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お仕事の時間ですよ 3
王宮騎士物語 第38話 青い薔薇
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「な、何を知っているって?」
王弟の手が震える。
「君が国を捨てようとした理由だよ。」
王立学院の四天王。ブリジットとハマーが付き合い始めたのは出会ってすぐだと聞いた。一目惚れだと言っていた。
「ハマー、卒業したら、結婚すると約束したそうじゃないか。」
サーバスは友人の背中をバシバシ叩き、独り身のうさをはらす。
「そんなに束縛されたいかねぇ。」
じろりとブリジットがサーバスを睨む。
「サーバ、あなたみたいに特定の恋人を作らず、ふらふらしている軽い人には言われたくないわね。」
「お~怖いね。尻にしっかり敷かれて喜べ。ハマー。」
「ははは。」
「肯定するの!?」
「俺は愛する人の尻なら喜んで敷かれるよ。」
ギャーっと悲鳴を上げて、真っ赤になるブリジット。平気な顔で彼女の肩を抱くハマー。呆れて顔を反らしたサーバスの目に印象的な瞳が映った。
「どうした?」
「彼女…は…」
その瞳の持ち主……木陰で読書中だった彼女が、賑やかな声にその手を止めて顔を上げた所だった。
「ああ、青薔薇の……」
四天王の一人で、その美しさに信奉者は数えきれないほどだが、群れる事を嫌う青薔薇の刺は誰も寄せ付けない。信奉者達は側に近づきたくとも近寄れず、彼女の行動を見守りつつも、視界に入らぬよう常に気を配る。独りで行動する彼女をやっかむ者は、その人形のように整った容姿を氷の薔薇と呼ぶ。彼女からしてみれば、特に冷たいそぶりをしているつもりはなく、一方的に向けられる好意を断っているだけなのだが、艶のある見た目に反して、男性的なさばさばした口調や性格とのギャップに隠れファンも多いようだ。
「クレッセリア殿。」
周囲を気にせず、ズカズカと近づき、声を掛けるサーバス。周囲の無言のプレッシャーを気にもせず、話しかけるのは、流石の王族ならではの行動か。どよめきが広がる中、彼女の手の内の開いたままの読みかけの書籍をつまみ上げた。
「ん?何読んでるんだ?」
瞬間、青薔薇の眉間に皺が寄る。
「お調子者か。」
「先日はどうも、戦団長殿。模擬戦本番は、勝たせてもらいますよ。」
王立学院祭を間近に準備中の学内では、セッティング確認のテスト模擬戦が行われたばかりだ。確認が目的のため、段取り通り仮勝者はクレッセリアの陣営。テストとはいえ、サーバスの負けず嫌いが言葉となって現れた。だが、彼女は挑発には乗らずに黙って睨むように見つめるだけだ。
「これは、恋愛小説か?」
タイトルをみたサーバスはバカにしたような口調で読み上げるそれは、どこかの国のお伽噺を題材に書かれた古い純愛物語の本。その開かれた頁に隠すように挟まれた写真を見たサーバスは本を閉じた。
「返せ。私が何を読もうが貴様には関係ないだろう。」
クレッセリアは返せとばかりに手を伸ばす。
「………そうだな。悪かった邪魔をして。」
サーバスがその手に古い本を返し、踵を返した。
サーバスは自分の考えの浅さに後悔し、モヤモヤするような、居たたまれないような気持ちで、早足になった。少しでも彼女の視界から離れたい……その場を立ち去りたい思いで……
王弟の手が震える。
「君が国を捨てようとした理由だよ。」
王立学院の四天王。ブリジットとハマーが付き合い始めたのは出会ってすぐだと聞いた。一目惚れだと言っていた。
「ハマー、卒業したら、結婚すると約束したそうじゃないか。」
サーバスは友人の背中をバシバシ叩き、独り身のうさをはらす。
「そんなに束縛されたいかねぇ。」
じろりとブリジットがサーバスを睨む。
「サーバ、あなたみたいに特定の恋人を作らず、ふらふらしている軽い人には言われたくないわね。」
「お~怖いね。尻にしっかり敷かれて喜べ。ハマー。」
「ははは。」
「肯定するの!?」
「俺は愛する人の尻なら喜んで敷かれるよ。」
ギャーっと悲鳴を上げて、真っ赤になるブリジット。平気な顔で彼女の肩を抱くハマー。呆れて顔を反らしたサーバスの目に印象的な瞳が映った。
「どうした?」
「彼女…は…」
その瞳の持ち主……木陰で読書中だった彼女が、賑やかな声にその手を止めて顔を上げた所だった。
「ああ、青薔薇の……」
四天王の一人で、その美しさに信奉者は数えきれないほどだが、群れる事を嫌う青薔薇の刺は誰も寄せ付けない。信奉者達は側に近づきたくとも近寄れず、彼女の行動を見守りつつも、視界に入らぬよう常に気を配る。独りで行動する彼女をやっかむ者は、その人形のように整った容姿を氷の薔薇と呼ぶ。彼女からしてみれば、特に冷たいそぶりをしているつもりはなく、一方的に向けられる好意を断っているだけなのだが、艶のある見た目に反して、男性的なさばさばした口調や性格とのギャップに隠れファンも多いようだ。
「クレッセリア殿。」
周囲を気にせず、ズカズカと近づき、声を掛けるサーバス。周囲の無言のプレッシャーを気にもせず、話しかけるのは、流石の王族ならではの行動か。どよめきが広がる中、彼女の手の内の開いたままの読みかけの書籍をつまみ上げた。
「ん?何読んでるんだ?」
瞬間、青薔薇の眉間に皺が寄る。
「お調子者か。」
「先日はどうも、戦団長殿。模擬戦本番は、勝たせてもらいますよ。」
王立学院祭を間近に準備中の学内では、セッティング確認のテスト模擬戦が行われたばかりだ。確認が目的のため、段取り通り仮勝者はクレッセリアの陣営。テストとはいえ、サーバスの負けず嫌いが言葉となって現れた。だが、彼女は挑発には乗らずに黙って睨むように見つめるだけだ。
「これは、恋愛小説か?」
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「返せ。私が何を読もうが貴様には関係ないだろう。」
クレッセリアは返せとばかりに手を伸ばす。
「………そうだな。悪かった邪魔をして。」
サーバスがその手に古い本を返し、踵を返した。
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