つむいでつなぐ

崎田毅駿

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その5

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「そう。実際、使われている顔文字には、(=◇=)というのがあるしね。ところで、顔文字でローマ字表現を行うとしたら、困ることがまだある。“ん”は顔文字にならないんだ。口無しにも母音をあてがったおかげで、“ん”は目だけにならざるを得ない」
「そうすると……YIを“ん”にするか」
「それが自然な発想だろうねえ。じゃあ、口無しと◇、どちらがIでどちらがEか? その判断のために、(H_H#)(=◇=)(=_=) を検討してみる。分かったところだけ変換すると、『P_ぇY_』か『P_んY_』になる。_には同じ母音で、AかUが入ると分かっているから、考えられる言葉をリストアップするのは簡単だよ。やってみよう。『ぱぇや』『ぷぇゆ』『ぱんや』『ぷんゆ』の四通りしかない。単語あるいは文章の途中だとしても、意味のありそうなものは、『ぱんや』だけと言っていいね」
「凄いな! てことはだ、(=◇=)が“ん”であると分かったばかりか、◇がI、口無しがE、_がAも確定だ。あ、残る-がUなのも決まった!」
「『ぱんや』は『パン屋』で当然、待ち合わせ場所だね。近所に『パン屋』と言うだけで通じる店があったっけ?」
「『パン屋という名のパン屋さん』てのが有名だぜ」
「多分それだ。では、(キ゚O゚) は“ご”“ぞ”のいずれかだが、そこから先は決め手なし。いずれにしろそのあとに『パン屋』とつなげるには無理がある。『ぞぱんや』や『ごぱんや』なんて聞かない」
「ないな」
「つまり、(キ゚O゚)と(H_H#)の間で、文章が一旦切れるんだ。(H_H#) 以下の文は、パン屋が主語で、待ち合わせ場所を表していることが確実視できる。判明した分を書けば、『ぱんや~O-A^Eで』となる」 
「パン屋OAEで……。場所を表すのだから、『パン屋の~で』『パン屋と~で』辺りか」
「(~O~)は“と”ではないよ。タ行はTとしたんだから」
「じゃ、『パン屋の~で』で決まりだろ。パン屋のAEで……あえで……これ、『パン屋の前で』しか考えられなくないか?」
「同感。これにより~はN、-はM、^はAというかア行になる。判明分をまとめると、『あ;U;Iょう゚O パン屋の前で』だね。残る子音はKSRWで、゚ は濁音になり得るから、カ行のKかサ行のS。一方、; はWではない。WUやWIは必要ないからね。これらの条件を元に考え得る文字列をリストアップすると、『あくきょうぞ』『あすしょうご』『あるりょうご』『あるりょうぞ』の四通り。意味が通じるのは『あすしょうご』のみ。『明日正午』と解釈すれば、待ち合わせの時間を示すとの推測にも合致する。きっと昨日の金曜に学校で、最終確認のこの手紙をもらったんだろうね」
「やったぞ! まさかこんなにきれいに解けるとは!」
「いやいや。仮定を積み重ねた挙げ句の結論だから、合っているとは限らない。当人に聞かないことには……おっ、さっき大声を出したおかげで、お目覚めのようだ」
「よっ。大丈夫か。ところでパン屋に急いでるんじゃないか? 送ってやってもいいぞ。少し遅刻だけどな」

――(^O^)(;◇;)(-_-)(^◇^)
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