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昇る太陽の人々
しおりを挟む騒々しいナフィコの街を後にして昇る太陽一行は次なる場所へと旅を再開。
当初の目的である合同市場も十分に堪能し、6人目の仲間も早く出発しないと(俺が)面倒なことになると言ったのでナフィコにはたったの一日しか滞在しなかった。
人によって踏み均された川沿いの道を歩いているとすれ違う人の数もどんどんと減っていき、耳に入る音も人の声から川のせせらぎと車輪が石を蹴る音のみへと。
ダリオルが引く荷車にはギルドマスターのリント、副団長のスノウ、そしてメンバーのアヤネ、アテラ、アレタ、バルの6人が搭乗、あるいはその周りを護衛するように歩いている。
「よかったのか?妹さんにお別れの言葉言わなくて」
ダリオルの鞍に跨がっているリントは近くを歩いている6人目の仲間のバルに声をかける。
「いいんだよ。何か言ったらキーキーやかましくて敵わん。今頃、俺は騎士学院に行ってると勘違いしてるだろうから手紙残すくらいでいい」
昨夜の紹介場での出来事を終えるとバルは家に帰り、いつも通りに過ごした。
そしていつものようにジャルザン騎士学院に登校すると見せかけてリント達と合流した。
「それで、俺達はどこへ向かってるんだ」
「今んとこの目的地はトゥリタナ」
「最後に雷獄の雨が観測された国だな。だがずいぶん遠いぞ」
「その前にまずはアヅラタンを目指す。アテラの親父さんにも頼まれてるしな」
「それでも2週間はかかる。かなりの長旅だ」
この会話の他にも様々な世間話などをしていると腹が減ったのでダリオルの足を止めて昼休憩へと入る。
とはいっても昼に関してはシンヘルキやナフィコで購入した日持ちする保存用の干し肉と乾パン、水と殺風景な食事だ。
「寂しい食事だな」
干し肉を噛みちぎりながらバルは不満げに呟く。
「昼はこんなもんで我慢してくれ。代わりに夜の飯は凝るからさ。あ、うちの生活ルールその他諸々教えとくか」
リントはちらっと女子陣を見る。
「まずうちは男のヒエラルキーがめっっっっちゃくちゃカス。なぜならギルドマスターである俺がスノウに言い返せないからだ」
「だろうな。お前将来嫁さんの尻に敷かれるだろ」
「先頭の小部屋になってる荷車は男子禁制、入ったら氷漬けにされてハンマーで殴られる。男はその後ろの荷車で寝たりする」
「自慢じゃないが平面ならどこでも寝れるぜ」
「俺も。場所や状況にも寄るけど活動時間は日が落ちてくるまで。夜は前後半で分かれて見張りをやる。今日の前半は俺、後半は綾音でバルは…また今度決めるか」
「アヤネってのは誰だったか。人の顔と名前覚えんの苦手なんだよ俺ぁ」
「あーじゃあ自己紹介でもするか。おいみんな、バルに自己紹介すっから考えとけよー。じゃスノウから加入順で」
「言い出しっぺのあんたが最初でしょうが普通…スノウ・メロウル、15歳。ここの副団長でセンタレア直属魔法士団の一員よ。属性は氷で冒険者ランクはB、以上よ」
「すっくねー」
「黙りなさい」
想像より短く最低限の事しか話さなかったので茶々を入れると辛辣な言葉で帰ってきた。
「じゃあ次!私はアヤネ・ナカギリで歳はスノウちゃんやリントくんと一緒でリントくんと同じ地球から来たんだ!属性は…闇と光?らしくて冒険者ランクはC!新米冒険者だけど頑張ってまーす!役割は…なんだろ?」
「オレはアテラ・ドード。シンヘルキのロック工房から訳あってこのギルドに身を置いてる工芸族。役割としちゃ大工か。今はアヅラタンで鍛冶を学ぶことが目標だ。歳は17で属性は…ほぼ使わないが土、ランクはC。女扱いしたらぶっ殺す」
「僕はアレタ・ウリー、薬師をやってる19歳だ。滅多に使わないけど属性は風でランクはE。このギルドの中で一番弱いよ」
「あたしはシフラ・レディオネス。人魚の18歳。属性は水で冒険ランクは無い」
「そ!し!て!俺がこのギルド、昇る太陽のギルドマスター!リント・ヒナタ15歳!属性は炎と氷!冒険者ランクはD!ヴォルトアン・ヘアットを追う事ともう一個調べることあってこのハーモラルに来てる!以上俺とバル含めた7人がこの昇る太陽の…7人?」
あれ?
スノウ、アヤネ、アテラ、アレタ、シフラ、俺、バル…
シフラ?
「ってシフラ!?」
ふと横を見ると他のメンバーと同じように倒木に腰をかけている見覚えのある青く唸っている長髪の女性がいた。
「や、昨日振り」
ナフィコで人に会うからと別れた人魚のシフラが誰からも気付かれずに座っている。
「な、な、な、な、なんでここに!?というかいつの間に!?」
あまりにも気配がなさすぎてみっともなく腰を抜かしてしまった。
「知り合いか?」
「ああ。シンヘルキからナフィコまで一緒に旅したんだ」
唯一、面識がないバルはシフラのことを知らない。
「でもリントとスノウとアヤネはすぐ居なくなったからよく知らない。アテラとアレタにはお世話になったわ」
「うっ、確かに。でもいつの間にここに?」
「当てもなく川を泳いでたら聞き覚えのある声が聞こえたから。やっぱりリント達だった」
よく見ると衣服や髪に水が滴っており本当につい先程まで水中にいたと分かる。
「そういえば知り合いには会えたのか?」
「会えた。会えたけど、また次の場所に行かないといけないの」
「次はどこ行くんだ」
「ミガレユノ」
「ミガレユノ…あぁ、あのめっちゃ雪降るところか」
ミガレユノと言えば家族で旅をしている頃に何度か立ち寄った記憶がある。
それにアレタが作る沈熱剤の材料やミガレユノの雪解け水があった。
「なあアレタ。ミガレユノってどこにあんの?」
「アヅラタンの隣だよ。どのみち通る予定ではあるね」
「じゃシフラも一緒に行こうぜ。みんなも別にいいよな?」
振り向いてギルドメンバーの顔を見る。
誰も首を横に振っておらず全員から同意を得た。
「助かる。あなた達と過ごしたおかげで、1人が少し寂しいの」
少し視線を逸らしたシフラ。
その目に昔の自分を思わせるような孤独な瞳を見た。
「別にずっといてもいいぞ」
「…それも悪くないのかも」
にひっと純真で無垢な子供のような笑顔をリントは見せると釣られたのか道中でも表情を崩さなかったシフラも優しく微笑む。
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