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1話目
4.ミアの根回し
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遠目から、ダンがミアを慰める姿が見える。
親しげに髪の毛や手に触れ合っている様子を見て、胸が痛くなる。
私にはもう一瞥すら向けようとしない。
絶望に頭がボーッとする中、体にも異変を感じて自身の体を見下ろす。
腕に足に、ぶつぶつと赤い湿疹が浮き始める。そして皮膚もまたブヨブヨと垂み始めた。
ミアにもらった薬の粉と一緒に、赤い液体も今になって効いてきたのだと感じる。
一体彼女はどうしてここまで残酷なことを平気な顔でできるのだろうか、私は絶望した。
しかし職長に真意に話をすれば、治療してくれたり、ミアにしかるべき対応をして、流石にこの状況を解決してくれるのではないだろうかと、力を振り絞って立ち上がった。
少し歩いた先の職長がいる部屋をノックして、中に入る。
「職長、お話があるんです」
私の声に振り返った職長は叫び声を上げて、後ずさる。
「うわああああ! なんて気味の悪い顔をしてるんだ。できれば近寄らないでくれ。お前はソフィアか?」
「はい、ソフィアです。ミアにもらった粉を塗って飲んだら、こんな酷いことになってしまいました」
「どういうことだ? 」
「言葉のままです。肌が艶々になると言われて薬をもらったのですが、飲んだら皮膚がただれて、ぶつぶつが出てきました」
職長は哀れみの表情を浮かべて、「こういうことだったのか」と呟いて私を見る。
「ミアから君の話は聞いている。君の危ない人間生について忠告も貰っていたから、騙されないさ」
そう言われて、私の頭には疑問符だけが浮かぶ。どういうことだろう。
職長はため息をついてから、答える。
「お前は小さい時からここに連れてこられて、聖女になることを目指してきたのに才能が全くない。
比べてミアのような優秀な者が常に隣にいることで、毎日劣等感に苦しみ、少しずつ頭がおかしくなってきてしまっているようだと、優しい彼女は心配して私に教えてくれた。
時折、ありもしない妄言を吐いてミアたちを困らせていたと聞く。
そして近いうちに私にも嘘をつくかも知れないが、信じないでと忠告を貰っている」
「何をおっしゃってるんですか? 」
「今のお前は正常じゃない。その外見はもちろんだが、中身もおかしくなっている」
「私は正常です! おかしいのはミアです!
信じてください、今までだってミアは私の能力を使って聖女を演じていたんです」
「もう一度言う。ミアから、数年間、お前がどう言う嘘をついたかいつも聞いていた。
お前がミアに力を貸し与えているという偽物の話をするつもりだろ?
ミアは困っていたよ。自分の叶わない願望を嘘をつくことで満たして、二人の見習いにもそんなホラを吹き続けるようになった。そのうちそれが真実だと思い込んでしまっているみたいだと。事前に聞いているよ。
だけどな、自分の魔力を他人与えるなんて神くらいしかできないことだ。
そんな見えすいた作り話を信じないね」
職長は私のことを頭がおかしくなったと決め付けて、話を全く聞いてくれない。
以前からわたしにも能力があることを訴えても信じてくれなくて、自分の伝え方が足りないとばかり思っていた。
だけど全てはミアが入念な根回しをしていて、妄言を言っていると刷り込んでいたせいだと知って驚愕した。
ここまで手を回していたなんて。
職長は、誰かに電話をする。
「私だ、すぐに連れて行ってくれ」
誰にかけているのだろうかと思っていると、警備の人が来た。
「ソフィア、しばらくお前の部屋を隔離する。
本来ならお前のような面倒はとっくに追い出したかったところだが、16歳までは聖堂が預かる義務がある。
だがそれもあと1ヶ月だ。1ヶ月経てばミアが聖女に選ばれ、お前は捨てられる」
職長の言葉にハッとする。
そうだ、あと一ヶ月もすれば、聖女が一人選ばれる。
その時になったらきっと全て分かってもらえるはず。
だからあと1ヶ月の我慢だ、そう思うと少しだけ希望が湧いて、私は警備に言われるがままに連れて行かれた。
親しげに髪の毛や手に触れ合っている様子を見て、胸が痛くなる。
私にはもう一瞥すら向けようとしない。
絶望に頭がボーッとする中、体にも異変を感じて自身の体を見下ろす。
腕に足に、ぶつぶつと赤い湿疹が浮き始める。そして皮膚もまたブヨブヨと垂み始めた。
ミアにもらった薬の粉と一緒に、赤い液体も今になって効いてきたのだと感じる。
一体彼女はどうしてここまで残酷なことを平気な顔でできるのだろうか、私は絶望した。
しかし職長に真意に話をすれば、治療してくれたり、ミアにしかるべき対応をして、流石にこの状況を解決してくれるのではないだろうかと、力を振り絞って立ち上がった。
少し歩いた先の職長がいる部屋をノックして、中に入る。
「職長、お話があるんです」
私の声に振り返った職長は叫び声を上げて、後ずさる。
「うわああああ! なんて気味の悪い顔をしてるんだ。できれば近寄らないでくれ。お前はソフィアか?」
「はい、ソフィアです。ミアにもらった粉を塗って飲んだら、こんな酷いことになってしまいました」
「どういうことだ? 」
「言葉のままです。肌が艶々になると言われて薬をもらったのですが、飲んだら皮膚がただれて、ぶつぶつが出てきました」
職長は哀れみの表情を浮かべて、「こういうことだったのか」と呟いて私を見る。
「ミアから君の話は聞いている。君の危ない人間生について忠告も貰っていたから、騙されないさ」
そう言われて、私の頭には疑問符だけが浮かぶ。どういうことだろう。
職長はため息をついてから、答える。
「お前は小さい時からここに連れてこられて、聖女になることを目指してきたのに才能が全くない。
比べてミアのような優秀な者が常に隣にいることで、毎日劣等感に苦しみ、少しずつ頭がおかしくなってきてしまっているようだと、優しい彼女は心配して私に教えてくれた。
時折、ありもしない妄言を吐いてミアたちを困らせていたと聞く。
そして近いうちに私にも嘘をつくかも知れないが、信じないでと忠告を貰っている」
「何をおっしゃってるんですか? 」
「今のお前は正常じゃない。その外見はもちろんだが、中身もおかしくなっている」
「私は正常です! おかしいのはミアです!
信じてください、今までだってミアは私の能力を使って聖女を演じていたんです」
「もう一度言う。ミアから、数年間、お前がどう言う嘘をついたかいつも聞いていた。
お前がミアに力を貸し与えているという偽物の話をするつもりだろ?
ミアは困っていたよ。自分の叶わない願望を嘘をつくことで満たして、二人の見習いにもそんなホラを吹き続けるようになった。そのうちそれが真実だと思い込んでしまっているみたいだと。事前に聞いているよ。
だけどな、自分の魔力を他人与えるなんて神くらいしかできないことだ。
そんな見えすいた作り話を信じないね」
職長は私のことを頭がおかしくなったと決め付けて、話を全く聞いてくれない。
以前からわたしにも能力があることを訴えても信じてくれなくて、自分の伝え方が足りないとばかり思っていた。
だけど全てはミアが入念な根回しをしていて、妄言を言っていると刷り込んでいたせいだと知って驚愕した。
ここまで手を回していたなんて。
職長は、誰かに電話をする。
「私だ、すぐに連れて行ってくれ」
誰にかけているのだろうかと思っていると、警備の人が来た。
「ソフィア、しばらくお前の部屋を隔離する。
本来ならお前のような面倒はとっくに追い出したかったところだが、16歳までは聖堂が預かる義務がある。
だがそれもあと1ヶ月だ。1ヶ月経てばミアが聖女に選ばれ、お前は捨てられる」
職長の言葉にハッとする。
そうだ、あと一ヶ月もすれば、聖女が一人選ばれる。
その時になったらきっと全て分かってもらえるはず。
だからあと1ヶ月の我慢だ、そう思うと少しだけ希望が湧いて、私は警備に言われるがままに連れて行かれた。
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