ヒロイン=ヒーロー

は~げん

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第六話 春樹の憂鬱 その一

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前回までのあらすじ
どうも。エレンホスです。
前回僕は少し実験をしてみました。その結果はとてもすばらしいものでした。
そして少し事後処理をテベリスに頼んだら、なんと、アナザーが止めに来たのです
アナザーを倒し天使を殺そうとしたらアナザーが覚醒。テベリスは破れ行方不明になりました。少し心配ですが、きっと彼女なら大丈夫でしょう。



「・・・!?こ、ここは・・・?」
「お、目が覚めたか。テベリス」

モコモコなベッドから、飛び起きて周りを見渡す少女。彼女の身体中には、白い包帯が巻いてあったりおでこになぜか絆創膏がはってあったりで、介抱の痕跡がうかがえる。

彼女の名前はテベリス。ディザイアという化け物たちの1人である。

そんな彼女を介抱するのは、小野悟。年齢より、少し大人びているただの男子高校生である。

テベリスは悟の方をじーっと見つめる。悟は顔を少し赤らめ目を背ける。なぜか照れてるようであった。

テベリスは少し考え、そして全てを思い出した。あの時、テベリスは魔法少女に負けてから、逃げる時に力尽きてしまった。おそらくそのあとこの少年に助けられたのだろう。少し理解に苦しむ。

何故なら、彼はテベリスの体から出る血を見たはずだ。赤ではなく、緑色の。普通の人間が見たら逃げ出すはず。だが、彼は違かった。

テベリスはよくわからなかった。だが、彼を見ると何故か胸の鼓動が少し早くなる。それは心地いいが、感じてはいけない感情な気がした。

テベリスは窓をがらりと開けて外に出ようとする。そんな彼女を悟は慌てて手を引っ張り引き止める。

「お、おい!まだ怪我は治ってないんだ。もう少し家にいろ!」
「お礼はいう・・・けど、私はここにいてはいけない。何故なら・・・人じゃないから」

テベリスはいつも通りのやる気のない。そして冷たい瞳で悟を見つめた。

悟は今度は目をそらさずにテベリスの目を見つめ返した。しばらくの間が空き、やがて悟が口を開く。

「・・・俺が助けたいから助けたんだ。そこに理由なんてない。そして俺はお前に元気になってほしい。だから引き止めるんだ。だって・・・」

ここまで言い、悟は目を背ける。テベリスはやはり意味がわからない。もしかしたら、この胸のドキドキに関係するのかもしれない。だが、そんなことは関係なかった。

テベリスは手を振り払い、もう空いている窓に片足をかける。そしてちらりと悟の方を向く。

「感謝の言葉は・・・今『は』言わない」

と言い、テベリスは窓から飛び出していった。悟は身を乗り出して外を見るが、もうテベリスの姿は見えなくなっていた。
「・・・今は、か」
悟は先ほどまでテベリスを握っていた手を見つめていた。そして、確認するように手を握った後、窓をぴしゃりと閉めた。


◇             ◇                ◇              ◇            ◇


「ん?小峠どうした?なんか浮かない顔だけど・・・」
「あ、あぁ。西園寺・・・そんなに浮かない顔してたか?」
「おうよ。まるでこの世の終わりみたいな顔してたぞ」

夏の太陽が照らす通学路。そこには二人の人間が立っていた。男の方は、薄く見えるが下に「剣の舞」と書かれたシャツを着ていた。彼の名前は「小峠春樹」私服がちょっとダサい男子高校生である。

そんな彼を心配そうに見る少女。髪は短めで、もしスカートをはいてなければ男性に見られるかもしれないような、顔立ちであった。名前は「西園寺あかね」

改めて浮かない顔をしてる理由を聞くと、春樹が少し頭をかきながら、こう言った。

「いや、この前さ美冬に買ってもらった服があんだけど・・・なんか着る気が起きないというか、なんというか・・・」

美冬。それは彼の妹である。兄思いの優しい子であり、みんなかわいがっている。

しかし、着る気が起きないというのはこの前買ってきたジャスティスTシャツのことなのだろうか。春樹はダサい服。しかも美冬が買ってきた服は喜んで来そうなイメージがあるためあかねは少し驚いた。

「ま、趣味に合わなかったんだろ。今度自分で買ってきたらどうだ?」

あかねは元気付けるようにそういった。それを聞いた春樹はそうだな。と呟き、その話はここで終わった。

「久しぶりあかねちゃん!!正確に言えば1話ぶり!!」
「1話ってなんだよ・・・おっす。千鶴」

いつも通りに飛びかかる少女の頭を抑えつつ、いつも通りに挨拶を投げ返す。あかねに飛びかかってきた少女の名前は千鶴。なぜかあかねに好意を寄せてる少女だ。

そんな千鶴の後ろから大きなあくびをしながら歩いてくるのは悟。少し眠そうな目を擦りつつ、彼の性格からはあり得ないほど間が抜けた顔をしていた。

「ん?どうしたんだ悟」
「春樹か・・・いや、少しな」

と言いながら恥ずかしそうに頬をかく悟。心なしかどこか遠くを見つめている用にも見えた。

あかねは早く行くぞと声をかけようとするがそんな彼女の肩をトントンと千鶴が叩き、あかねの耳に口を近づける。

「あかねちゃん。きっと悟くんは恋をしてるよ。熱々でジューシーな恋だよ。乙女の私にはわかるよ!」
「そ、そうなのか?というか、千鶴が乙女なら世界中の男女問わずみんな乙女だ」
「いやーん!辛辣なあかねちゃんもかわいい!でも私のどこが乙女じゃないっていうのー!」

頬をぷくっと膨らませてそう反論する千鶴。乙女じゃないというのはあかねに向ける謎の好意だけで、ほかは普通にかわいいんだけどな。と考える。

すると、春樹が腕時計に視線を落としたあと、慌てた声で

「時間がやばい!みんな急ぐぞ!!」
言われてみれば、成る程もう学校が始まる10分ほど前。少し話しすぎたと皆は後悔した。

「走るぞみんな!!」

あかねの合図で皆一斉に走り出す。目指すは学校。カバンの中で天使くんが声にならない叫び声をあげてるのは気にしないでおこう。


◇            ◇                ◇                 ◇             ◇


暗い個室に、手品師の風貌をした一人の少女のような少年が座って、目の前のガタイがいい男に話しかけていた。

少年はエレンホス。そして男はマタルといった。マタルは少し落ち着きがないようにそわそわしていて、対照的にエレンホスは落ち着いていた。

「この前の性欲。彼は『欲を溜め込んだらどうなるか?』という実験のために彼には尊い犠牲になってもらいましたが・・・結果は上々です」

ふふふ、と可愛らしく笑う少年の名前はエレンホス。魔法少女の敵ディザイアの事実上のトップである。

「そうか・・・エレンホスが喜んでんならいいけどよぉ~テベリスは無事なのか?」

心配そうな声をかける大男はマタル。エレンホス一筋の彼でも、やはり仲間の安否は気になるらしく、落ち着きのない声でエレンホスに話しかける。

その様子を見たエレンホスは大丈夫だというように、マタルに微笑んだ。マタルは思わず変な声を上げそうになるのを理性で抑える。

「まぁ、お前が言うなら大丈夫なんだろう・・・よし、じゃ俺は曲でも作ろうか。暇だしな」

といい、気合い充分というように袖をまくりながら目を閉じて椅子の上に座る今頭の中で今日を作ってるのだろう。

そんなマタルの様子を見ながら、エレンホスはいたずらっ子みたいにくすりと笑いトコトコとマタルの近くに寄ってきた。そしてマタルの膝の上にちょこんと座った。

「い、いきなりなんだ!?エレンホス!?」
「いやぁ、座りやすそうだったのでつい・・・」

迷惑でしたか?と上目遣いで言われて迷惑と言えるはずがない。鼻から何か垂れそうなのを抑えつつ、マタルはまた頭の中で曲を作りはじめる。

「・・・貴方は、あんなことがあっても曲を作り続けるのですね」
「・・・あんなことがあったからだ。ここで俺が人間だった頃の仕事みたいなもんをやめちまったら、それはあいつに負けたことになる。それは嫌だ」

ポツリと、声を漏らすマタル。彼が考えてることは、エレンホスにはよく掴めない。なぜならエレンホスはマタルじゃないから。

エレンホスは目を閉じ、マタルと会った時のことを思い出す。あの日、あれは絶望しきった顔で歩いていた。そして少し血の匂いがしていた。そんな彼を見つけたエレンホスは彼の欲を解放してあげたのだ。善意などではない。ただ単に興味と、新しい駒が欲しかっただけである。

そして、なぜかマタルはエレンホスに対して好意を持ち始めた。いや、エレンホスの命令をどんなものでも聞くあたり、好意をというより心酔か。
そう言えば、テベリスもそうであった。彼女もエレンホスに対してマタルほどではないが心酔していた。だからこそ

「ただいま・・・て、何してるの・・・?」
「あっ!?違うぞテベリス!!これはちょっとあれがあれしたんだ!!」
「はいはい・・・ふぁ・・・エレンホス、少し寝てていい・・・?」

だからこそ

「・・・ええ、それが貴女の欲ですものね。構いませんよ」

だからこそ、テベリスがいつもとは違い、エレンホスと目を合わせようとしないというのと、額に絆創膏がはられているのに気づいた。

「・・・少し厄介かもしれません・・・」

エレンホスはそう呟き、マタルの膝から降りた。そして帽子を深くかぶり、外に出て行った。


◇              ◇               ◇              ◇               ◇


「うーん・・・何がおかしかったのでしょうか」

顎に手を当てながら、ポツリと呟く幼い少女。可愛らしくサイドテールを揺らしている。名前は「小峠美冬」

「まぁ、たまたま趣味に合わなかったんだよ。あんまり気にすんな」

そんな彼女をなだめるのは、あかね。場所はそんなあかねの家である。学校から帰る時、いきなり春樹から美冬をしばらく家で預かってくれと言われた時は少し驚いたが、あかねは快く家に美冬を招き入れた。

美冬があかねの家に入った時に見た春樹の顔は、なぜか安心したというか、変な顔をしていたのも気になったが。

と、ここで美冬が未だに納得してない顔だというのにあかねは気づく。

「趣味ですかねぇ・・・自慢じゃないですが、ボクが選んだ服はいつも来てくれますよ。それに、ださい服がいいと言ったのは春兄ですし・・・」

だんだんとうつむき始める美冬。あかねは少し頭を掻き、どうしようかと天使くんをチラ見するが、天使くんはお手上げだというように羽を上に軽く上げる。それを見たあかねは美冬に取り敢えず向き直る。こういう時は話題を変えるに限る。ついでに前からの疑問を聞いてみよう。

「そう言えば、美冬ちゃんの両親はどんな人なんだ?」

小峠家の両親というのはあかねは見たことがない。噂では、海外で何かの修行をしてるらしい。

「ボクの両親ですか?・・・春兄が言うには有名なデザイナーだったそうですよ。今は海外で修行して、ボクたちにお金を送ってきます。まぁ、足りないから春兄がバイトしてるんですけどね」

少し誇らしげにそして照れ臭そうに話す美冬。それを見たあかねは美冬は家族が好きだと改めて実感して、微笑んでいた。そして、あかねはよしといって立ち上がる。

「うだうだ悩んでもしたないしな。なんか服でも買って行こうか。それで小峠に直接言ってみろ。「大好きな春兄のために買ったから来てくださいー」って」
「だ、だだだ、大好きって!!そそそそ、そんなことないです!!わけわかめです!!」

顔を真っ赤にしてそういうが、あかねは大声で笑いながら扉を開け外に出ていく。その後ろから天使くんと、慌てて美冬が追いかけてくる。

そして近くのデパートで買った緑色の服に白い文字で「白葱」と書いてある服をかい、春樹の家に向かって歩いている。美冬はニコニコしてるが、あかねと天使くんは少し引いている。

そして春樹の家にやってきた二人。ピンポーントチャイムを鳴らすが、春樹が来る様子もない。バイトにいってるかと思えば鍵も開いていた。お邪魔しまーすと言いながら扉を開けて中に入るあかね達。なにやら異質な雰囲気であった。

「・・・この気配。まさか・・・」

天使くんが何かを感じたのと、リビングにいる春樹を見つけたのは同時であった。だが、隣に一人の少年がいた。見たことのある手品師のような風貌。

「エレンホス・・・!?」
「おやおや、これはアナザーさん・・・お久しぶりです」

といい礼儀正しく頭を下げるエレンホス。あかねは思わず身構える。それを見たエレンホスは安心しろというように手を上に挙げた。

「戦うつもりはありませんよ。ただ、僕はただ・・・」

とここまでいい、春樹の肩をポンと叩いた。そしていつものようににこりと笑ってあかね達を見た。その時の顔。可愛らしいが、思わずゾッとしてしまう。

「彼・・・春樹くんの欲望を開放させるためです」

と言った。

そして、その言葉が合図になったように、春樹は真冬の近くまで行き、そして彼女が持っている白ネギと書かれた服を取った。

「春兄・・・?な、何をする気ですか・・・?」

美冬は震える声で春樹にそう聞く。春樹はいつも通りの笑顔を見冬に見せた。その笑顔はとても優しく、美冬はおもわずつられて微笑んだ。

ビリィ!!

春樹が、持っていたハサミでそのシャツをビリビリに切り刻んでいた。

美冬とあかねは呆然とした顔でその光景を見つめ、後ろでエレンホスがクスクス笑っていた。

「な、なんでこんなことを・・・?」

今にも泣きそうな声で美冬は春樹にそう聞いた。すると、春樹は先ほどとは違い、冷たい目を美冬に向けた。

「誰が好き好んでこんなダサい服着るかよ。バカじゃねぇか?」

と、春樹は美冬に言った。それを聞いた美冬は床にぺたりと座り込み、涙を流し始めた。あかねは美冬をなだめるように背中をさすりながら、エレンホスを睨みつけた。

エレンホスはフッと、息を漏らしながらあかねに対して
「おぉ、怖い怖い。これは僕の責任じゃありません。春樹くんの欲のせいですよ?勘違いしないでくださいね」

くすくすと口元を隠し、笑いながらそういった。

すると、春樹が虚ろな瞳でどこか遠くを見ながら、ふらふらと家の外に出て行った。それを見たエレンホスは、春樹について行った。
あかねも慌てて追いかけようとするが、美冬に手を掴まれて止められる。美冬は震える声であかねに

「ボクも行きます・・・いや、行かなきゃならない。なんで春兄がああなったか、ボクは知らないといけないのです」

震えるが、力強い瞳をあかねはしばらく見つめたあと美冬の手を引き、春樹たちを追いかけて行った、


◇            ◇                ◇                ◇                  ◇


「見つけた・・・!!」

あの後あかねと美冬は春樹を追いかけていた。思ったより足が速く、二人は肩で息をしている。

「おやおや、速かったですね、お二人さん」

そこには何かの布の上に座り込んでる春樹と帽子を深くかぶっているエレンホスの二人の姿があった。遠くからはよく見えないが、春樹は何やらブツブツ呟いている。

よく見たら春樹が座ってる布はどれもおしゃれな洋服であった。いつも来ているあのダサいシャツとは正反対の。

するといきなりふらり、と春樹は立ち上がりふらふらと美冬のところに歩いていく。

「美冬・・・ごめん。ごめんなぁ・・・」

そして美冬の服をつかみ、春樹は泣き始める。そんな光景を見た美冬は慌てたように体が固まる。

エレンホスは先ほどより大きく笑い声を立て始める。その笑い声は狂ったように聞こえ、まるで悪魔の笑い声であった。その声を聞き、美冬とあかねはおもわずビクリとする。

「いやぁ、素晴らしいです。欲が溢れそうなのを彼は理性で抑えている!!すばらしい!素晴らしいですが・・・もし」
「美冬・・・こんな最低なお兄ちゃんで・・・」
「解放したらどうなりますかねぇ?」
「本当に、ごめん・・・」
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