【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g

文字の大きさ
4 / 8

第4話:君が死んだことを僕は知っている(アレン視点)

しおりを挟む


 村の広場に、人が集まっていた。
 誰もが沈痛な面持ちで、押し殺すようなすすり泣きが響く。

 その中心に、棺がひとつ――レオンの棺があった。

 僕は言葉を失った。

 冗談だろう?
 なんで、そんなものがここにあるんだ?
 中にいるのは、きっとレオンじゃないはずだ。強くてかっこいい僕の幼馴染が、こんな形で村に帰還するはずがない……。

 そう思いたいのに、足が勝手に動いていく。周囲の人々が何かを言っていたが、耳になんか入らない。
 ただ、棺のそばまで行き、中を覗き込んだ。

「……っ!」

 レオンが、普段なら絶対に着ない綺麗な白い衣装に身を包み、眠るように横たわっていた。

 童話のお姫様みたいーーなのに、決して目を覚まさないなんて、とても思えなかった。

 レオンの体の周りに敷き詰められた花の香りが、信じられない僕を、現実へと引き戻そうとする。


「……レオン?」

 掠れた声で呼びかける。
 応えるはずの声は、どこにもなかった。

 僕の涙がレオンの頬に落ちる。
 それを苦笑いしながら拭うはずの手も、もう動かない。


 ひどいよ、レオン。
 どうして僕を置いて、勝手に一人で死んだの。
 君は、僕の世界だったのに――


「嘘だ」

 喉の奥から、ひび割れた声が漏れる。
 これは何かの間違いだ。冗談だ。夢だ。

 君がいない現実なんて、僕の人生には存在しない。
 認めてしまったら、僕は、僕という輪郭さえ失ってしまう。

 そうでなければ、僕は、僕は――。

「アレン……」

 村長の低い声が、遠くで響いた。

「つらいとは思うが、受け入れねばならん……レオンはな、勇者様を守って――」

「違う!」

 僕は叫んだ。

「レオンは死んでない! こんなの、おかしい……!」

 喉が焼けるほど叫びながら、レオンの肩を揺さぶった。

 起きてよ、レオン。君はそんなに簡単に死んでしまうような人じゃないでしょ?
 努力家で、魔法が村1番上手で、いつもかっこよくて、僕の自慢の幼馴染。

 僕の知らない誰かを守るために命を捨てるなんて、そんなの間違ってる。
 君が守るべきなのは、自分の命だけでよかったのに――

 どうして、どうして、どうして――

「アレン……」

 誰かが肩を掴もうとしたが、振り払った。

 何かが胸の奥で軋む音がした。
 身体の奥底から、熱いものが込み上げてくる。

 これは、怒りだ。

 レオンを殺した魔物への、激しい、燃え盛る憎悪。

 ……許さない。

 絶対に、絶対に、許さない。

「アレン、まさか……!」

 僕の決意を察したのか、村の男たちが慌てて僕の前に立ち塞がる。

「落ち着け、アレン! 戦えないお前が行っても、無駄死にするだけだ!」

「邪魔をしないで」

 僕は低く、静かに言った。

「レオンを殺した奴らを、絶対に許さない」

「アレン!」

 村人たちの叫びを振り切り、僕は駆け出した。


 ◆◆◆


 魔物が巣くう森の奥へ、迷いなく足を踏み入れる。

 自分がどうなろうと構わない。どうせ、僕のすべてはもういないのだから。

 レオンの消えたこの世界に、何の意味があるというの?

 剣を手に、獣の咆哮に向かって突き進む。
 何匹倒しても、次が来る。血が飛ぶ。肉が裂ける。

 それでも足を止めない。息が荒くなり、視界が揺らぐ。

 ――死ぬ前に、レオンを殺した魔物の喉笛を切り裂いてやる。

 そんな執念だけを糧に、僕は剣を振るい続けた。

 だが――

 次の瞬間、全身を引きちぎられるような激痛が走り、視界が暗転する。


 ◆◆◆


 目を開けると、そこは見慣れた村だった。

 懐かしい土の匂いが鼻をくすぐる。朝焼けが差し込み、鳥が鳴いている。

 いつも通りの、平和な朝。

 だが、僕はすぐに違和感に気づいた。

 ――あの時、確かに死んだはずなのに。

「アレン? 微妙な顔して、どうしたんだ? 腹でも壊したのか?」

 目の前には少し幼いレオンがいた。
 なぜ若返っているのかはよくわからないが、レオンが生きて目の前にいる。
 それだけで、よかった。

「お前ほんと変なやつだよな~。誕生祝いに、俺と1日中一緒に過ごしたいなんてさ」

「……誕生、祝い?」

 そうだ。この日は、僕の誕生日プレゼントにレオンを1日独り占めしたいとお願いした日だ。
 川で釣りをして、森で一緒に眠った僕の大切な大切な思い出の日。

 そして、その時悟った。

 僕は五年前に戻ったのだと。



 
「……今度は、絶対に君を守るからね」

 誓いを立てたこの日から、僕は変わった。

 レオンを守る力を手に入れるために、ありとあらゆる手段を尽くした。

 魔法を学び、剣を鍛え、死ぬほどの努力を積み重ねた。

 すべては、レオンを死から遠ざけるために。


 そして、また旅立ちの日が来てしまった。勇者なんかと出会わなければ。ずっとそう願っていたのに。
 レオンの性格上、やはり止めることは叶わなかった。

 僕を振り切って村を出てしまったが――構わない。

 僕は彼のすべてを知っている。

 逃がしはしない。


 ◇◇◇


「お前ら、仲良すぎじゃね?」

 勇者リオが、にやりと笑いながらそう言った。

 レオンは「そういうんじゃないし!」と否定したが、僕はただ微笑んだ。

 ――違うよ、レオン。

 僕にとって、君は世界そのものなんだ。

 勇者パーティに僕まで入ることができたのは、僥倖だった。

 これで、ずっとそばにいられる。

 レオンは気づいていないだろうけど、僕は今、どんな王国の宝よりも価値のあるものを手に入れたんだ。

 けれど。

 それでも、不安は消えなかった。

 レオンはまた、死ぬかもしれない。

 そう考えるだけで、心がひどく冷えていく。

 今度こそ守る。絶対に、絶対に、絶対に。

 何度でも誓う。

 レオンが生きる限り、僕は彼のそばにいる。

 どんな手を使ってでも――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった

近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。 それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。 初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息

片思いの練習台にされていると思っていたら、自分が本命でした

みゅー
BL
オニキスは幼馴染みに思いを寄せていたが、相手には好きな人がいると知り、更に告白の練習台をお願いされ……と言うお話。 今後ハリーsideを書く予定 気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいましたのスピンオフです。 サイデュームの宝石シリーズ番外編なので、今後そのキャラクターが少し関与してきます。 ハリーsideの最後の賭けの部分が変だったので少し改稿しました。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。

めちゅう
BL
 末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。 お読みくださりありがとうございます。

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

【16話完結】スパダリになりたいので、幼馴染に弟子入りしました!

キノア9g
BL
モテたくて完璧な幼馴染に弟子入りしたら、なぜか俺が溺愛されてる!? あらすじ 「俺は将来、可愛い奥さんをもらって温かい家庭を築くんだ!」 前世、ブラック企業で過労死した社畜の俺(リアン)。 今世こそは定時退社と幸せな結婚を手に入れるため、理想の男「スパダリ」になることを決意する。 お手本は、幼馴染で公爵家嫡男のシリル。 顔よし、家柄よし、能力よしの完璧超人な彼に「弟子入り」し、その技術を盗もうとするけれど……? 「リアン、君の淹れたお茶以外は飲みたくないな」 「君は無防備すぎる。私の側を離れてはいけないよ」 スパダリ修行のつもりが、いつの間にか身の回りのお世話係(兼・精神安定剤)として依存されていた!? しかも、俺が婚活をしようとすると、なぜか全力で阻止されて――。 【無自覚ポジティブな元社畜】×【隠れ激重執着な氷の貴公子】 「君の就職先は私(公爵家)に決まっているだろう?」

処理中です...