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黒の章
黒の子 27
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先刻は前に進めなかった場所に差し掛かると抵抗を感じたが、二人は迷う事なく前進する。目には見えない薄氷を割るような感触があり、小さな氷の粒が全身に降り注ぐ。顔の前に腕を上げ庇いながら、その中を進み抜けた。二人は互いに顔を見、頷いた。不思議なことに少しも身体は濡れていない。目の前の閉じていた門はいつの間にか開いている。振り返ると進んだ距離はほんの少し。
今までの抵抗が嘘のように入り口の扉は触れるだけで開いた。
「グリーン、ありがとう。君はここで待っていて。」
ハンスはグリーンの首を一撫でして地面に降り、フールワンツと共に建物の中へ入った。
入ってすぐの天井の高い吹き抜けのホールを横切る。明かり取りの窓から光が差し込む内部は明るく、中央に大きな木が繁っていた。休憩用だろうか椅子とテーブルが幾つか並んでいた。
フールワンツがよく知る建物内部を迷う事なく駆ける。長い廊下の先に二人の姿を見つけた。
「その手を離しなさい!」
隊長はクロードの手を掴んで動かない。その顔は青ざめ、わずかに震えている。
隊長の手に触れ、名を呼ぶと掴んだ腕が離れ、隊長の目の色が戻った。
「あ、ワンツ……?」
「クロード!大丈夫か!」
その場に崩れるクロードをハンスが抱き起こす。
「ハンス…久しぶり……」
「何言ってんだよ。」
クロードはそのまま目を閉じて気を失った。
「隊長!やり過ぎですよ!」
フールワンツの重い声が部屋に響く。
「あはは、すまん、どうにも我慢できなくてな……」
「事の次第を説明して下さい。」
隊長の説明では、近隣の国の動きが怪しく、王から新しい魔装具の完成を催促されたのだとか。そこで、魔力量の多いクロードに協力してもらって、完成に近づけたいと思ったと。
「彼は学生ですよ!非常識だとは思いませんか!?」
「そう言うのが、解っていたから、ワンツは遠ざけたかったんだよ………」
「にしても!休学届けは聞いてませんでしたよ!」
ベッドの上で、クロードが身体を起こして訴えた。
「すまん。本当にすまない。偶然職員の休暇願いが重なって…今のうちに出来るだけ試しておきたいな……と……つい……ね……」
「つい……ね……」
こんな人が隊長で大丈夫なの?とハンスは思ったが、これは絶対口に出せないとも思った。
「クロード、もう大丈夫か?」
ハンスが心配そうにクロードの顔を見た。
「うん、魔力切れ起こしただけ。子どもの頃よくやったヤツ。」
「びっくりしたよ、結界割る程とは思わなかったよ。」
隊長が大袈裟に手を広げて言った。
「狙ってやった訳じゃありませんよ。」
「今度はちゃんとデータ取って実験したいなぁ。」
「できませんって。」
「そこのハンス君だったか?ここまでたどり着いたってことは、君は特殊な能力持ちなのか?」
「そんな力はないです。」
「いやいや、きちんと検査したいな、君の声がクロード君に届いたっていうぞ?遠話?なんだろうな?解明したいな。詳しく聞かせてくれないか?君も第七に入ればいいよ…いいだろう?ハンス君……」
「隊長!いいかげんにしてください。そこの、魔装具全部、隊長に掛けますよ!?」
フールワンツが声を荒げた。
「クロード、俺寮に戻らないといけない。先に出るね。」
「ああ、俺も出るよ。いいですよね隊長?」
隊長をキッと睨んでクロードが言った。
「送っていくよ。」
フールワンツも隊長を睨みながら言った。
「クロード、俺さ、見つけたんだ。後で紹介するよ。」
「誰?」
ハンスはグリーンを繋ぎもせず、放って来た事を思い出した。
「相棒。とっても美人の。」
今までの抵抗が嘘のように入り口の扉は触れるだけで開いた。
「グリーン、ありがとう。君はここで待っていて。」
ハンスはグリーンの首を一撫でして地面に降り、フールワンツと共に建物の中へ入った。
入ってすぐの天井の高い吹き抜けのホールを横切る。明かり取りの窓から光が差し込む内部は明るく、中央に大きな木が繁っていた。休憩用だろうか椅子とテーブルが幾つか並んでいた。
フールワンツがよく知る建物内部を迷う事なく駆ける。長い廊下の先に二人の姿を見つけた。
「その手を離しなさい!」
隊長はクロードの手を掴んで動かない。その顔は青ざめ、わずかに震えている。
隊長の手に触れ、名を呼ぶと掴んだ腕が離れ、隊長の目の色が戻った。
「あ、ワンツ……?」
「クロード!大丈夫か!」
その場に崩れるクロードをハンスが抱き起こす。
「ハンス…久しぶり……」
「何言ってんだよ。」
クロードはそのまま目を閉じて気を失った。
「隊長!やり過ぎですよ!」
フールワンツの重い声が部屋に響く。
「あはは、すまん、どうにも我慢できなくてな……」
「事の次第を説明して下さい。」
隊長の説明では、近隣の国の動きが怪しく、王から新しい魔装具の完成を催促されたのだとか。そこで、魔力量の多いクロードに協力してもらって、完成に近づけたいと思ったと。
「彼は学生ですよ!非常識だとは思いませんか!?」
「そう言うのが、解っていたから、ワンツは遠ざけたかったんだよ………」
「にしても!休学届けは聞いてませんでしたよ!」
ベッドの上で、クロードが身体を起こして訴えた。
「すまん。本当にすまない。偶然職員の休暇願いが重なって…今のうちに出来るだけ試しておきたいな……と……つい……ね……」
「つい……ね……」
こんな人が隊長で大丈夫なの?とハンスは思ったが、これは絶対口に出せないとも思った。
「クロード、もう大丈夫か?」
ハンスが心配そうにクロードの顔を見た。
「うん、魔力切れ起こしただけ。子どもの頃よくやったヤツ。」
「びっくりしたよ、結界割る程とは思わなかったよ。」
隊長が大袈裟に手を広げて言った。
「狙ってやった訳じゃありませんよ。」
「今度はちゃんとデータ取って実験したいなぁ。」
「できませんって。」
「そこのハンス君だったか?ここまでたどり着いたってことは、君は特殊な能力持ちなのか?」
「そんな力はないです。」
「いやいや、きちんと検査したいな、君の声がクロード君に届いたっていうぞ?遠話?なんだろうな?解明したいな。詳しく聞かせてくれないか?君も第七に入ればいいよ…いいだろう?ハンス君……」
「隊長!いいかげんにしてください。そこの、魔装具全部、隊長に掛けますよ!?」
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「クロード、俺寮に戻らないといけない。先に出るね。」
「ああ、俺も出るよ。いいですよね隊長?」
隊長をキッと睨んでクロードが言った。
「送っていくよ。」
フールワンツも隊長を睨みながら言った。
「クロード、俺さ、見つけたんだ。後で紹介するよ。」
「誰?」
ハンスはグリーンを繋ぎもせず、放って来た事を思い出した。
「相棒。とっても美人の。」
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