2 / 65
第1章 とっても悪い魔王様
魔王様は勇者と相対する
しおりを挟む
「はーっはっはっはっ!!勇者よ!よくぞこの玉座の間、そして我の前まで辿り着いた!数多の勇者が命を散らしたこの場所に乗り込むその蛮勇、賞賛に値する!」
煌びやかな装飾の施された荘厳な場所。
ここは魔王城、玉座の間。
人間を虐げる存在である魔族の長たる『魔王』の住処である。
そして今まさに、魔王の眼前にはその存在を討ち、世界を浄化するべく1人の『勇者』が立っていた。
「はっ!あんなちんちくりんが魔王だって?笑わせるねぇ!うちの勇者サマだったら一捻りだろうよ!」
赤毛の女戦士は豪快に笑うと、数々の魔族を潰してきた自慢の戦斧を床へと叩きつけて、轟音を上げた。
「ん、勇者は強い。あなたのような醜い裸の王様には負けない」
シルバーの髪が印象的な女ハンターは、無表情のままではあるものの、その魔王を見据える瞳は、己の獲物である数々の魔物を貫いてきた矢のように鋭い。
「なんじゃ、これなら勇者殿がわざわざ出向かんでも妾の魔術で一捻りじゃろうて」
自信満々に胸を逸らすのは、小さな頭に不釣り合いなとんがり帽子を被った女賢者。その言葉には数々の魔族を自らの魔術で焼き尽くしてきた自信が裏付けられていた。
「大丈夫ですよ、勇者様。あなたには私たちがついています。さあ、あの醜い魔王の心臓に女神様から賜った聖剣を突き立てるのです!」
白の法衣を纏うのは慈悲深い心を持つ聖女。彼女は強力な癒しの力で他の仲間の傷を治し、陰から支えてきた。
彼女たちは勇者と共に戦い、時には心の支えとなることで、険しい道のりを幾度も乗り越えてきた。
そして今ここで魔王を討ち、この世界を浄化することで世界には平和がもたらされる。彼女たちはそれを信じて疑わなかった。
そしてその期待を一心に受けるのは、彼女たちを率い、人類の希望とまで言われる勇者。
彼の金髪は太陽の光を弾いてキラキラと輝いており、まるで女神の愛を体現するかのよう。身に纏う鎧は白銀色で、心の清廉さを現している。そしてその腰には、魔王に対抗できる唯一の武器である黄金に輝く聖剣が下がっている。
その出立ちこそまさに『希望の象徴』と言えるものだった。
「ほう…?対して力も持たぬ雑魚どもが集ったところで雑魚は雑魚に変わりはない。我は退屈が大嫌いだ、せいぜい足掻いてみるがいい!」
ぶわりと黒い風が嵐のように魔王を中心に吹き荒れる。魔王の魔力を乗せたそれは質量を持ち、玉座の間のシャンデリアは砕け、壁や地面は抉れっていった。
勇者を除く仲間たちは気圧されたようにその魔力に押されて膝をついた。
勇者が『希望の象徴』であるならば、相対する魔王はまさしく『絶望の権化』。
過去に魔王の討伐に向かった勇者は仲間と共に誰1人として帰還していない。
噂では拷問にかけたり、非人道的な実験の材料にしたり、生きたまま食われたのではという話すら上がるほどだ。
人間であれば誰しもが恐怖を覚える魔王。
そしてその強大な魔力を受けても、勇者の身体は揺らぎもしない。
仲間たちはその姿に再び力を取り戻して立ち上がった。
「さあ勇者よ!武器を取れ!醜くもがいて最期を迎えるその瞬間まで我を楽しませよ!」
魔王の周りでは強力な魔力のうねりが渦巻く。
そして勇者は己の相棒でもある聖剣に手をかける。
まさに一触即発。
どちらかが動けばこの戦闘は始まる。
その瞬間だった。
ガッシャーンッッ!!!
勇者は聖剣を鞘ごと壁に向かって投げ飛ばした。
その破砕音にも似た大音量に周囲には束の間の沈黙が訪れる。
そして投げた張本人はと言うと、何事も無かったかのような顔で魔王に昏く濁った瞳を向けた。
煌びやかな装飾の施された荘厳な場所。
ここは魔王城、玉座の間。
人間を虐げる存在である魔族の長たる『魔王』の住処である。
そして今まさに、魔王の眼前にはその存在を討ち、世界を浄化するべく1人の『勇者』が立っていた。
「はっ!あんなちんちくりんが魔王だって?笑わせるねぇ!うちの勇者サマだったら一捻りだろうよ!」
赤毛の女戦士は豪快に笑うと、数々の魔族を潰してきた自慢の戦斧を床へと叩きつけて、轟音を上げた。
「ん、勇者は強い。あなたのような醜い裸の王様には負けない」
シルバーの髪が印象的な女ハンターは、無表情のままではあるものの、その魔王を見据える瞳は、己の獲物である数々の魔物を貫いてきた矢のように鋭い。
「なんじゃ、これなら勇者殿がわざわざ出向かんでも妾の魔術で一捻りじゃろうて」
自信満々に胸を逸らすのは、小さな頭に不釣り合いなとんがり帽子を被った女賢者。その言葉には数々の魔族を自らの魔術で焼き尽くしてきた自信が裏付けられていた。
「大丈夫ですよ、勇者様。あなたには私たちがついています。さあ、あの醜い魔王の心臓に女神様から賜った聖剣を突き立てるのです!」
白の法衣を纏うのは慈悲深い心を持つ聖女。彼女は強力な癒しの力で他の仲間の傷を治し、陰から支えてきた。
彼女たちは勇者と共に戦い、時には心の支えとなることで、険しい道のりを幾度も乗り越えてきた。
そして今ここで魔王を討ち、この世界を浄化することで世界には平和がもたらされる。彼女たちはそれを信じて疑わなかった。
そしてその期待を一心に受けるのは、彼女たちを率い、人類の希望とまで言われる勇者。
彼の金髪は太陽の光を弾いてキラキラと輝いており、まるで女神の愛を体現するかのよう。身に纏う鎧は白銀色で、心の清廉さを現している。そしてその腰には、魔王に対抗できる唯一の武器である黄金に輝く聖剣が下がっている。
その出立ちこそまさに『希望の象徴』と言えるものだった。
「ほう…?対して力も持たぬ雑魚どもが集ったところで雑魚は雑魚に変わりはない。我は退屈が大嫌いだ、せいぜい足掻いてみるがいい!」
ぶわりと黒い風が嵐のように魔王を中心に吹き荒れる。魔王の魔力を乗せたそれは質量を持ち、玉座の間のシャンデリアは砕け、壁や地面は抉れっていった。
勇者を除く仲間たちは気圧されたようにその魔力に押されて膝をついた。
勇者が『希望の象徴』であるならば、相対する魔王はまさしく『絶望の権化』。
過去に魔王の討伐に向かった勇者は仲間と共に誰1人として帰還していない。
噂では拷問にかけたり、非人道的な実験の材料にしたり、生きたまま食われたのではという話すら上がるほどだ。
人間であれば誰しもが恐怖を覚える魔王。
そしてその強大な魔力を受けても、勇者の身体は揺らぎもしない。
仲間たちはその姿に再び力を取り戻して立ち上がった。
「さあ勇者よ!武器を取れ!醜くもがいて最期を迎えるその瞬間まで我を楽しませよ!」
魔王の周りでは強力な魔力のうねりが渦巻く。
そして勇者は己の相棒でもある聖剣に手をかける。
まさに一触即発。
どちらかが動けばこの戦闘は始まる。
その瞬間だった。
ガッシャーンッッ!!!
勇者は聖剣を鞘ごと壁に向かって投げ飛ばした。
その破砕音にも似た大音量に周囲には束の間の沈黙が訪れる。
そして投げた張本人はと言うと、何事も無かったかのような顔で魔王に昏く濁った瞳を向けた。
32
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる