15 / 65
第1章 とっても悪い魔王様
魔王様は元勇者の名前を呼ぶ
しおりを挟む
『ーー。可愛い私の子、大きく育ってね』
『ーー。ずいぶん背も伸びたなぁ。きっと父さんもすぐに追い越されるだろうな』
『お兄ちゃん!髪の毛結んでー!可愛くしてね!』
『ーー。あのね、私…あなたのことがーー。』
『あなたは本日より、女神ルミエラに選ばれた勇者となるのです!これより己が名を捨て、俗世との繋がりを断ちなさい。そうして初めてあなたは真の勇者となるのです!』
『まぁ…うちの子が勇者様だなんて、鼻が高いわ』
ちがう…違う!
『息子が勇者様だって近所に自慢できるな!頑張れよ!勇者様!』
僕の名前はそうじゃない!
『がんばってね!お兄ちゃ…あ、ちがった…勇者様!』
ーーでも勇者でもない!
『勇者様だなんて…凄いよね…。私にはもったいないよ…。私なんかより世界を救ってね、勇者様!』
なのに…なんで…。
『勇者様!』
なんで誰も僕を見てくれないの…。
『ユウシャサマ!』
僕は、ぼく、は…。
「ーールークっ!」
そうだ。
僕は、あなたに呼んでもらえるその名前だけでいい。
あなただけで、いい。
・・・・・・・・・・
「おい、ルーク!しっかりしろっ!」
「は…ッ!はぁ…はぁ…はぁ…」
ルークが目を開けると心配そうにこちらを覗き込むノアの姿が見えた。
「お前…ずいぶんと魘されてたぞ?大丈夫か…?」
「すみません、お見苦しいところを…。少し、夢見が悪かっただけです…」
汗で夜着はぐっしょりと濡れて、金色の髪は顔にまで張り付いている。不快だったが、身体を起こしてしまえばもう一度眠りにつくことが怖くなりそうで、ルークは起き上がることができなかった。
「夢見、かぁ…まさかリリシュに頼むわけにもいかないしなぁ…。あいつ力加減下手だし」
「お手数をおかけしてしまい申し訳ございません。ですが僕は大丈夫です。夜もまだ長いでしょうから、もう寝ましょう」
「………俺からすればお前はまだまだ赤ん坊だが、お前は赤ん坊扱いされるのは嫌だろ?」
「え?まぁ……。ノア様から見ればそうなのかもしれませんが、一般的に見ればそんな年でもありませんから」
「だから赤ん坊扱いはしないでおいてやる。でもな、悪夢に魘されて苦しんでいる奴が目の前にいれば、それが背中を預ける味方だろうが殺し合った敵だろうが見捨てることはできない。だからなーー」
汗と恐怖で冷えたルークの手を、ノアはゆっくりと握りしめた。
人間よりは低い体温でありながら、今のルークにとっては温かいそれが少しずつ手のひらを伝って流れ込んでくる。まるで1人じゃないとでも言われているかのようなそれに、先ほどまで身体を支配していた恐怖が霧散していくようだった。
「『怖い夢を見た時は手を繋ぐといいよ!』なんて、ドロシーがこの前言っていた。心配しなくても、俺がお前の悪夢なんざ追い払ってやる。なんてったって俺は魔王だからな」
「…ふふっ、そうですね」
(きっとノア様なりに僕を励まそうとしてくれているんだろう…)
たかが側近のためにここまでしてくれる主がどこにいるだろうか。
ルークは自分がノアの側近となれたことに改めて感謝をした。
「ノア様」
「なんだ」
「名前を、呼んでいただけませんか」
「そんなことでいいのか?」
「ええ…今の僕にとってはそれで十分ですから」
「そうか、お前は相変わらず欲が無いな。お前が自由に生きられるようになったら、その時は欲深く生きてみればいい。手始めに…確かお前の誕生日はもうすぐだろう?前は知らない間に過ぎてたからな、ちゃんとメモもしといたんだぞ。今回は今度こそ欲しいものを事前に言うこと。これ命令だからな」
「考えておきます」
「さては言う気ないな………はぁ、なんとも頑固な側近だ」
「自由な主に仕えているからですね。振り回されないようにするので精一杯なんです」
「あーもういいから寝ろ!成長が止まっても知らないからな!」
「あいにく身長は今も伸びていますので。……おやすみなさい、ノア様」
「おやすみ、ルーク」
『ーー。ずいぶん背も伸びたなぁ。きっと父さんもすぐに追い越されるだろうな』
『お兄ちゃん!髪の毛結んでー!可愛くしてね!』
『ーー。あのね、私…あなたのことがーー。』
『あなたは本日より、女神ルミエラに選ばれた勇者となるのです!これより己が名を捨て、俗世との繋がりを断ちなさい。そうして初めてあなたは真の勇者となるのです!』
『まぁ…うちの子が勇者様だなんて、鼻が高いわ』
ちがう…違う!
『息子が勇者様だって近所に自慢できるな!頑張れよ!勇者様!』
僕の名前はそうじゃない!
『がんばってね!お兄ちゃ…あ、ちがった…勇者様!』
ーーでも勇者でもない!
『勇者様だなんて…凄いよね…。私にはもったいないよ…。私なんかより世界を救ってね、勇者様!』
なのに…なんで…。
『勇者様!』
なんで誰も僕を見てくれないの…。
『ユウシャサマ!』
僕は、ぼく、は…。
「ーールークっ!」
そうだ。
僕は、あなたに呼んでもらえるその名前だけでいい。
あなただけで、いい。
・・・・・・・・・・
「おい、ルーク!しっかりしろっ!」
「は…ッ!はぁ…はぁ…はぁ…」
ルークが目を開けると心配そうにこちらを覗き込むノアの姿が見えた。
「お前…ずいぶんと魘されてたぞ?大丈夫か…?」
「すみません、お見苦しいところを…。少し、夢見が悪かっただけです…」
汗で夜着はぐっしょりと濡れて、金色の髪は顔にまで張り付いている。不快だったが、身体を起こしてしまえばもう一度眠りにつくことが怖くなりそうで、ルークは起き上がることができなかった。
「夢見、かぁ…まさかリリシュに頼むわけにもいかないしなぁ…。あいつ力加減下手だし」
「お手数をおかけしてしまい申し訳ございません。ですが僕は大丈夫です。夜もまだ長いでしょうから、もう寝ましょう」
「………俺からすればお前はまだまだ赤ん坊だが、お前は赤ん坊扱いされるのは嫌だろ?」
「え?まぁ……。ノア様から見ればそうなのかもしれませんが、一般的に見ればそんな年でもありませんから」
「だから赤ん坊扱いはしないでおいてやる。でもな、悪夢に魘されて苦しんでいる奴が目の前にいれば、それが背中を預ける味方だろうが殺し合った敵だろうが見捨てることはできない。だからなーー」
汗と恐怖で冷えたルークの手を、ノアはゆっくりと握りしめた。
人間よりは低い体温でありながら、今のルークにとっては温かいそれが少しずつ手のひらを伝って流れ込んでくる。まるで1人じゃないとでも言われているかのようなそれに、先ほどまで身体を支配していた恐怖が霧散していくようだった。
「『怖い夢を見た時は手を繋ぐといいよ!』なんて、ドロシーがこの前言っていた。心配しなくても、俺がお前の悪夢なんざ追い払ってやる。なんてったって俺は魔王だからな」
「…ふふっ、そうですね」
(きっとノア様なりに僕を励まそうとしてくれているんだろう…)
たかが側近のためにここまでしてくれる主がどこにいるだろうか。
ルークは自分がノアの側近となれたことに改めて感謝をした。
「ノア様」
「なんだ」
「名前を、呼んでいただけませんか」
「そんなことでいいのか?」
「ええ…今の僕にとってはそれで十分ですから」
「そうか、お前は相変わらず欲が無いな。お前が自由に生きられるようになったら、その時は欲深く生きてみればいい。手始めに…確かお前の誕生日はもうすぐだろう?前は知らない間に過ぎてたからな、ちゃんとメモもしといたんだぞ。今回は今度こそ欲しいものを事前に言うこと。これ命令だからな」
「考えておきます」
「さては言う気ないな………はぁ、なんとも頑固な側近だ」
「自由な主に仕えているからですね。振り回されないようにするので精一杯なんです」
「あーもういいから寝ろ!成長が止まっても知らないからな!」
「あいにく身長は今も伸びていますので。……おやすみなさい、ノア様」
「おやすみ、ルーク」
40
あなたにおすすめの小説
【完結】人見先輩だけは占いたくない!
鳥居之イチ
BL
【登場人物】
受:新島 爽《にいじま そう》
→鮫島高等学校/高校二年生/帰宅部
身長 :168センチ
体重 :59キロ
血液型:A型
趣味 :タロット占い
攻:人見 孝仁《ひとみ たかひと》
→鮫島高等学校/高校三年生/元弓道部
身長 :180センチ
体重 :78キロ
血液型:O型
趣味 :精神統一、瞑想
———————————————
【あらすじ】
的中率95%を誇るタロット占いで、校内の注目を集める高校二年生の新島爽。ある日、占いの逆恨みで襲われた彼は、寡黙な三年生の人見孝仁に救われる。
その凛とした姿に心を奪われた爽だったが、精神統一を重んじ「心を乱されること」を嫌う人見にとって、自分は放っておけない「弟分」でしかないと告げられてしまうが……
———————————————
※この作品は他サイトでも投稿しております。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
【完結】おじさんダンジョン配信者ですが、S級探索者の騎士を助けたら妙に懐かれてしまいました
大河
BL
世界を変えた「ダンジョン」出現から30年──
かつて一線で活躍した元探索者・レイジ(42)は、今や東京の片隅で地味な初心者向け配信を続ける"おじさん配信者"。安物機材、スポンサーゼロ、視聴者数も控えめ。華やかな人気配信者とは対照的だが、その真摯な解説は密かに「信頼できる初心者向け動画」として評価されていた。
そんな平穏な日常が一変する。ダンジョン中層に災厄級モンスターが突如出現、人気配信パーティが全滅の危機に!迷わず単身で救助に向かうレイジ。絶体絶命のピンチを救ったのは、国家直属のS級騎士・ソウマだった。
冷静沈着、美形かつ最強。誰もが憧れる騎士の青年は、なぜかレイジを見た瞬間に顔を赤らめて……?
若き美貌の騎士×地味なおじさん配信者のバディが織りなす、年の差、立場の差、すべてを越えて始まる予想外の恋の物語。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました
禅
BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。
その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。
そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。
その目的は――――――
異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話
※小説家になろうにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる