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エピソード3:遠眼鏡 2
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「いえ、警部。彼らは全員、何かを観察することを得意にしている」
「観察、だって?」
声を上げたコナン警部。
アベルの方は、すぐに理解できたらしい。
「なるほど。カメラマンやバードウォッチャーは言うまでもない。新聞記者や探偵は、張り込みが重要な仕事。競馬記者は……そうか、パドックで馬を観察するんだったかな。双眼鏡か何かで」
「共通点は分かったが、何の意味があって、カインはそういった連中を犠牲者に選んだんだ? そこのところの説明がつかない限り、偶然の一致という見方を取りたいね」
「推測ばかりになるな」
苦笑するアベル。
「カインは、ある特定の能力を持つ魔玉の者を生み出したいらしい。眼とか視力に関する特別な能力だろう」
「そうだとして、元の人間の職業が、魔玉の者としての能力に関係するのかねえ」
「実際はそうであろうがなかろうが、ある特定の能力者を作りたいと思ったら、こういう行動に出ても不思議ではない。違うだろうか、警部?」
「あなたが言うのなら、肯定するしかないでしょうが」
コナン警部も、苦笑いを浮かべた。
「眼に関係する特殊能力か。どんなんでしょうな」
「視力が特別にいいとか?」
と、フランク。
「それはちょっと……。視力がいいと言っても、アフリカ大陸の人種民族のように、大平原で暮らしている人間には、我々の想像を超えた視力を持つ者もいるしね。血眼になって求めるほどの能力とは思えない。
その他に考えられるのは……ほんの一瞬、見ただけの事象を完璧に記憶する能力。あるいは観察眼――外見だけからその人物の持つ情報を読み取る能力」
「いわゆる超能力的なものも、考えられませんかね?」
コナン警部の言葉は、どこか警部らしくない。
「壁の向こうにある物を覗けるとか、裏向きのまま、カードの数字を言い当てるとか」
「透視ですか」
「それです。手品でない、本物の超能力ってものがあるのなら、何かと犯罪に使えるでしょう」
「結局、問題はそこか……。カインが欲している能力の正体」
腕組みするアベル。気難しげに、眉間に深い皺を刻んだ。
「警部、五人目の犠牲者が出たのは、いつです?」
「一昨日。検死も不完全のまま、とにかく知らせようと思いましてね」
「二日前……。カインの奴は、まだ目的の能力を得ていないのかもしれないな。犠牲者が増えないよう、対策を立てたいものだが……まさか、カメラマンや新聞記者達に、注意を呼びかける訳にもいくまい。仮にそうしても、あのカインのこと、別の職業人に目を着けるのは必定」
「要は、カイン自身を見つけて、叩きのめすこと、これですよ」
議論が面倒になってきたのか、コナン警部はいささか短絡的に言った。
「その鍵になりそうなのが、さっきのあれですな。太陽の光に弱いんじゃないかっていう」
「その確認のためにも、天文学や考古学等、知りたいことは限りなくある。時間をかけている余裕はないのだが、先にも言ったように、それぞれの専門領域のガードは堅いね」
「何なら、私が警察の威光をちらつかせますかな」
どこか吐き捨てるような口調のコナン。
「ふふ。今のところ、いいですよ。まだ、あてはあります」
いくらか自信ありげに、アベルは言い切った。
「音信不通だった、旧知の天文学者と連絡が取れましてね。明日、会いに行く約束を取り付けたんです。彼なら協力してくれるでしょう」
「何ていう方ですか?」
初耳だったので、フランクは尋ねてみた。
「スティーブン・ロビンソン。年齢は、向こうがかなり上だけど、昔から親しく付き合ってもらってね。非常に気さくな人なのは、きっと変わっていまい。それにもう一つ、ロビンソン博士はカインとも面識があるのだよ」
「え?」
「私とカインは、当時、共にロビンソン博士と行き来があった。カインの奴、天文学の知識は博士から得ていたよ」
目を細めるアベル。さすがに懐かしそうである。が、その表情はすぐに引き締められた。
「博士がカインを知っているのは、大きな利点だよ。カインの正体を知ってもらって、注意してもらうと同時に協力を仰ぎたい」
「なるほど、カインのことを話せるのは、大きいかもしれない」
コナン警部は納得したようにうなずく。それから、ふと思い出したように時計をかざした。
「いかん。そろそろ戻らないと、上からどやされかねないな。何せ、勤務時間を割いてるもんですから、立場が弱くていけませんな。じゃ、ここらで失礼します。カインをぶっ倒す策、頼みますよ」
洒落者のように片目をつむると、警部は立ち上がった。
「何とかなるよう、努力します。しなきゃなりませんからね」
そう返して、アベルはフランクと共に警部を見送った。
翌日、昼食を終えてから、アベルは出かける身支度を整えた。今回、フランクも同行する。
これまでなら、訪ねた先がどんな反応を見せようとも、日が暮れぬ内に帰宅する意志を持てたが、旧来の知人との久しぶりの再会となると、どうなるか分からない。そんなアベルの意向から、フランクの同行となったのだ。
行き交うタクシーをつかまえ、乗り込んだところで、フランクは聞いてみた。
「遠いのですか」
「そうでもない。――この住所までやってくれ」
運転手に、メモを見せるアベル。
「分かりました」
「時間は、どれぐらいかかるかね?」
「一時間足らずといったところになりますね」
運転手の言葉に、フランクは懐中時計を見た。今からだと、二時には到着することになる。
「晴れてよかった」
窓から外を覗きながら、フランク。
「曇りだと、どうなるのでしょうね、カイン――」
「フランク、その話はよそう。あまり楽しくない」
ぴしゃりと言って、目を閉じるアベル。次の瞬間、フランクは理解した。運転手がいるのだから、カインの話はするなという意味を。
運転手の言葉は正しかった。郊外の、ちょっとした緑に囲まれたスティーブン・ロビンソン博士の屋敷の前に二人が降り立ったとき、時計は午後二時を示していた。
「ありがとう」
運転手を帰してから、二人はアベルを先頭に、敷地内へと足を踏み入れる。
玄関の正面に立つと、アベルは懐かしそうに建物を見上げてから、軽く深呼吸をしたらしい。それから、扉の上方横に付いている鐘を鳴らした。
からんからんと、心地よい音がしてからしばらく後――。
「どちら様でしょうか?」
女性の声がした。ふと気付けば、扉に設けられた細い覗き窓が開いている。
「午後からの訪問をお約束していただいているはずです。エフ・アベルです」
確かめるためか、一瞬の間があってから、扉向こうの女性は再び反応した。
「エフ・アベルさんにフランク・シュタイナーさんですね? はい、只今」
扉が引き開けられると、そこには家事用の前掛けをした、中年女性が立っていた。さっきまでの警戒の仕方とは裏腹に、花が咲いたような笑顔をしている。
「失礼しました。どうぞ、お入りください」
「どうも。……やけに、用心されているようですが……」
女性の応対ぶりが引っかかったらしく、アベルは率直に尋ねた。
「最近は、刻み屋ニックなんていう通り魔なんかが出たり、連続殺人が起こったりと、街の方が物騒になってきましたから。この辺りでも用心するのに越したことはない。そう思いません?」
「いや、よく分かります。ところで……あなたは、ロビンソン博士の」
「私から見て、博士は義理の父に当たります。ベルサと言います」
笑顔を絶やさず、彼女が答える。その手は忙しく、お茶の準備をしているらしい。
「では、あなたがヘンリーの細君ですか?」
「はい」
ベルサ・ロビンソンの声が小さくなった。
「あの、ヘンリーは……?」
嫌な予感を抱いたらしく、アベルの表情が曇る。フランクとしては、ただそれを見守ることしかできない。
「亡くなりました。そう、四年前の四月十五日のことですわ」
いくらか伏せがちになっていた面を上げ、ベルサは気丈そうに言った。さらさらと髪が流れるのが、見て取れた。
「事故でした。馬車の方ですけれど」
「それは……知りませんでした。お悔やみ申し上げます」
「いえ……。もう四年ですから……大丈夫です。それより、義父にご用なのでしょう? ご案内します」
ベルサは、お盆にカップやらポットやらを載せ、よい姿勢で歩き始めた。
「お願いします」
ヘンリーについて色々聞きたそうなアベルだったが、本来の目的を思い出したか、唇を噛みしめた。
階段を行くベルサのあとに、ゆっくりと付き従うアベルとフランク。屋敷内は、奇妙なほどに静かだった。
「お子さんは……」
螺旋階段の途中、我慢しきれなくなった感じで、アベルが質問を発した。
「私とヘンリーの、ですか?」
「はい。この家に残っておられるということは、いるのだろうと思いましたから……」
「おります。寮に入っているのですが、娘が一人。アニタという名前で、十九ですわ」
自慢の娘なのだろう、楽しげな表情をなすベルサ。
「学生さんですか」
「はい。ヘンリーは義父の学究者的素養を受け継がなかったようですが、アニタには隔世遺伝したみたいで……。天文学じゃありませんけれど、考古学なんかを。土を掘り返して、何が面白いのか、私にはさっぱりなんですけれどね」
「それは楽しみですね。考古学は、これから技術の進歩で、次々と新しい事実が判明するでしょうから、きっとアニタさんにとっても、楽しいものとなりますよ」
「そういうものですか」
ベルサが答えたところで、階段を昇りきった。そして、すぐ正面の大部屋へと向かう。
「お義父さん、アベルさん達がお見えになりましたわ」
「――ああ、分かった。お通ししてくれ」
このとき、フランクはアベルの横顔を見やった。ほころんだように見えた。
ベルサは扉を開け、手近のテーブルに盆を置くと、
「どうぞ」
と言い残して、退いて行った。
「お久しぶりです、ロビンソン博士」
続く
「観察、だって?」
声を上げたコナン警部。
アベルの方は、すぐに理解できたらしい。
「なるほど。カメラマンやバードウォッチャーは言うまでもない。新聞記者や探偵は、張り込みが重要な仕事。競馬記者は……そうか、パドックで馬を観察するんだったかな。双眼鏡か何かで」
「共通点は分かったが、何の意味があって、カインはそういった連中を犠牲者に選んだんだ? そこのところの説明がつかない限り、偶然の一致という見方を取りたいね」
「推測ばかりになるな」
苦笑するアベル。
「カインは、ある特定の能力を持つ魔玉の者を生み出したいらしい。眼とか視力に関する特別な能力だろう」
「そうだとして、元の人間の職業が、魔玉の者としての能力に関係するのかねえ」
「実際はそうであろうがなかろうが、ある特定の能力者を作りたいと思ったら、こういう行動に出ても不思議ではない。違うだろうか、警部?」
「あなたが言うのなら、肯定するしかないでしょうが」
コナン警部も、苦笑いを浮かべた。
「眼に関係する特殊能力か。どんなんでしょうな」
「視力が特別にいいとか?」
と、フランク。
「それはちょっと……。視力がいいと言っても、アフリカ大陸の人種民族のように、大平原で暮らしている人間には、我々の想像を超えた視力を持つ者もいるしね。血眼になって求めるほどの能力とは思えない。
その他に考えられるのは……ほんの一瞬、見ただけの事象を完璧に記憶する能力。あるいは観察眼――外見だけからその人物の持つ情報を読み取る能力」
「いわゆる超能力的なものも、考えられませんかね?」
コナン警部の言葉は、どこか警部らしくない。
「壁の向こうにある物を覗けるとか、裏向きのまま、カードの数字を言い当てるとか」
「透視ですか」
「それです。手品でない、本物の超能力ってものがあるのなら、何かと犯罪に使えるでしょう」
「結局、問題はそこか……。カインが欲している能力の正体」
腕組みするアベル。気難しげに、眉間に深い皺を刻んだ。
「警部、五人目の犠牲者が出たのは、いつです?」
「一昨日。検死も不完全のまま、とにかく知らせようと思いましてね」
「二日前……。カインの奴は、まだ目的の能力を得ていないのかもしれないな。犠牲者が増えないよう、対策を立てたいものだが……まさか、カメラマンや新聞記者達に、注意を呼びかける訳にもいくまい。仮にそうしても、あのカインのこと、別の職業人に目を着けるのは必定」
「要は、カイン自身を見つけて、叩きのめすこと、これですよ」
議論が面倒になってきたのか、コナン警部はいささか短絡的に言った。
「その鍵になりそうなのが、さっきのあれですな。太陽の光に弱いんじゃないかっていう」
「その確認のためにも、天文学や考古学等、知りたいことは限りなくある。時間をかけている余裕はないのだが、先にも言ったように、それぞれの専門領域のガードは堅いね」
「何なら、私が警察の威光をちらつかせますかな」
どこか吐き捨てるような口調のコナン。
「ふふ。今のところ、いいですよ。まだ、あてはあります」
いくらか自信ありげに、アベルは言い切った。
「音信不通だった、旧知の天文学者と連絡が取れましてね。明日、会いに行く約束を取り付けたんです。彼なら協力してくれるでしょう」
「何ていう方ですか?」
初耳だったので、フランクは尋ねてみた。
「スティーブン・ロビンソン。年齢は、向こうがかなり上だけど、昔から親しく付き合ってもらってね。非常に気さくな人なのは、きっと変わっていまい。それにもう一つ、ロビンソン博士はカインとも面識があるのだよ」
「え?」
「私とカインは、当時、共にロビンソン博士と行き来があった。カインの奴、天文学の知識は博士から得ていたよ」
目を細めるアベル。さすがに懐かしそうである。が、その表情はすぐに引き締められた。
「博士がカインを知っているのは、大きな利点だよ。カインの正体を知ってもらって、注意してもらうと同時に協力を仰ぎたい」
「なるほど、カインのことを話せるのは、大きいかもしれない」
コナン警部は納得したようにうなずく。それから、ふと思い出したように時計をかざした。
「いかん。そろそろ戻らないと、上からどやされかねないな。何せ、勤務時間を割いてるもんですから、立場が弱くていけませんな。じゃ、ここらで失礼します。カインをぶっ倒す策、頼みますよ」
洒落者のように片目をつむると、警部は立ち上がった。
「何とかなるよう、努力します。しなきゃなりませんからね」
そう返して、アベルはフランクと共に警部を見送った。
翌日、昼食を終えてから、アベルは出かける身支度を整えた。今回、フランクも同行する。
これまでなら、訪ねた先がどんな反応を見せようとも、日が暮れぬ内に帰宅する意志を持てたが、旧来の知人との久しぶりの再会となると、どうなるか分からない。そんなアベルの意向から、フランクの同行となったのだ。
行き交うタクシーをつかまえ、乗り込んだところで、フランクは聞いてみた。
「遠いのですか」
「そうでもない。――この住所までやってくれ」
運転手に、メモを見せるアベル。
「分かりました」
「時間は、どれぐらいかかるかね?」
「一時間足らずといったところになりますね」
運転手の言葉に、フランクは懐中時計を見た。今からだと、二時には到着することになる。
「晴れてよかった」
窓から外を覗きながら、フランク。
「曇りだと、どうなるのでしょうね、カイン――」
「フランク、その話はよそう。あまり楽しくない」
ぴしゃりと言って、目を閉じるアベル。次の瞬間、フランクは理解した。運転手がいるのだから、カインの話はするなという意味を。
運転手の言葉は正しかった。郊外の、ちょっとした緑に囲まれたスティーブン・ロビンソン博士の屋敷の前に二人が降り立ったとき、時計は午後二時を示していた。
「ありがとう」
運転手を帰してから、二人はアベルを先頭に、敷地内へと足を踏み入れる。
玄関の正面に立つと、アベルは懐かしそうに建物を見上げてから、軽く深呼吸をしたらしい。それから、扉の上方横に付いている鐘を鳴らした。
からんからんと、心地よい音がしてからしばらく後――。
「どちら様でしょうか?」
女性の声がした。ふと気付けば、扉に設けられた細い覗き窓が開いている。
「午後からの訪問をお約束していただいているはずです。エフ・アベルです」
確かめるためか、一瞬の間があってから、扉向こうの女性は再び反応した。
「エフ・アベルさんにフランク・シュタイナーさんですね? はい、只今」
扉が引き開けられると、そこには家事用の前掛けをした、中年女性が立っていた。さっきまでの警戒の仕方とは裏腹に、花が咲いたような笑顔をしている。
「失礼しました。どうぞ、お入りください」
「どうも。……やけに、用心されているようですが……」
女性の応対ぶりが引っかかったらしく、アベルは率直に尋ねた。
「最近は、刻み屋ニックなんていう通り魔なんかが出たり、連続殺人が起こったりと、街の方が物騒になってきましたから。この辺りでも用心するのに越したことはない。そう思いません?」
「いや、よく分かります。ところで……あなたは、ロビンソン博士の」
「私から見て、博士は義理の父に当たります。ベルサと言います」
笑顔を絶やさず、彼女が答える。その手は忙しく、お茶の準備をしているらしい。
「では、あなたがヘンリーの細君ですか?」
「はい」
ベルサ・ロビンソンの声が小さくなった。
「あの、ヘンリーは……?」
嫌な予感を抱いたらしく、アベルの表情が曇る。フランクとしては、ただそれを見守ることしかできない。
「亡くなりました。そう、四年前の四月十五日のことですわ」
いくらか伏せがちになっていた面を上げ、ベルサは気丈そうに言った。さらさらと髪が流れるのが、見て取れた。
「事故でした。馬車の方ですけれど」
「それは……知りませんでした。お悔やみ申し上げます」
「いえ……。もう四年ですから……大丈夫です。それより、義父にご用なのでしょう? ご案内します」
ベルサは、お盆にカップやらポットやらを載せ、よい姿勢で歩き始めた。
「お願いします」
ヘンリーについて色々聞きたそうなアベルだったが、本来の目的を思い出したか、唇を噛みしめた。
階段を行くベルサのあとに、ゆっくりと付き従うアベルとフランク。屋敷内は、奇妙なほどに静かだった。
「お子さんは……」
螺旋階段の途中、我慢しきれなくなった感じで、アベルが質問を発した。
「私とヘンリーの、ですか?」
「はい。この家に残っておられるということは、いるのだろうと思いましたから……」
「おります。寮に入っているのですが、娘が一人。アニタという名前で、十九ですわ」
自慢の娘なのだろう、楽しげな表情をなすベルサ。
「学生さんですか」
「はい。ヘンリーは義父の学究者的素養を受け継がなかったようですが、アニタには隔世遺伝したみたいで……。天文学じゃありませんけれど、考古学なんかを。土を掘り返して、何が面白いのか、私にはさっぱりなんですけれどね」
「それは楽しみですね。考古学は、これから技術の進歩で、次々と新しい事実が判明するでしょうから、きっとアニタさんにとっても、楽しいものとなりますよ」
「そういうものですか」
ベルサが答えたところで、階段を昇りきった。そして、すぐ正面の大部屋へと向かう。
「お義父さん、アベルさん達がお見えになりましたわ」
「――ああ、分かった。お通ししてくれ」
このとき、フランクはアベルの横顔を見やった。ほころんだように見えた。
ベルサは扉を開け、手近のテーブルに盆を置くと、
「どうぞ」
と言い残して、退いて行った。
「お久しぶりです、ロビンソン博士」
続く
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