異世界に転生したので婚約破棄してスローライフを楽しみます

ゆらぎ

文字の大きさ
4 / 12

4

しおりを挟む
自分の現実を受け入れたあの日から、気づけば先月で4年が経っていた。
一人っ子ということもあり、両親は私のことをとても可愛がってくれた。
実年齢は20歳越えなので普通の4歳に比べて頭がいいのは当たり前だが、いつも「天才だ」「将来有望だ」とたくさん褒めてくれる。
やっぱり少し大袈裟な人たちだが、自分も体の年齢に精神が引っ張られているのか褒められるたびに喜んでしまっている。

両親だけではなく屋敷の使用人の人たちもとても良くしてくれている。
生まれた時から一緒にいてくれている乳母のメリーは優しいだけでなく、いけない事をした時はきちんと叱ってくれる。
そんなメリーに私も、もう1人の母親のように思い慕っている存在だ。
その他にも料理長のサムは私の苦手な野菜を工夫を凝らして食べやすくしてくれるし、執事長のエドガーさんは博識でいつも私の疑問に思ったことをわかりやすく教えてくれる。
庭師のテオは私の目の色によく似た水色の花をたくさん綺麗に咲かせてくれている。お散歩にいくといつも話しかけてくれるので結構仲良しだ。

そんな両親や使用人の人たちに感謝を伝えるため手作りのお菓子をプレゼントしたいと思っていた。
この国は料理はすごく美味しいのだが、お菓子はあまり発展していなく素朴なものばかりだった。
お茶の時間のたびに物足りなく感じていた私は自分で作ればいいのではと考えた。

そのため先月の誕生日には私の部屋の隣に専用のキッチンをプレゼントしてもらったのだ。
1人でキッチンを使えると両親に話したところ、危ないから絶対にダメだと言われてしまったので1ヶ月サムの元で一通りの訓練を受けた。
元から知識はあったのでサムに驚かれたものの、お墨付きをもらいようやく自分のキッチンを好きに使えるようになったのだ。

久しぶりのお菓子作りには心が躍った。
オーブンを使うのは初めてなので様子見もかねてバターをたっぷり使ったクッキーと紅茶のスコーンを焼いた。
初めてにしては悪くない出来栄えだ。
前世で使っていたものとはやはり違いがあったが、このオーブンの焼きぐせをなんとなく掴めた気がする。

焼き上がったお菓子を配るために、まずは父と母の2人を自室に招いた。
 
____トントン

「リーナ!来たわよ~
 可愛い私たちのお姫様はなんで部屋に招いてくれたのかしら?」
「なんだかいい匂いがするね。
 もしかして早速キッチンを使ってみたのかい?」
「2人ともきてくれてありがとうございます!
 お父様の言う通り今日はキッチンを初めて使ってみたんです」

そう言いながら私は2人を部屋のバルコニーに用意したティーテーブルに案内した。
テーブルとティーセットはかなりこだわって用意した。
ティーテーブルは白い木で作られた一見素朴なのだがよく見ると脚に細かい花の細工が施されている。
クロスもテーブルに合わせて白いものにしたが金糸でところどころに花の刺繍が散りばめられている。
ティーセットは対照的に濃紺で落ち着いた印象のものを用意した。
夜空を連想させるようなティーセットで金色で星が描かれているお気に入りのものだ。

「こちらにお掛けになってください!
 クッキーとスコーンを焼いたのでお茶の準備をしますね」
「まぁまぁ!全てリーナが用意したの?
 日頃から天才だと思っていたけど、美的センスも完璧ね!」
「しかもクッキーやスコーンまで作れるなんて料理の才能もあったのか!
 生まれた時からそうだが、本当にどこに出しても恥ずかしくない娘だ」
「はは、、、ありがとうございます」

いつものように大袈裟な誉め殺しが始まってしまったので、受け流しながらお茶の準備を始めた。

「さぁ、どうぞ!私の自信作です
 お召し上がりください!」

この世界では初めて自分の作ったお菓子を食べてもらうので少しドキドキしてきた。

「これ本当に美味しよ、リーナ!
 こんなにしっとりしていて、バターの香りがするクッキーは初めて食べた!
 本当にお前は天才だ!」
「こっちの紅茶のスコーンもすごく美味しいわ!
 パサパサしていなくてクリームをつけなくても美味しいし、香りもいいわ~」

2人は本当に美味しそうに言ってくれた。
(よかった、喜んでもらえたようだ)

「えへへ、喜んでもらえて嬉しいです
 このお菓子はいつもの感謝を伝えたくて作ったんです!
 だからいっつも私のことを1番に愛してくれるお父様とお母様に1番最初に食べてもらいたかったんです!」

久しぶりに自分の作ったものを美味しいと言ってもらえる喜びを思い出した。
嬉しくなり満面の笑みで両親に感謝を伝えた。

「「リーナ!!!!」」

叫びながら両親は私のことをきつく抱きしめくれた。

「本当に、なんて可愛い子なの!
 お母様はあなたが娘として生まれてきてくれて本当に幸せよ!」
「リーナ!お父様は決めたぞ!
 お前を絶対に嫁になどやらない!」

なんだかお父様はよくわからない方向に行ってしまったがとりあえず喜んでいるようなので、受け流した。
家族3人のお茶会は騒がしいながらも幸せな時間だった。

(また2人にお菓子をあげよう!)

両親とのお茶会が終わった後はお菓子をラッピングして屋敷中に配りに行った。
使用人のみんなも本当に嬉しそうにしてくれた。
渡す時に感謝の気持ちを伝えると泣き出す人もいたくらいだ。
いつもとは違う楽しい1日になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

処理中です...