魔王様は切実に隠居したい

塩おむすび

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プロローグ

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 昔々、それはそれはとっても悪い魔王様がいました。

 その魔王は大きなツノと羽を持って恐ろしい顔をしており、その口からは常に炎が吐かれていました。

 魔王は人間の肉が好きで、魔族を恐怖で縛りつけては、いろんな場所から人間を攫うように命令し、食べてしまっていました。

 数多くの猛者たちが女神の神託を受けて魔王を討伐するための『勇者』として向かいましたが、誰も帰ってきませんでした。

 そんなある日次の勇者として選ばれたのは、なんの変哲もない農村に住む1人の少年。

 彼はただの農民でしたが、彼には頼もしい仲間がいました。
 大きな戦斧を最も簡単に振るう戦士、神速の矢を放つハンター、魔術の真髄を知り尽くした賢者、そして慈悲深き心を持つ聖女。
 彼女たちは勇者と共に戦い、時には心を支え、何度も苦難を乗り越えてきました。

 凍えるような雪山も、灼熱の砂漠も、毒虫や獣の巣窟になった森も抜け、ついには過去の勇者の誰よりも早く、そして強くなって魔王の眼前へと辿り着きました。

 互いの命を削り合う死闘の末、勇者はついに女神から賜った聖剣で魔王の心臓を貫きました。
 魔王は醜い叫び声をあげ、塵となって消え、魔王の支配から逃れて浄化されたこの世界には女神から『魔族と人間で手を取り合って生きるように』と信託が下りました。

 今も魔族と人間の間には蟠りが残りますが、徐々に世界は平和な姿を取り戻しました。

 その後の勇者の行方はわかりません。
 きっと彼は死ぬまで私たちを見守ってくれていたことでしょう。





 ・・・・・





 はぁ…仕方ないとはいえこんな話を作り出す羽目になるなんて。


 それに創造の話とはいえあの子には損な役回りばかりさせてしまったわ、明日あたり謝りに行かないと。


 あら?お客様?ごめんなさい気づかずに。今お茶をお出しするわね。


 え?あら、いいのよ。どうせ世界を見守って時折り神託を下すくらいしかやることのない女神業だもの、あなたが来てくれなかったら話し相手にも事欠くくらいで…。それに比べたらこれくらいどうってことないわ。はい、どうぞ。


 それで?今日は何のお話をする日だったかしら?えーっと…ああそう、この世界の本当のお話についてだったわね。


 ええ、あなたの言う通り、世界で言い伝えられている昔話は私が作ったものよ。


 その方が都合が良かったから。


 もちろん登場する子たちにはちゃんと許可はとったわよ?1人はすぐに承諾してくれたんだけどもう1人がね…。承諾してくれた子の扱いが酷すぎるって、なかなか納得してくれなくて。結局本人に説得されて渋々、ね。


 話が逸れちゃったわ、どうせなら美味しいお菓子も出しましょうか。なんならお泊まりでもいいわよ。なにせこのお話はとっても長くなるから。


 ーさて、お話ししましょうか。
 この世界の本当のお話を。


 私の…妹との争いに巻き込んでしまった、哀れな2人の話を。


 あら?そんな顔をしないで。
 大丈夫。
 最後はあなたの大好きなハッピーエンドだから。
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