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第1章 とっても悪い魔王様
魔王様は元勇者の名前を呼ぶ
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『ーー。可愛い私の子、大きく育ってね』
『ーー。ずいぶん背も伸びたなぁ。きっと父さんもすぐに追い越されるだろうな』
『お兄ちゃん!髪の毛結んでー!可愛くしてね!』
『ーー。あのね、私…あなたのことがーー。』
『あなたは本日より、女神ルミエラに選ばれた勇者となるのです!これより己が名を捨て、俗世との繋がりを断ちなさい。そうして初めてあなたは真の勇者となるのです!』
『まぁ…うちの子が勇者様だなんて、鼻が高いわ』
ちがう…違う!
『息子が勇者様だって近所に自慢できるな!頑張れよ!勇者様!』
僕の名前はそうじゃない!
『がんばってね!お兄ちゃ…あ、ちがった…勇者様!』
ーーでも勇者でもない!
『勇者様だなんて…凄いよね…。私にはもったいないよ…。私なんかより世界を救ってね、勇者様!』
なのに…なんで…。
『勇者様!』
なんで誰も僕を見てくれないの…。
『ユウシャサマ!』
僕は、ぼく、は…。
「ーールークっ!」
そうだ。
僕は、あなたに呼んでもらえるその名前だけでいい。
あなただけで、いい。
・・・・・・・・・・
「おい、ルーク!しっかりしろっ!」
「は…ッ!はぁ…はぁ…はぁ…」
ルークが目を開けると心配そうにこちらを覗き込むノアの姿が見えた。
「お前…ずいぶんと魘されてたぞ?大丈夫か…?」
「すみません、お見苦しいところを…。少し、夢見が悪かっただけです…」
汗で夜着はぐっしょりと濡れて、金色の髪は顔にまで張り付いている。不快だったが、身体を起こしてしまえばもう一度眠りにつくことが怖くなりそうで、ルークは起き上がることができなかった。
「夢見、かぁ…まさかリリシュに頼むわけにもいかないしなぁ…。あいつ力加減下手だし」
「お手数をおかけしてしまい申し訳ございません。ですが僕は大丈夫です。夜もまだ長いでしょうから、もう寝ましょう」
「………俺からすればお前はまだまだ赤ん坊だが、お前は赤ん坊扱いされるのは嫌だろ?」
「え?まぁ……。ノア様から見ればそうなのかもしれませんが、一般的に見ればそんな年でもありませんから」
「だから赤ん坊扱いはしないでおいてやる。でもな、悪夢に魘されて苦しんでいる奴が目の前にいれば、それが背中を預ける味方だろうが殺し合った敵だろうが見捨てることはできない。だからなーー」
汗と恐怖で冷えたルークの手を、ノアはゆっくりと握りしめた。
人間よりは低い体温でありながら、今のルークにとっては温かいそれが少しずつ手のひらを伝って流れ込んでくる。まるで1人じゃないとでも言われているかのようなそれに、先ほどまで身体を支配していた恐怖が霧散していくようだった。
「『怖い夢を見た時は手を繋ぐといいよ!』なんて、ドロシーがこの前言っていた。心配しなくても、俺がお前の悪夢なんざ追い払ってやる。なんてったって俺は魔王だからな」
「…ふふっ、そうですね」
(きっとノア様なりに僕を励まそうとしてくれているんだろう…)
たかが側近のためにここまでしてくれる主がどこにいるだろうか。
ルークは自分がノアの側近となれたことに改めて感謝をした。
「ノア様」
「なんだ」
「名前を、呼んでいただけませんか」
「そんなことでいいのか?」
「ええ…今の僕にとってはそれで十分ですから」
「そうか、お前は相変わらず欲が無いな。お前が自由に生きられるようになったら、その時は欲深く生きてみればいい。手始めに…確かお前の誕生日はもうすぐだろう?前は知らない間に過ぎてたからな、ちゃんとメモもしといたんだぞ。今回は今度こそ欲しいものを事前に言うこと。これ命令だからな」
「考えておきます」
「さては言う気ないな………はぁ、なんとも頑固な側近だ」
「自由な主に仕えているからですね。振り回されないようにするので精一杯なんです」
「あーもういいから寝ろ!成長が止まっても知らないからな!」
「あいにく身長は今も伸びていますので。……おやすみなさい、ノア様」
「おやすみ、ルーク」
『ーー。ずいぶん背も伸びたなぁ。きっと父さんもすぐに追い越されるだろうな』
『お兄ちゃん!髪の毛結んでー!可愛くしてね!』
『ーー。あのね、私…あなたのことがーー。』
『あなたは本日より、女神ルミエラに選ばれた勇者となるのです!これより己が名を捨て、俗世との繋がりを断ちなさい。そうして初めてあなたは真の勇者となるのです!』
『まぁ…うちの子が勇者様だなんて、鼻が高いわ』
ちがう…違う!
『息子が勇者様だって近所に自慢できるな!頑張れよ!勇者様!』
僕の名前はそうじゃない!
『がんばってね!お兄ちゃ…あ、ちがった…勇者様!』
ーーでも勇者でもない!
『勇者様だなんて…凄いよね…。私にはもったいないよ…。私なんかより世界を救ってね、勇者様!』
なのに…なんで…。
『勇者様!』
なんで誰も僕を見てくれないの…。
『ユウシャサマ!』
僕は、ぼく、は…。
「ーールークっ!」
そうだ。
僕は、あなたに呼んでもらえるその名前だけでいい。
あなただけで、いい。
・・・・・・・・・・
「おい、ルーク!しっかりしろっ!」
「は…ッ!はぁ…はぁ…はぁ…」
ルークが目を開けると心配そうにこちらを覗き込むノアの姿が見えた。
「お前…ずいぶんと魘されてたぞ?大丈夫か…?」
「すみません、お見苦しいところを…。少し、夢見が悪かっただけです…」
汗で夜着はぐっしょりと濡れて、金色の髪は顔にまで張り付いている。不快だったが、身体を起こしてしまえばもう一度眠りにつくことが怖くなりそうで、ルークは起き上がることができなかった。
「夢見、かぁ…まさかリリシュに頼むわけにもいかないしなぁ…。あいつ力加減下手だし」
「お手数をおかけしてしまい申し訳ございません。ですが僕は大丈夫です。夜もまだ長いでしょうから、もう寝ましょう」
「………俺からすればお前はまだまだ赤ん坊だが、お前は赤ん坊扱いされるのは嫌だろ?」
「え?まぁ……。ノア様から見ればそうなのかもしれませんが、一般的に見ればそんな年でもありませんから」
「だから赤ん坊扱いはしないでおいてやる。でもな、悪夢に魘されて苦しんでいる奴が目の前にいれば、それが背中を預ける味方だろうが殺し合った敵だろうが見捨てることはできない。だからなーー」
汗と恐怖で冷えたルークの手を、ノアはゆっくりと握りしめた。
人間よりは低い体温でありながら、今のルークにとっては温かいそれが少しずつ手のひらを伝って流れ込んでくる。まるで1人じゃないとでも言われているかのようなそれに、先ほどまで身体を支配していた恐怖が霧散していくようだった。
「『怖い夢を見た時は手を繋ぐといいよ!』なんて、ドロシーがこの前言っていた。心配しなくても、俺がお前の悪夢なんざ追い払ってやる。なんてったって俺は魔王だからな」
「…ふふっ、そうですね」
(きっとノア様なりに僕を励まそうとしてくれているんだろう…)
たかが側近のためにここまでしてくれる主がどこにいるだろうか。
ルークは自分がノアの側近となれたことに改めて感謝をした。
「ノア様」
「なんだ」
「名前を、呼んでいただけませんか」
「そんなことでいいのか?」
「ええ…今の僕にとってはそれで十分ですから」
「そうか、お前は相変わらず欲が無いな。お前が自由に生きられるようになったら、その時は欲深く生きてみればいい。手始めに…確かお前の誕生日はもうすぐだろう?前は知らない間に過ぎてたからな、ちゃんとメモもしといたんだぞ。今回は今度こそ欲しいものを事前に言うこと。これ命令だからな」
「考えておきます」
「さては言う気ないな………はぁ、なんとも頑固な側近だ」
「自由な主に仕えているからですね。振り回されないようにするので精一杯なんです」
「あーもういいから寝ろ!成長が止まっても知らないからな!」
「あいにく身長は今も伸びていますので。……おやすみなさい、ノア様」
「おやすみ、ルーク」
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