再会ー男と親友の写真の話ー

キュー

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おまけの話

ようやく ユーリと再会2

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  半年ほど前。マックとキュールが婚約して、キュールの家にマックが一緒に住むことになった。無職の彼は仕事を探すが、彼にできることといったら、料理くらい。
  ベルドンナの商会でコックの募集を探そうとマックとキュールが商会を訪れた。偶然その場にいた知り合いのウィルザールと感動の再会をはたし、彼に小さなレストランを薦められた。街外れで落ち着いた雰囲気の店を二人は一目で気に入った。
「一日一組の予約しかとらない、老夫婦のゆっくりしたもてなしのお店なんだが、超人気店で、予約は半年後まで入っている。」
「半年?一年じゃなくて?」
「うん。実は、彼らは半年後にはここを離れる予定なんだ。」
「その後は?」
「ん、誰かに売るか。壊すか。」
「でもどうして?」
「孫が一緒に住もうと、呼んだらしい。」
「へえ~」
「あと半年の営業のつもりだったのだが、つい先日な、ご主人が交通事故でケガしちまって、予約をキャンセルするか、手伝ってくれる料理人を雇うかで悩んで、相談されててな。休業せずに営業しているが、奥さんの負担が多くて、心配している。」
  老夫婦をマックが手伝い、半年後にはこのレストランを商会が買い取り、マックがそこを借りて営業するという契約になった。

「マックの料理なんて初めて食べたな。旨かった。正直今まで食べた料理のなかで最高だよ。」
「ありがとう。でも、奥さんの手料理が一番だろ?」
「う…ん…そういうことにしておこう。」
「あら、マックの料理に勝てるわけないじゃない。だいたい私料理しないし。」
「姉さん…ぶっちゃけすぎだろ。」
「いい店だね。」
ユーリが少し遠い目でつぶやいた。
「…前の主人がいい人でね。内装もほとんどそのままなんだよ。………あ。」
マックはソファーで気持ち良さそうに寝ていたユーリの息子がごそごそ動くのを見ていた。
「起きたかな。」
マックはすぐそばまで近より覗き混む。
「………」
男の子は目を開けた。
「天使!思い出して!」
両手を広げ、マックに抱きついた。
「!?」

そして、キスをした。

「ああ、そうか~なるほどね。」

  今初めて会ったユーリの息子が、なぜいきなりマックにキスをしたのか…ユーリもレイナも…ナナも…すぐに理解した。『天使』と『思い出』というキーワードで……

マックだけが、どうして皆が納得しているのかわからずに、首をかしげた。

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