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その3
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「……そうだね。最終確認とか言ってる割には、何の確認にもなってない。愛情の確認か?」
「馬鹿」
「冗談だよ、気にするな。それにしても、よくよく見ればおかしな手紙だ。相手の名前も自分の名前も一切書いてない」
「いや、それは大した問題じゃないさ。二人の間だけで交わされる手紙なんだから、当事者にさえ通じればいい」
「経験者は語る」
「うるさい」
「おかしいのはまだある。今見つけたんだが、顔文字の使い方の一部が変じゃないか?」
「ああ。俺も気付いてたよ。『好きでしょ?(=O=) 』のマーク、意味が分からん。だが、間違えただけかもしれないし、気にすることないんじゃねえの」
「顔文字の不自然さは、そこだけじゃないよ。どうして『ばかやろー(キ゚O゚)』なんだ。怒っているときは、傷マークじゃなく、ぴきぴきマークだろ」
「傷マークに、ぴきぴきマーク?」
「キと#のこと。最後の文『いやだよ。(キTT)』も妙だ」
「ああ……。怒りを表すのは、確かにそうだな。だけど、それも単純なミスってことで片がつく」
「これだけ顔文字を多用しながら、あってもおかしくない位置に顔文字がないのも、不思議だ。『ほめるのを忘れないようにネ』の後ろには、ぽっと頬を染めた(*^^*)マークがあってもいいんじゃないかねえ。経験豊かな人の意見を聞きたいな」
「あっておかしくないが、うっかり忘れた、とか」
「君の見解を全て受け入れたら、ミスが多過ぎるんじゃないか? 彼氏のことで頭がいっぱいで舞い上がっていたにしても、ちょっとひどい」
「要するに何が言いたい訳? これがラブレターじゃないとでも?」
「それは分からないけれど、子供らしい、何ていうか、秘密の文章が隠されているんじゃないかと思う」
「秘密の文章……暗号か?」
「それだ。デートの場所や時間といった大事なことは、暗号になってるんじゃないか」
「何のために」
「万が一、友達に見られたときのため。経験浅くても、この程度は断言するぞ」
「ああ、そうか。それじゃあ、やはりこの手紙は、学校のパソコン室みたいなところで作られたんだな」
「そういう想像が、ぴたりと当てはまる。二人だけの秘密があった方が、より楽しいだろうし」
「しかし……どこに暗号があるんだよ。それらしきものはないぞ」
「それらしい暗号なんて下の下だよ。見た目が暗号っぽかったら、それを見た友達が怪しむ。ひょっとしたら暗号を解かれてしまうかもしれない」
「御託はいい。一体全体、この手紙の何が暗号になんだ? あぶり出しとか言うなよ」
「言わないよ。顔文字が暗号になってると思う」
「……何で?」
「理由はない。ただ、他に思い浮かばないだろ? 消去法で顔文字しかないんだよ」
「うーん。暗号ならそれを解いて、秘密の文章を再現してくれないと、何とも言えねえな」
「やってみるか。解いてる内に坊主も目を覚ますだろう。書く物を」
「ちょっと待ってくれ。――これでいいな?」
「上等、上等。えーっと! 使われているのは……(^_^)(;-;)(;◇;)(=O=)(^-^)(キ゚O゚)(H_H#)(=◇=)(=_=)(~O~)(-_-)(^^)(キTT) の十三個。だぶりなし。顔の輪郭は全部に共通してるから、特徴にならない。つまり、無関係だと思うんだ」
「馬鹿」
「冗談だよ、気にするな。それにしても、よくよく見ればおかしな手紙だ。相手の名前も自分の名前も一切書いてない」
「いや、それは大した問題じゃないさ。二人の間だけで交わされる手紙なんだから、当事者にさえ通じればいい」
「経験者は語る」
「うるさい」
「おかしいのはまだある。今見つけたんだが、顔文字の使い方の一部が変じゃないか?」
「ああ。俺も気付いてたよ。『好きでしょ?(=O=) 』のマーク、意味が分からん。だが、間違えただけかもしれないし、気にすることないんじゃねえの」
「顔文字の不自然さは、そこだけじゃないよ。どうして『ばかやろー(キ゚O゚)』なんだ。怒っているときは、傷マークじゃなく、ぴきぴきマークだろ」
「傷マークに、ぴきぴきマーク?」
「キと#のこと。最後の文『いやだよ。(キTT)』も妙だ」
「ああ……。怒りを表すのは、確かにそうだな。だけど、それも単純なミスってことで片がつく」
「これだけ顔文字を多用しながら、あってもおかしくない位置に顔文字がないのも、不思議だ。『ほめるのを忘れないようにネ』の後ろには、ぽっと頬を染めた(*^^*)マークがあってもいいんじゃないかねえ。経験豊かな人の意見を聞きたいな」
「あっておかしくないが、うっかり忘れた、とか」
「君の見解を全て受け入れたら、ミスが多過ぎるんじゃないか? 彼氏のことで頭がいっぱいで舞い上がっていたにしても、ちょっとひどい」
「要するに何が言いたい訳? これがラブレターじゃないとでも?」
「それは分からないけれど、子供らしい、何ていうか、秘密の文章が隠されているんじゃないかと思う」
「秘密の文章……暗号か?」
「それだ。デートの場所や時間といった大事なことは、暗号になってるんじゃないか」
「何のために」
「万が一、友達に見られたときのため。経験浅くても、この程度は断言するぞ」
「ああ、そうか。それじゃあ、やはりこの手紙は、学校のパソコン室みたいなところで作られたんだな」
「そういう想像が、ぴたりと当てはまる。二人だけの秘密があった方が、より楽しいだろうし」
「しかし……どこに暗号があるんだよ。それらしきものはないぞ」
「それらしい暗号なんて下の下だよ。見た目が暗号っぽかったら、それを見た友達が怪しむ。ひょっとしたら暗号を解かれてしまうかもしれない」
「御託はいい。一体全体、この手紙の何が暗号になんだ? あぶり出しとか言うなよ」
「言わないよ。顔文字が暗号になってると思う」
「……何で?」
「理由はない。ただ、他に思い浮かばないだろ? 消去法で顔文字しかないんだよ」
「うーん。暗号ならそれを解いて、秘密の文章を再現してくれないと、何とも言えねえな」
「やってみるか。解いてる内に坊主も目を覚ますだろう。書く物を」
「ちょっと待ってくれ。――これでいいな?」
「上等、上等。えーっと! 使われているのは……(^_^)(;-;)(;◇;)(=O=)(^-^)(キ゚O゚)(H_H#)(=◇=)(=_=)(~O~)(-_-)(^^)(キTT) の十三個。だぶりなし。顔の輪郭は全部に共通してるから、特徴にならない。つまり、無関係だと思うんだ」
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