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十三章

四話 【聖騎士】

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惣一郎は北にある、かつての全線基地、カーマを目指し、飛んでいた。

怒りで魔法は強くなる。

惣一郎もまた例外なく、テレキシスの魔法の効果が上がっていた。



しばらく飛ぶと土煙が見える。

マイズを目指す馬車は、教国の援軍にしては少な過ぎた。

惣一郎は馬車の前におり、鉄球を浮かし構える。

それを見た男が叫ぶ。

「惣一郎殿!」

ロウガであった。

「惣一郎殿! 良かった間に合ったんだな! 軍がマイズを襲うと聞いて、止めようと飛んで来たんだ! 皆無事か!」

「…………」

「まさか! なんて事だ……」

「説明を……」

静かな問いにロウガは以前、ピノが襲われた時以上の恐怖を覚える。

「きょ、教皇だ…… この国で神はセルロス神だけだ。それが、国を救ったゴキコロリを新たな神の様に称える者が増え、教皇は今、暴走してるんだ! 残ったゴキコロリの仲間である、スワロ殿をマオウと呼ばれる悪の手先と言い掛かりをつけ、排除しようと」

「そんな理由で? そんな理由でスワロを殺したのか?」

「まっ、まさか…… 本当なのか…… 間に合わなかったのか……」

「それで、何処にいる?」

「えっ? ああ、教皇達、教会の連中は、反対した王族や貴族達を捕らえ、教国を乗っ取ろうとしている。城だ! ここから北西にある城にいる」

惣一郎は黙って理喪棍で、飛ぼうとしていた。

「まっ、待ってくれ! 済まなかった…… この国を救ってくれたのに、こんな事に……」

「俺はスワロを助けただけだ。国を救ったつもりは無い。この国はそのスワロを殺したんだ、もう終わりだよ」

「待ってくれ! 教皇には……」

惣一郎は、何かを言いかけたロウガの言葉を聞かず、北西に飛び立つ。

凄いスピードで飛び続ける惣一郎。

一向に尽きない魔力に、惣一郎は怒りで気付かずにいた。





北西に王都だろう、城壁が見えて来る。

まだ陽も高かい。

城門の前には商人や冒険者達が城下町に入ろうと列を作っていた。

惣一郎は高度を上げ、遥か上空から直接城に向かう。


城壁を越え城下町を越えると、城の入り口に人集りが見える。

兵に止められる様に泣き騒ぐ人達の姿が見えた。

胸騒ぎがする惣一郎は城の手前で降り、悲しむ人集りを掻き分けて進む。

数人の兵に警備される台の上には、褐色に黒髪の首が晒されていた………

惣一郎の思考が止まる。



震えが全身の力を奪い、立っているのがやっとだった。

口の中に鉄の味を感じながら、一歩を力の限り踏み出す。



「ごめんよ…… スワロ……」




近付く惣一郎を、止めようと槍を持つ兵が前に出て、構える。

「それ以上近づくな!」

鉄球で吹っ飛ぶ、ふたりの兵士。

その兵士に巻き込まれる様に、残りの兵も地面に倒れると、惣一郎は晒された首を収納し城へと歩き出す。

その場にいた人々も、何が起きたか理解出来ずにいた。

倒れた兵が笛を吹き、近くにいた兵が異変に気付く。

「止まれ! ここから先は通れ… グァ!」

言い終わる前に鉄球がめり込み、道を譲る。

次々と現れる兵が、次々と例外なく鉄球の餌食になり、声も出せず苦悶表情で地面に倒れて行く。

大きな城門の前に着くと、分厚い木で出来た大きな扉に穴が開く。

4つ、8つ、16と、大きな扉に空いた穴は、次第に繋がり、惣一郎が通れる大きさに広がると、鉄球を引き連れ、また歩き出す惣一郎。

中庭を歩く惣一郎に、城内は蜂の巣を突いた様に兵が押し寄せて来る!

だが、近付く事も出来ずに倒れて行く。

止まらない歩みの先に、指揮をする赤い羽を刺した鎧の男が現れる。

男は慌て叫びながら、周りの兵をけしかけるが、直ぐに孤立する事になる。

「スワロを、殺したのは誰だ?」

「ななな、なんの話だ!」

「外の首を持ち帰ったのは、誰だ?」

「あああああ、あれ、あれはぁ、教皇様ののの、教会の者、聖騎士軍だ」

「何処に?」

「っこ、このさささ先に」

歩き出す惣一郎を、腰を抜かし座り込んだまま見送る兵士は震えていた。

先に進むと大広間に出る。

大きな階段が左右にカーブを描き、上で一つにつながっていた。

そこに、白銀の鎧を着た男が現れる。

「貴様、ゴキコロリか! 随分と早いじゃないか。我々も今朝、戻ったばかりだと言うのに!」

一階からも次々と、白銀の鎧を着た兵士が集まり構える。

「我は聖騎士[ジジェルシート団]団長の[オルソン]だ! 隻腕とは聞いておらなんだが、貴様の協力者ダークエルフ同様、神の名においてその首、貰い受けるぞ!」






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