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第七章

二十話【強敵】

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惣一郎のサーチは発動されている。

ベンゾウも共有しているはずだ。

それでもベンゾウは7人の攻撃を入れ替わり立ち代わり受ける事で精一杯であった。

「ゴゴ! コイツは俺が! ベンゾウの方を頼む!」

ゲルドマから目を離さず、声を上げる惣一郎。

あのベンゾウのスピードが……

先読みされてまるで予知能力でも持ってる様だ。

ゴゴとジジが盾を前にハクの詠唱を守りながらベンゾウの援護に向かう。

タイガとジャニー、ホルスタインが、応戦しながら左に移動するベンゾウを追い掛ける!

その上をハクの雷撃が伸びる!

地面に刺さった槍に誘導される様に落ちる雷!

構わず次の詠唱に入るハク。



「お前ら混じってるのか!」

惣一郎の目には、戦斧を握るゲルドマの腕が硬そうな甲殻で覆われているのが見えた。

上位種並みではゴゴ達では厳しい!

下がる様に言いたいが、風を切る音を置き去りにする戦斧を躱すだけで精一杯だった!

理喪棍を振り宙に浮く盾がゲルドマの視界を塞ぐと、槍と鉄球が死角から襲い掛かる。

だが戦斧で撃ち落とされ、地面に刺さる槍。

風を切る鉄球は、ゲルドマの黒い甲殻に弾かれ落ちる!

硬い奴だ。




緑の短剣を掻い潜り國家が斬りかかるのを、後ろの傭兵の槍が邪魔をする!

まるで来るのが分かってた様に。

ベンゾウの目にも傭兵達の足が、蟲の様になっているのが映る。

そこにホルスタインの巨大な斧が地面をえぐる!

瞬時に避け、後退する傭兵が後ろの傭兵と入れ替わり振り抜いたホルスタインの脇腹を蹴る!

くの字に呼ぶ大柄なホルスタイン!

タイガが受け止めると、ジャニーが長い剣を回しコマの様に斬り込む!

同じ長剣を持つ傭兵がジャニーの剣を受け止め火花を散らす!

だが武器では勝っている!

半分程傭兵の剣に食い込むジャニーの剣。

ベンゾウが背後から閃光となり迫るが、鎖に繋がれた棘の付いた鉄球がベンゾウの前に叩きつけられる!

タイミングを合わされた!

ベンゾウが気付かず突っ込んでいたら、えぐれていたのは地面ではない!

血を吐き苦しむホルスタインを後退させ、鋼色の棒を地面に突き立て、くるりと大きく跳躍するタイガ。

だが蹴り飛ばされたジャニーによって、撃ち落とされる!

「下がって!」

薄っすら笑みを浮かべるベンゾウが声を張り上げた!

盾を構えるゴゴとジジ、その後ろで詠唱するハクに向けたものか、固まる3人!

騎士達では敵わないと、仕切り直すベンゾウが息を吐き、その場でトントンと軽く跳ね始める。

訓練された傭兵と上位種のハイブリッド。

まさかの苦戦にベンゾウは楽しそうだった。






ゲルドマの戦斧が惣一郎の頭上を掠める!

「あっぶな! 禿げたらどうするんだ!」

不適な笑みを浮かべるゲルドマ。

腰からひょうたんの様な長い一本の鉤爪の付いた腕が伸びる。

意気揚々と現れた自分が恥ずかしくなる惣一郎。

不味いな……

ゲルドマの体が光沢のある黒に変わって行く。

膨れ上がる広背筋に2本の触覚。

ずっしりと構え、黒い猫背でも大きなのゲルドマ。

惣一郎が図鑑で見た写真を思い出す。

クロカタゾウムシ……

昆虫最硬の虫。


予想外の敵の強さにベンゾウと違い、惣一郎は焦っていた。

そこに隣に現れるベンゾウ。

頬の切り傷から血を流すベンゾウが、地面に敵の腕を一本放り投げる。

「ご主人様、一緒に!」

ゲルドマの周りに集まる7人の傭兵。

状況は変わらないはずだったが、ベンゾウが隣に来ただけで、惣一郎の焦りは消えていた。

「ああ、一緒にやるぞ!」

8匹の上位種を前に、迷いの無い目に変わる惣一郎だった。





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