【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g

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第3話:勇者との合流とアレンの異分子化

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 旅立ってから、すでに三日が経っていた。

 俺たちは順調に街道を進み、勇者たちが向かうはずの街へと足を運んでいた。

 ――が。

「レオン、今日はもう休もう?」

「は? いや、まだ昼だし」

「疲れてるでしょ? ね?」

「疲れてねぇよ」

「……そっか。じゃあ、もう少しだけ歩こうか」

 そう言って、アレンは俺の隣をぴったりとキープしたまま歩き続ける。

 ……なんか、距離近くねぇ?

 というか、この三日間、何かにつけて「もう戻ろう」とか「休もう」とか言ってくるんだが。

 これはもしや……足止め工作か?

 そんな疑いを抱きつつ、俺は周囲の様子を窺った。

 と、その時だった。

 森の奥から、カサリと茂みが揺れる音がした。

 ――嫌な予感がする。

「アレン、下がれ」

 俺がそう言いながら杖を構えた瞬間、黒い影が飛び出した。

「グルル……ッ!」

 現れたのは、二メートルほどの大きな狼――【ダークウルフ】だ。

 赤黒い目がギラリと光り、獲物を見つけたように低く唸る。

 この辺りに出るモンスターとしては、まあまあ厄介なやつだ。

「チッ……!」

 俺は即座に詠唱に入った。

 魔法で仕留めれば問題ない。そう思ったのに――

「っ!」

 突然、俺の前にアレンが飛び出した。

「おい! 危ねぇ――」

 叫ぼうとした瞬間、アレンの手がふわりと宙をなぞった。

 すると、次の瞬間。

「――『アイスランス』」

 鋭い氷の槍が生み出され、まっすぐにダークウルフの喉元を貫いた。

「グギャッ……!」

 獣は悲鳴を上げ、そのまま動かなくなる。

 静寂。

 俺は、目を見開いたまま動けなかった。

「……え?」

 今、アレン……魔法使ったよな?

「おい、アレン。お前、魔法……」

「……えへへ」

 俺が指摘すると、アレンは誤魔化すように笑った。

「……えへへ、じゃねぇよ。お前、村人だろ?」

「そうだよ?」

「いや、普通の村人は魔法使えねぇから」

「うーん……そうかもね。でも、僕、少しずつ勉強してたんだ。レオンが冒険に出る前に、追いつけるようにって」

「……は?」

「ひとりにしたくなかったから、ね」

「え?」

 アレンの言葉に、思考が一瞬止まる。

 俺の知らないところで、どれだけの時間をかけて、どれだけの覚悟をして……。

 簡単なことじゃない。魔法は、努力だけでどうにかなるもんじゃないのに。

 それでもアレンは、俺を追って、俺に追いつこうとしていたらしい。俺の背中を、遠くから見ていたはずなのに。

 「守りたかったから」なんて、そんなひと言で済ませていい努力じゃない。

 俺は目を逸らせなかった。

 隣で微笑むアレンの顔に、ほんのかすかに――影が差して見えた気がした。

 そしてふと、胸の奥がざわつく。

 魔法の詠唱はあまりにも完璧で、威力も申し分なかった。村には魔法が使える奴なんていないし、俺が教えたわけでもない。なのに、あの正確な術式とタイミング――

 あれは、“魔法初心者”の動きじゃない。

 この三日間、やけに旅の進行を遅らせようとしたのも、もしかして何か……。

 疑念は静かに膨らんでいく。

「なんで魔法なんか……」

 問い詰めるように口を開きかけた俺に、アレンはふわりと微笑んで言った。

「……レオンを守れるようになりたかったから」

 その声はやさしくて、まっすぐで――けれど、どこか切実だった。

 それだけじゃない。きっと、まだ言っていないことがある。

 けれどアレンは、それ以上なにも言わなかった。ただ、変わらず、俺の隣で微笑んでいた。


 ◇◇◇

「さて、と。お前ら、何者?」

 唐突にかけられた声。

 俺たちは、旅の目的地である街の入り口でついに勇者パーティと遭遇した。

 目の前に立つのは、赤毛をかき上げた青年――この世界の勇者であるリオ・ブライトだった。

「えっと、俺はレオン・エルステッド。魔法使いだ。あんたたちに会うために旅をしてきた」

 俺はそう名乗りを上げると、リオはじっと俺を見つめ――

「……へぇ、お前魔力すげぇな」

 ニヤリと笑った。

「よし、じゃあちょっと実力見せてくれよ」

「望むところだ」

 俺はすぐに杖を構え、魔法を発動した。

「――『フレイムバースト』!」

 瞬間、炎が爆発するように広がり、目の前の訓練用の標的を粉砕する。

 リオが目を見開いた。

「おお……すげぇな」

「俺は、あんたたちと旅がしたい」

 まっすぐにそう告げると、リオは「いいねぇ」と笑った。

「即戦力は大歓迎だ。お前、合格!」

「よっしゃ!」

 これでまた勇者パーティの一員になれる。
 ……けれど、リオはアレンのほうにも目を向けて、じっと観察するような目で呟いた。

「お前も……村人にしちゃ、身のこなしが良すぎねぇか?」

「そうかな?」とアレンは無邪気に笑う。だが、その笑みの奥にある何かを、リオは確かに感じ取ったようだった。

「うん、お前も面白そう」

「……それなら、僕も入りたい」

 アレンが、静かにそう言った。

「……は?」

 俺は思わず聞き返す。

「レオンを隣で守りたいから、僕もパーティに入れて」

 アレンは落ち着いた声で言ったが、俺は驚いた。

「お前、そんなこと一言も――」

「今決めたの」

 さらっと言うアレンに、俺は頭を抱えたくなった。

 そもそもこいつ、職業戦闘職じゃないし、異常に距離近いし、メンバーに迷惑をかけないか心配――

「おいおい、何だぁ? お前ら、さっきからなんか仲良すぎじゃね?」

 リオがニヤニヤしながら口を挟んできた。

「はぁ!? い、いやいや、そういうんじゃないし!」

「ふーん? まあいいや。じゃあ、アレン。試しにちょっとだけその腰の剣振ってみろよ」

 そう言われ、アレンは軽々と剣を構え――予想以上に綺麗な型を決めた。

「……お前、どこでそんな剣の扱いを?」

「ちょっと練習しただけだよ」

「どこでだよ」

 疑問は尽きないが、とにかく俺とアレン、二人とも勇者パーティに加入することになった。

 リオの一言で、軽やかに受け入れられたように見えるこの流れの裏で、何かが静かに動き始めている気がしていた。

 アレンが俺の隣にいること。それが、ただ嬉しい――だけで済ませてはいけない予感。

 背筋に、小さな冷気が走る。

 笑っているアレンの目が、何かを隠しているように見えた。
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