仕事やめても……いいですか……?

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お仕事の時間ですよ

転・マリー3

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  近衛騎士の任命式が始まる。私は背中をピンと張り、使用人が並ぶ列に立って、二人の再会を見守る。

「ソフィーナ王女、今年成人した近衛騎士達に祝福をお願いします。」
騎士団長のよく通る声が響く。
「名前を呼ばれたものは前に。」
  名前を呼ばれ、王女の前に進み片膝を付き、騎士の誓いを宣言する。
  彼の下げた頭に王女は手を置き、祝福を言葉をかける。そして置いた手のすぐ側にキス。一連のきまりごとである。
  王女には、八年前の少年が近衛騎士となって現れることを、それとなく話題にしておいた。きっと顔を見たら思い出すわよね。
「クロード前へ。オーツ・カガーレの名を与える。祝福を。」
八年の時を経て再会する二人。王女には一声掛けるように助言してある。だって、クロードは王女のために……近衛騎士になるため、主席で卒業したのだから。
「また、お会いできましたね。」
王女が微笑みながら声を掛ける。
「はい。」
クロードもまた、微笑んだ。
王女も彼を意識したのか、祝福のキスが少し長かったように思う。
「ハンス前へ。ドーハ・ラベールの名を与える。祝福を。」
続いてハンスは前に進み出て王女の祝福をうけた。その後顔を上げて私を見た。一瞬、目が合った。

  儀式が終わり、退出後私は近衛騎士のハンスを待ち伏せた。
「ハンス様。近衛騎士就任、おめでとうございます。」
近くにいたクロードがこちらを見ていた。他にも一緒に就任した騎士達が、何事か?と見ていたが、構わずハンスに向かってお辞儀する。
「ありがとう。…マリー殿。お会いしたかった。」
ハンスが、私の手を握った。
「私もです。」
「君たちは知り合いなのかい?」
団長がハンスに問う。
「八年前に一度お会いしました。」
「その時再会を約束したのです。」

  まだ、彼らが見習いの騎士だった頃、王女が視察に訪れた訓練所で彼と初めて言葉を交わした。そして記念にとハンカチを渡した。
「このハンカチをいただきました。」
ハンスが懐から取り出したのは翠の若葉が刺繍されたハンカチ。彼の瞳の色と揃いの刺繍は私が特別に作らせた物。
  そう。ハンカチを二人に渡したのは私。二人のハンカチにはメッセージを忍ばせておりました。再会の日が来ることを知っていましたから。
「この言葉を支えに……あなたにもう一度会うために……」
「ハンス……嬉しい……」

  そうなのだ。ハンスと王女が恋仲になってはいけないのだ。そのために恥ずかしいなんて、言ってられないのよ。ハンカチに忍ばせたメッセージは「貴方に再びお会いできることを信じております愛しい人へ  マリーより」うわぁ、恥ずかしすぎるわよ。でも、運命を変えるには、なりふりかまってられないのよ。


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