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手掛かりはネットで拾う
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「あるにはある。ただで引き取ってきたビデオソフト、アダルトじゃないやつだが、何百本かを二束三文で勅使河原氏に売っている。その後、出演者が問題を起こしたとかでDVD・ブルーレイ化が中止になった映画のビデオソフトが数本あり、それらの値が急騰。そのことで勅使河原氏に追加の支払いを希望するも、断られている。半年ほど前の話だな」
「値上がりしたと言ったって、せいぜい千円ぐらいじゃないの? そんなので殺す?」
大前田が呈した疑問に、パソコン画面を眺めていた栄尾口は、新たな閃きを得て答えた。
「この写真に写っている中に、特に高価な物があるのかもしれないな。それこそマニア相手なら十万、二十万するような。かつてまとめ売りで儲け損なった分を返してもらおうと、高価な物を奪う目的で殺したのかもしれない」
「ネットにある写真をじっくり見たら高価な物があると分かり、目を着けたという流れか」
五所川原は腕を組み直した。
「ううん、どうかな。若林という男が急浮上したことは確かだが、ネットの写真で高価な物を見付けたからなんて言い出したら、それこそ世の中の誰もが知り得る情報だからな。誰が犯人であってもおかしくないことになるぞ。ましてや若林はさっきも言ったように、目利きはたいしたことない」
「いや、犯人は被害者と顔見知りであるはずです。そうでないと、被害者はダイイングメッセージを残せる余地がほとんどないでしょう。被害者にとって、犯人の名前が分かるからこそ、メッセージを残すんじゃないかなあ。名前が分からないからせめて身体的特徴を残そう、というのはなかなかハードルが高いですよ。目利きじゃないという点にしても、過去の失敗を反省して勉強したのかもしれないし、ネットで検索するだけでもそれなりの相場は掴めるでしょうから。ともかく、この写真に写っている物から消えた物があるか否か、チェックするのがいいんじゃないですか」
「まあ、そうだよな。しかし写真が約一年前なら、現代までの間にラックに立てる品の入れ替えがあってもおかしくはない。期待せん方がいいんじゃないか。ああ、こんな流れになると分かっていたなら、現場写真をもっと持ち出して来たんだがなあ」
「デジタル化、ハイテク化が進んでるんじゃないんですかー? ネットのこの画像を捜査本部に送って直に見比べてもらったら早そうなのに」
大前田が呆れ混じりに言うと、五所川原は苦虫を噛み潰したような顔つきになった。
「できなくはないんだが、少し前に間違えて内部の情報を全く関係ないところへ送ってしまった奴がいてな。そいつの処分だけでなく、組織の引き締めのために、捜査に関係する情報や資料はメールで送るなと伝達があった。じきに解除されると思うんだが」
「面倒なところですね、警察って。内部にあった情報が出ていくのに制限を掛けるだけならまだしも、外から新たに入ってくる情報にまで制限を掛けるだなんて」
そんな五所川原と大前田のやり取りを聞いていた栄尾口は、ふと、思い付いた。
「それなら、さっきのネット画像のあったページのURLを電話で知らせて、照合を頼めばいいのでは」
「……それもそうだな」
あっさり解決。五所川原は早速URLを同僚に知らせて、現場写真の一つと照会するように頼んで電話を切った。
「折り返し連絡しますと言われた。几帳面な奴だから、ひょっとしたら写真だけに飽き足らず、実際に押収した証拠品とも照らし合わせるかもしれない。時間が掛かるぞ」
「え、あれに映っていたラックの中身も全部、持って行ったんですか」
思わず聞き返す栄尾口。ちょっとびっくりした。
「そう聞いてる。被害者がそこから抜き取ったと思われる一本を抱えて死んでたんだから、当然だろう」
続く
「値上がりしたと言ったって、せいぜい千円ぐらいじゃないの? そんなので殺す?」
大前田が呈した疑問に、パソコン画面を眺めていた栄尾口は、新たな閃きを得て答えた。
「この写真に写っている中に、特に高価な物があるのかもしれないな。それこそマニア相手なら十万、二十万するような。かつてまとめ売りで儲け損なった分を返してもらおうと、高価な物を奪う目的で殺したのかもしれない」
「ネットにある写真をじっくり見たら高価な物があると分かり、目を着けたという流れか」
五所川原は腕を組み直した。
「ううん、どうかな。若林という男が急浮上したことは確かだが、ネットの写真で高価な物を見付けたからなんて言い出したら、それこそ世の中の誰もが知り得る情報だからな。誰が犯人であってもおかしくないことになるぞ。ましてや若林はさっきも言ったように、目利きはたいしたことない」
「いや、犯人は被害者と顔見知りであるはずです。そうでないと、被害者はダイイングメッセージを残せる余地がほとんどないでしょう。被害者にとって、犯人の名前が分かるからこそ、メッセージを残すんじゃないかなあ。名前が分からないからせめて身体的特徴を残そう、というのはなかなかハードルが高いですよ。目利きじゃないという点にしても、過去の失敗を反省して勉強したのかもしれないし、ネットで検索するだけでもそれなりの相場は掴めるでしょうから。ともかく、この写真に写っている物から消えた物があるか否か、チェックするのがいいんじゃないですか」
「まあ、そうだよな。しかし写真が約一年前なら、現代までの間にラックに立てる品の入れ替えがあってもおかしくはない。期待せん方がいいんじゃないか。ああ、こんな流れになると分かっていたなら、現場写真をもっと持ち出して来たんだがなあ」
「デジタル化、ハイテク化が進んでるんじゃないんですかー? ネットのこの画像を捜査本部に送って直に見比べてもらったら早そうなのに」
大前田が呆れ混じりに言うと、五所川原は苦虫を噛み潰したような顔つきになった。
「できなくはないんだが、少し前に間違えて内部の情報を全く関係ないところへ送ってしまった奴がいてな。そいつの処分だけでなく、組織の引き締めのために、捜査に関係する情報や資料はメールで送るなと伝達があった。じきに解除されると思うんだが」
「面倒なところですね、警察って。内部にあった情報が出ていくのに制限を掛けるだけならまだしも、外から新たに入ってくる情報にまで制限を掛けるだなんて」
そんな五所川原と大前田のやり取りを聞いていた栄尾口は、ふと、思い付いた。
「それなら、さっきのネット画像のあったページのURLを電話で知らせて、照合を頼めばいいのでは」
「……それもそうだな」
あっさり解決。五所川原は早速URLを同僚に知らせて、現場写真の一つと照会するように頼んで電話を切った。
「折り返し連絡しますと言われた。几帳面な奴だから、ひょっとしたら写真だけに飽き足らず、実際に押収した証拠品とも照らし合わせるかもしれない。時間が掛かるぞ」
「え、あれに映っていたラックの中身も全部、持って行ったんですか」
思わず聞き返す栄尾口。ちょっとびっくりした。
「そう聞いてる。被害者がそこから抜き取ったと思われる一本を抱えて死んでたんだから、当然だろう」
続く
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