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コイカケその16
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馬込に手のひらで差され、味澤は一つ深く息を吐いた。
「考えるまでもない。そのルールなら充分に挽回可能だ。こちとらどうせ一度は負けを覚悟した身。失うものはプライドぐらいで、懐は傷まないしな。やるよ」
考えるまでもないと言った割に長広舌だった。そんな味澤はディーラーから僕へと視線を移し、言った。
「俺は若い奴の考えについて行けてるつもりだったが、おまえは相当変わった奴だな。一度手にした勝利を手放す危険があるってのに、自らこんな提案をしてくるとは理解を超えている」
「チップは多ければ多いほどいいと判断したまでですよ」
「そっちにもメリットがあると認めるんだな。じゃあ、その分、俺からも一つくらい、ルールを提案する権利をくれないか」
「……」
この申し出にはちょっと虚を突かれた。僕にもメリットがあるという文言を僕自身から引き出した上で、畳み掛けてくる辺り、駆け引き慣れしている。まだまだ闘志は衰えていないと見た。油断ならない。
「認めざるをえませんね。でも、あまりにもバランスを欠いたルールなら、拒みますよ」
「安心してくれ。俺だって馬鹿じゃないし、それなりの節度ってものは持っている。そうだな。こういうのはどうだろうな。『相手の手札五枚を全て言い当てた場合、それまでの勝敗及び獲得枚数とは無関係に、勝者となる』」
「五枚全て……とは、オープンの権利を使わずにですか」
「いや。使うことを認めないと、現実味がないだろう。四枚まで開けさせて、最後の一枚を勘で答える。もしも的中したら、大逆転という訳だ。夢があるだろ」
「まあ、バランスは問題ないですが……僕は充分にあなたも勝てるルールを提案したつもりでしたが、どうしてこんなルールを追加する気になったんでしょうか」
「充分に勝てるってのは、怪しいな。劣勢だった立場でこんな主張をするのは気恥ずかしいが、そちらが見せた隙なんだから利用させてもらう。俺が勝つには、そっちの枚数が多くて降りられない内に、十八、三十六、七十二と倍々に賭けて三連勝してやっと逆転。三連勝自体が難しいのは言うまでもないし、そのあともリードを維持するのは簡単ではないだろう。だから、一発逆転の目を残しておこうと思ったまでよ」
「なるほど、理解しました。僕にとっても、一発逆転の目が最後まであるのは魅力です。認めますよ。ただし、もう一つだけルールを追加しておきましょう」
「何だ? まさか賭けるチップの枚数を、毎回十八枚に固定するとかじゃないだろうな?」
「そんなことは言いません、これ以上のルール変更はなし。勝負が決するまで、このままで」
「それならいい」
話はまとまり、勝負再開。というか勝負続行、かな?
第四戦。新たに取り決めたルール上、今回は僕だけ最初から十八枚のチップを積んでいる。これ以上の上乗せはないし、ドロップもない。
最初に配られた五枚は次の通り。
クラブのクイーン、スペードのエース、クラブのジャック、ダイヤの4 クラブの5
何だこれは。さっきの第三戦とよく似ている。でもまあ、数の大きなハイカードが多く、悪くはない。
ただ、先程付け足したルールのおかげで、味澤はじっくりと手を育ててくるかもしれない。降りられない僕に対して、最高の手を作ってから攻めるのは常套手段だろう。この手札から大きな役を作るには、ストレートか、クラブのフラッシュか。
そんな思考をしている僕の目の前で、先手番の味澤が喜色に富んだ声で言った。
「チェンジはなしだ」
「考えるまでもない。そのルールなら充分に挽回可能だ。こちとらどうせ一度は負けを覚悟した身。失うものはプライドぐらいで、懐は傷まないしな。やるよ」
考えるまでもないと言った割に長広舌だった。そんな味澤はディーラーから僕へと視線を移し、言った。
「俺は若い奴の考えについて行けてるつもりだったが、おまえは相当変わった奴だな。一度手にした勝利を手放す危険があるってのに、自らこんな提案をしてくるとは理解を超えている」
「チップは多ければ多いほどいいと判断したまでですよ」
「そっちにもメリットがあると認めるんだな。じゃあ、その分、俺からも一つくらい、ルールを提案する権利をくれないか」
「……」
この申し出にはちょっと虚を突かれた。僕にもメリットがあるという文言を僕自身から引き出した上で、畳み掛けてくる辺り、駆け引き慣れしている。まだまだ闘志は衰えていないと見た。油断ならない。
「認めざるをえませんね。でも、あまりにもバランスを欠いたルールなら、拒みますよ」
「安心してくれ。俺だって馬鹿じゃないし、それなりの節度ってものは持っている。そうだな。こういうのはどうだろうな。『相手の手札五枚を全て言い当てた場合、それまでの勝敗及び獲得枚数とは無関係に、勝者となる』」
「五枚全て……とは、オープンの権利を使わずにですか」
「いや。使うことを認めないと、現実味がないだろう。四枚まで開けさせて、最後の一枚を勘で答える。もしも的中したら、大逆転という訳だ。夢があるだろ」
「まあ、バランスは問題ないですが……僕は充分にあなたも勝てるルールを提案したつもりでしたが、どうしてこんなルールを追加する気になったんでしょうか」
「充分に勝てるってのは、怪しいな。劣勢だった立場でこんな主張をするのは気恥ずかしいが、そちらが見せた隙なんだから利用させてもらう。俺が勝つには、そっちの枚数が多くて降りられない内に、十八、三十六、七十二と倍々に賭けて三連勝してやっと逆転。三連勝自体が難しいのは言うまでもないし、そのあともリードを維持するのは簡単ではないだろう。だから、一発逆転の目を残しておこうと思ったまでよ」
「なるほど、理解しました。僕にとっても、一発逆転の目が最後まであるのは魅力です。認めますよ。ただし、もう一つだけルールを追加しておきましょう」
「何だ? まさか賭けるチップの枚数を、毎回十八枚に固定するとかじゃないだろうな?」
「そんなことは言いません、これ以上のルール変更はなし。勝負が決するまで、このままで」
「それならいい」
話はまとまり、勝負再開。というか勝負続行、かな?
第四戦。新たに取り決めたルール上、今回は僕だけ最初から十八枚のチップを積んでいる。これ以上の上乗せはないし、ドロップもない。
最初に配られた五枚は次の通り。
クラブのクイーン、スペードのエース、クラブのジャック、ダイヤの4 クラブの5
何だこれは。さっきの第三戦とよく似ている。でもまあ、数の大きなハイカードが多く、悪くはない。
ただ、先程付け足したルールのおかげで、味澤はじっくりと手を育ててくるかもしれない。降りられない僕に対して、最高の手を作ってから攻めるのは常套手段だろう。この手札から大きな役を作るには、ストレートか、クラブのフラッシュか。
そんな思考をしている僕の目の前で、先手番の味澤が喜色に富んだ声で言った。
「チェンジはなしだ」
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