つむいでつなぐ

崎田毅駿

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その4

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「ふむふむ」
「顔文字の目と口、それに傷マークとぴきぴきマークが鍵だよ。そこでそれぞれを分解して、抜き出すことにするよ。目は^;=゚H~-Tの八つ。口は_-O◇と口のない“口無し”、都合五種類ある」
「ん? ストップだ。口にはもう一種類、半角のOがあるぜ。ほら、Oって」
「それについては、別に考えていることがある。口の種類の内、半角なのはそれだけだろ? 何か特殊な文字なんじゃないかな」
「ま、ひとまず、それでよしとしよう」
「口が五種類。五種類と暗号と聞いて、まず浮かぶのは、母音だよね」
「はあ? だーれも連想しないぞ。五種類と暗号でボインなんて」
「……こっちの母音だよ。ほら」
「ああ……それならそうと早く言ってくれ」
「日本語は五十音から成り立っており、母音と子音の組み合わせで表現できる。そう、ローマ字だ。小学校も高学年なら、ローマ字を習っているだろうね」
「パソコンを触れるような子供は、自然と覚えるかもしれないしな」
「口が母音なら、目は子音だろう。ただ、どの目や口がどのアルファベットかは、まだ不明。ここで注意したいのが、顔文字に付いた装飾。傷とぴきぴきマークの二種類ある。元々何らかの字を表す顔文字に、さらに装飾して別の字にする……これは、五十音での濁音や半濁音の働きと同じだね」
「傷マークとぴきぴきマークは、それぞれ丸か点々のどちらかってんだな」
「そうだよ。しかも簡単な推測ができる。暗号と言ったって国家に関わる大げさなものではない。なら暗号を作る人もなるべく覚え易い変換方法にしたいはず」
「覚え易いと言うと……」
「目や口の記号にランダムにアルファベットを割り振るより、一部でも関連性を持たせた方が覚え易い。キは ゚とT、#はHに付いてるよな。このHをそのまんまアルファベットのHにするんだ」
「だとしたら#は半濁音だな。半濁音はハ行にしか付けない。キは濁音。ついでに言えばTはTだと類推できる」
「同感。さらに付け加えるなら口のOは当然、母音としてのOを表すんじゃないかな」
「おお、それも言える」
「相槌が早いよ。次に着目したいのは (=O=)だ。唯一、口が半角の顔文字。口が半角ということは、他よりも小さいことにつながる。言い換えると、これは小文字を表現すのではないか?と推理するのは、さほど無理のない思考だよね」
「おお! 小文字ってのは、ぇ、っ、ゃ、ゅ、ょのどれかだな」
「まあ、ぁぃぅぉを使う人もいるけれど、一般的な文章には不要だろう。だから、(=O=) は小文字かつ母音がOとしていい。ぇ、っ、ゃ、ゅ、ょの中で条件に当てはまるのは、ょ、だけ。よって、= はYを表す」
「だいぶ分かってきたな」
「まだまだ。次は半角が小文字を表すことと、パソコンの特殊性を照らし合わせる」
「パソコンの特殊性? 難しげな言い回しだな」
「言いたいのは、パソコンで使う文字記号には、半角にできるものとできないものがあるってこと」
「ああ……口に使われている文字や記号の内、_と-とOは半角にできるが、◇は半角にできない」
「補足すると口無しも当然、半角にはできない。五つの母音の内、二つは半角にできない。ということは、◇と口無しは半角にする必要のない母音なんだよ」
「なーるほど。半角にする必要がない母音は、ぇ、っ、ゃ、ゅ、ょに使われていないんだから……Iだな。あれ? 一個しかないぜ?」
「うん。多分、もう一つはEなんじゃないかな。ぇは確かに必要だけど、YEで代用したんじゃないかと思うんだ」
「YEは普通なら、“え”だな。だが、“え”を表す顔文字は二つもいらないから、片方をぇにしたと」
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