
「…スタイン、なんで私は2回なの…?」
花蓮が小さな声で問うと、スタインは腕を伸ばし花蓮を優しくギュッと抱きしめる。
「…うまく説明できないんだけど、俺、楽器の国で色々あってさ、花蓮の1回分は花蓮が使ったようにみせかけて俺が使った。ごめん」
「えっ…?どういうこと…?わけが…」
「ごめん。今は詳しくは話せない」
そう言うと、スタインはギュッと更に強く花蓮を抱きしめる。スタインの話す声は今までとは違って弱々しく、花蓮はどこか不安になり優しくスタインの腕を撫でた。
涼太は訳がわからず説明を求めようとバリウスを見たが、椅子に座ったバリウスは肩を落として悲しそうな表情で俯いており、とても話しかけられるような雰囲気ではなかった。
涼太は頭をかくと、花蓮とスタインを見る。
「おい、どういう理由があるのか知らないが、合わせはこの1回で終わりじゃない。花蓮、まだ続けてやるぞ」
「あっ…うん、そうだよね。ごめん」
花蓮はスタインを自分からそっと離し顔を見上げるが、スタインは花蓮と目を合わせずに椅子に戻ってしまった。
(…なんだろう…なんか胸がざわざわする…)
花蓮は落ち着かない気持ちだったが、なるべく考えないようにして、またピアノの鍵盤に手を下ろす。
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