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第七章

九話 【強敵と書いて強敵】

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騒音で会話を諦めた惣一郎は、川の中の影に気付く。

「何かいるぞ!」

「中を見せろ?」

服の上から胸を隠す、赤い顔のバオ。

惣一郎は川を指差すと、みんなが異変に気付く。

ゆらりと影が川から顔を出すと、巨大なカエルだった!

ベンゾウが凍りつく!

大きな飛沫を上げて飛び立つカエルは、惣一郎達の前にビタンっと着地すると、大きな口から長い舌を伸ばし、ビルゲンを絡め取る!

そのまま宙に浮き、口に運ぼうとする舌の根元をモモの槍が刺し切る!

舌先と共に落ちるビルゲンをバオが受け取る!

「ビルゲン様!」

「ビール券サマー?」

惣一郎は聞き取れない言葉を無視して、苦無を出す。

ベンゾウを抱えて距離を稼ぎ、4つの苦無が回り、カエルに放たれる!

オレンジに熱を帯びた苦無は、カエルの体、頭など4か所に刺さりそのまま貫通する。

カエルは半開きの口を動かし、ゆっくり川へ潜るが、少し先で仰向けに浮き上がり、そのまま流されて行きゆっくりと消えて行く。

ベンゾウは惣一郎に抱きついたまま、震えていた。

先程、圧倒的な強さを見せた少女とは思えない怯えようだった。

そのままベンゾウを抱えた惣一郎は、モモの指差す方へ洞窟を奥へと進み、先を急ぐ。

バオもビルゲンを抱えたままだった。

落ち着いたベンゾウは、

「ご主人様、ごめんなさい」と謝る。

「ご機嫌ザマあ、学園祭?」



その後、以前にも倒した事がある、カエルの様な顔の爬虫類に似た馬が、何匹か現れたがコレをベンゾウが瞬殺する。

カエルの顔が苦手な訳じゃないのね……

徐々に川から離れて行くと、調子の悪そうなビルゲンを下ろし、甲斐甲斐しく世話をするバオに、ふたりの関係性を不思議に思う惣一郎だった。

川から大分離れても、反響する音は変わらない爆音であった。

モモが指差す場所に細い隙間があり、岩と岩の間を抜けると宝部屋の様だった。

そこには高身長で、筋肉隆々な男が背を向けていた。

振り返ると、両手に剣を持つ爬虫類顔の男はゆっくりと剣を構える。

「まずい[キドニー]です!」

「恥ずい、気取ったゲス?」

バオが何かを叫ぶと一気に距離を詰め、惣一郎の前に現れる。

惣一郎を襲う右手の剣は、なんとか盾が間に合った!

だが、同時に左から惣一郎の後頭部へ逆の剣が走る。

間に合わないと思った瞬間、モモの槍が打ち落す!

バオの光矢が爬虫類顔の男を追うが、難なく剣で弾かれ、惣一郎の円盤が右から男を両断しようと飛ぶが、距離を置き、また瞬時に距離を詰めると、惣一郎に鋭い突きが走る。

盾で受けるも、後ろに飛ばされる惣一郎。

重い!

下がった惣一郎と入れ替わりに、ベンゾウが前に出る。

爬虫類顔の男はタイミングを合わせ、横一閃の剣がベンゾウを襲う!

ベンゾウの残像を切り、剣だけが手を離れ、回転しながら岩肌に刺さる。

男の右手の指が3本落ちていた。

顔色があるか分からないが、表情は変わらず左の剣が直ぐ様ベンゾウを襲う!

だが肘から先を剣と一緒に宙に飛ばし、胸に深い傷を作るキドニーは、ゆっくりと前のめりに倒れ地面に消えていく……



「つよ~! 場を飲む空気が違ってたな~!」

「ウヒョ~ バオの胸、公開したいな~?」

真っ赤な顔のバオに、その場の緊張が解けた。

バオ達は、四階層にキドニーが出た事と、倒せた事の両方に驚いていた。

現れた宝箱を開けるのは、モモが止めた。

後ろに回り込み開けると前に紫の液体を飛ばす。

毒であろう。

中には、紙に包まれた丸薬が4つ入っていた。

紙には強魔力薬と書かれていた。





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