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第二話 マスク可のバイトある?
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覆面調査員という仕事があるのだと初めて耳にしたとき、興味をちょっと惹かれた。
高校生になって、アルバイトができるようになった頃、覆面調査員も選択肢の一つとして、頭の片隅にあった。けれども、きっと難しい試験があるか、資格が必要に違いないと思い、すぐに候補から外した。
そして大学生になった今、登録型の覆面調査員という制度があるのを知った。名前や住所などの個人情報の他に興味のあるカテゴリーも登録しておけば、早い者勝ちの募集告知がメールで来る。実績を積み重ねればじかに指名が掛かることもあるという。
これならハードルが低く、自分でもできそうな気がしたので、やってみることに決めた。この手のサイトはいくつかあったけれども、国内大手がいいだろうと思い、“異趣欄”を選んでみた。
選んでみたのだけど、登録から一ヶ月以上が経過しても、具体的な仕事の案内は一切なかった。友達に「これ、だまされてるのかな?」と相談してみたら、どんなカテゴリーを希望したのと問い返された。
私の返事は、料理屋と映画、エステ、アロマといったところにチェックを入れたと。すると友達に少し呆れられてしまった。
偏った、いわゆる女子好みのカテゴリーばかりにチェックを入れたのなら、そんなもんだよと言われた。どれも人気があるし、映画は批評眼の実績が欲しいし、料理屋はお酒が飲める人とかカップルで行ける人とか、条件付きである場合も多いらしい。
私は、好きなカテゴリーをなくし、全てオープン、どんと来い状態に変更してみた。だいぶ思い切ったつもり。ただし、お酒は飲めないので、それだけはNG項目にしたままだったけど。あとカップルどうこうっていうのは、他の調査員と共同で行う形式でもかまわないという項目にOKを付ければ解決すると分かった。
すると翌日から、何件かのメールが来るようになった。いきなりラブホテルの利用調査とあったので、それはさっさと削除したけれども、後は一応目を通してみる。
メガ盛りメニュー体験、美顔器のユーステスト、プロレス観戦となかなかユニークなものが目を引く。中には、自分の時間を一時間単位で切り売りしている人を試して、覆面調査するというのもあった。ネット社会だなぁ。
目移りしてしまい、決めるのに時間を要してしまったけれども、平日の遊園地をお一人様で利用、ワンコインヘアカットの店をおまかせ指定で利用、客にルールを押し付けてくることで有名な頑固親父が店主をやっているカレー専門店一週間連続利用、これら三つのちょっと癖のある物に応じる返信をしておいた。
三つの中で一番やってみたいのは、遊園地かな。ただし報酬はほぼゼロ。交通費と遊園地の入園料に相当する額プラス六千円。遊園地内で別途かかる料金については、この六千円の中から出さなきゃならない。
報酬がいいのはヘアカット。若い女性でこれに応募する人がほとんどいないみたい。そりゃまあ、似合わない、変なヘアスタイルにされる可能性もあるだろうけれど、普通は常識の範囲内で収めてくれるでしょ。
カレー屋さんのは、何とも言えない。頑固店主で有名とあるけど私は知らない。カレーライスは好きだけれども、毎日となるとうーんだし、においが髪や服に着かないかも心配。微妙~っていうのが本音だ。一週間連続で来れば頑固店主の態度が変わるかどうかが、メインの調査目的というから、まるでテレビのバラエティ番組だ。
二日後、採否の結果がメールで送られてきた。
× 遊園地
× ヘアカット
○ カレー屋
ということで、カレー屋さんに決定。はあぁ……素直に喜べないけど、興味はあるって感じかしら。
とにもかくにも、がんばってみようっと。
つづく
高校生になって、アルバイトができるようになった頃、覆面調査員も選択肢の一つとして、頭の片隅にあった。けれども、きっと難しい試験があるか、資格が必要に違いないと思い、すぐに候補から外した。
そして大学生になった今、登録型の覆面調査員という制度があるのを知った。名前や住所などの個人情報の他に興味のあるカテゴリーも登録しておけば、早い者勝ちの募集告知がメールで来る。実績を積み重ねればじかに指名が掛かることもあるという。
これならハードルが低く、自分でもできそうな気がしたので、やってみることに決めた。この手のサイトはいくつかあったけれども、国内大手がいいだろうと思い、“異趣欄”を選んでみた。
選んでみたのだけど、登録から一ヶ月以上が経過しても、具体的な仕事の案内は一切なかった。友達に「これ、だまされてるのかな?」と相談してみたら、どんなカテゴリーを希望したのと問い返された。
私の返事は、料理屋と映画、エステ、アロマといったところにチェックを入れたと。すると友達に少し呆れられてしまった。
偏った、いわゆる女子好みのカテゴリーばかりにチェックを入れたのなら、そんなもんだよと言われた。どれも人気があるし、映画は批評眼の実績が欲しいし、料理屋はお酒が飲める人とかカップルで行ける人とか、条件付きである場合も多いらしい。
私は、好きなカテゴリーをなくし、全てオープン、どんと来い状態に変更してみた。だいぶ思い切ったつもり。ただし、お酒は飲めないので、それだけはNG項目にしたままだったけど。あとカップルどうこうっていうのは、他の調査員と共同で行う形式でもかまわないという項目にOKを付ければ解決すると分かった。
すると翌日から、何件かのメールが来るようになった。いきなりラブホテルの利用調査とあったので、それはさっさと削除したけれども、後は一応目を通してみる。
メガ盛りメニュー体験、美顔器のユーステスト、プロレス観戦となかなかユニークなものが目を引く。中には、自分の時間を一時間単位で切り売りしている人を試して、覆面調査するというのもあった。ネット社会だなぁ。
目移りしてしまい、決めるのに時間を要してしまったけれども、平日の遊園地をお一人様で利用、ワンコインヘアカットの店をおまかせ指定で利用、客にルールを押し付けてくることで有名な頑固親父が店主をやっているカレー専門店一週間連続利用、これら三つのちょっと癖のある物に応じる返信をしておいた。
三つの中で一番やってみたいのは、遊園地かな。ただし報酬はほぼゼロ。交通費と遊園地の入園料に相当する額プラス六千円。遊園地内で別途かかる料金については、この六千円の中から出さなきゃならない。
報酬がいいのはヘアカット。若い女性でこれに応募する人がほとんどいないみたい。そりゃまあ、似合わない、変なヘアスタイルにされる可能性もあるだろうけれど、普通は常識の範囲内で収めてくれるでしょ。
カレー屋さんのは、何とも言えない。頑固店主で有名とあるけど私は知らない。カレーライスは好きだけれども、毎日となるとうーんだし、においが髪や服に着かないかも心配。微妙~っていうのが本音だ。一週間連続で来れば頑固店主の態度が変わるかどうかが、メインの調査目的というから、まるでテレビのバラエティ番組だ。
二日後、採否の結果がメールで送られてきた。
× 遊園地
× ヘアカット
○ カレー屋
ということで、カレー屋さんに決定。はあぁ……素直に喜べないけど、興味はあるって感じかしら。
とにもかくにも、がんばってみようっと。
つづく
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