国内唯一の聖女、辞職する。偽聖女の手伝いから解放されたら、優秀すぎて引っ張りだこでした

三葉あやの

文字の大きさ
3 / 10
1話目

2.突然の裏切り-2

しおりを挟む
「どういうことだい?」

ダンは怪訝そうに私とミアを見る。


ミアはみんなに愛されて、信頼されているから、ミアの言うことがいつもみんなの中で真実になる。

だけど、ダンは違うと知っていたから、ゆっくり答えた。

「すれ違っただけなの。わざと押したりはしてない」

言いながら、ダンのミアを見つめる瞳と触れる手が少しだけ親しげで、違和感を感じた。

ミアがダンの腕に抱きついて、泣き叫んだ。

「私がダン様に会いに行こうとしたら、ソフィアから「私の婚約者に会うな」って、急に背中を強く押されたの」

ミアは膝からは流れる血をダンに見せるようにして、涙を流す。

「そんなこと言っていないわ」

ミアが話を誇張するので私は抗議したけど、ミアは勢い付いたのか、無視して話し続ける。

「それに今日ソフィアは聖女見習いなのに能力がないから、結界張りを代わりにやれって私に言ってきていて。

でもそれは神殿への嘘になるし自分のためにならないって私が言ったら、ぶたれたの。

ソフィア、きっと私のことまだ怒っててこんなことをしたのよ」

事実無根の主張に、突然の親友の裏切りに、体が震えるのを感じた。

確かに結界張りを頼まれたことも、怒ったことも、ぶったことも事実だ。



彼女は完全に変わってしまったと確信した。

いままで彼女は私の力を使ってはいたけど、仕事はしっかりと終わらせていた。

だけど最近は、やってもいないのに嘘をついて職長に仕事の完了報告をするようになり、その結果、結界を張るべき街に結果が張られず、モンスターを出現させて市民を危険に合わせていた。

仕方なく彼女が仕事をした後にこっそり私が尻拭いをしていた。

今日はそういう3人の怠慢で放置された仕事を補完した直後に力を貸すように頼まれたから、さすがに体がもたなくて断った。

そしてミアが怒って私をぶった。

「ミア、さすがにそんな嘘を並べられたら私も怒るわ」

ダンはシクシク泣くミアの背中をそっと撫でると、ミアを叱る私を少し怪訝そうな顔で見つめる。

ミアは自分の魅せ方を知っている。

私に怯えたような表情を見せて体を小さくさせ、小動物のような守ってあげたい庇護欲を唆る。

ダンの変わって行く表情を見て、きっとこのまま彼も騙されて彼女を庇うのだろうなと早々に悟って、悲しくなった。

「うそなんかじゃないわ! みんなに聞いてみて! ユリア来てくれる?」

ミアは他の見習い聖女を呼んだ。

ユリアは貧乏な家出身で、お金持ちの商家出身のミアからお金で何かと言うことを聞いていた。

「ユリア、ダンさまに本当のことを話してくれる?」

「はい、私はソフィアがミアに仕事を何度も押し付けるその現場を見ていました。

ソフィアはダンさまの前ではいつも天使みたいに振る舞うけど、私たちのことを辛くいじめるんです」

私は長年尽くしてきた友達の裏切りに、絶望とか悲しみを通りこして、諦めに近いものを感じていた。

「ユリア、あなた何を言っているかわかってる? 」

仮にも誓いを立てた見習い聖女が、聖堂とこんなに堂々と嘘を吐くことの重さをわかっているのだろうか。

私たちの振る舞いが国に影響を与えて、全て返ってきてしまうというのに。

私が止めようとすると、ミアが泣き真似をした。

「ソフィア、嘘がばれたからってユリアをいじめるのは、やめてください! 」
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?

みおな
ファンタジー
 私の妹は、聖女と呼ばれている。  妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。  聖女は一世代にひとりしか現れない。  だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。 「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」  あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら? それに妹フロラリアはシスコンですわよ?  この国、滅びないとよろしいわね?  

婚約破棄されたので、隠していた聖女の力で聖樹を咲かせてみました

Megumi
恋愛
偽聖女と蔑まれ、婚約破棄されたイザベラ。 「お前は地味で、暗くて、何の取り柄もない」 元婚約者である王子はそう言い放った。 十年間、寡黙な令嬢を演じ続けた彼女。 その沈黙には、理由があった。 その夜、王都を照らす奇跡の光。 枯れた聖樹が満開に咲き誇り、人々は囁いた。 「真の聖女が目覚めた」と——

ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした

暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。 役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。 だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。 倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。 やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。 一方、病の裏で糸を引いていたのは………。 “無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...