底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

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アレクシス様と二人きり

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「間違っている?なぜそう思う」

その質問については簡単に答えられますが、それによって私はピンチになります。

「殿下、わた……婚約者様は火災に巻き込まれて亡くなったと聞き及んでいます。つまり殿下が彼女を殺したと言うのは間違っています」
「同じ事だよ。直接で無かろうと、彼女の死の原因は私に有るのだから」
「では殿下は、彼女をその場に行くように仕向けたのですか?そこに行くと決めたのは婚約者様自身です。殿下が気に病む事は何一つありません」
「君は彼女が悪いと言うのか!」

アレクシス様に胸ぐらを掴まれ、締め上げられました。
ごほん、ごほん。
まあ手加減してくれたみたいで、苦しいわけじゃ無かったけれど。
でも私、そのままじっと殿下に睨みつけられています。
じーーー。
やっぱりアレクシス様ってばイケメン。

「それに、婚約者様は殿下の幸せを願って。殿下が真に愛するコリアンヌ様と結ばれるように身を引いたのです。それを未だに殿下がそんな様子では、死んだ方が報われません」
「私なんてどうだっていい、ただ…エレオノーラが………」

彼女は二度と私の元には戻らない。
そんなように聞こえたけれど、まあそれに関しては同意します。

「とにかく殿下は、元婚約者様の為にも、コリアンヌ姫様と早くご結婚するべきです」
「あんなものと結婚する気はさらさら無い」
「あんなもの?あの…コリアンヌ様と喧嘩されたんですか?」
「喧嘩をするまでもない。君は、好きでも無い奴と結婚できると思うか?」

いえ、したくありません。
ですが時と場合によってはせざるおえない時も有ります。

「私を含め、だれ一人、私とコリアンヌとの結婚など望んでいない」

やっぱり何かあったんですね。
その喧嘩の原因が私だったら、非常に困るんですが。

「ですが、コリアンヌ様はアレクシス様との結婚を望んでいましたよね」
「ばかばかしい、私は彼女に対し恋愛感情などはなから持っていなかった。どこをどう取ればそういう話になるんだ。私の心には、6歳のパーティーの時から、エレオノーラしかいないんだ」
「うそ!」
「嘘?なぜ君がそう思う」
「なぜ?…と言われましても、その…あれ、あれですよ、あー、噂、噂です。噂でそう聞きました」

あっぶね、とっさに誤魔化したけれど、セーフだよね?

「そんなもの。誰も私の思いを分かってくれないんだ。彼女の素晴らしさなど誰も知ろうとしない。ただ、あった事を都合良く捻じ曲げ、面白おかしく広げていくだけだ。あぁ、エレオノーラ……」

何なんでしょうねこの人は。
曲解?自責?いえそれより、いじけている様にも見える。
過ぎた事をそんなにクヨクヨ考えても仕方ないじゃん。
確かに反省とか、過去を悔やむのは悪い事じゃないよ。
でも限度と言うものが有ります。
アレクシス様、もっとしっかりと未来を見つめ、ポジティブに生きようよ。

………………。
………………。
………………。

あぁ、また始めちゃったよ。
もうそろそろ帰ってもいいですか?

「君は…エレオノーラに似ているんだ」

!!!

「わ、私は男です」

やっぱり危ない扉を開けてしまったとか………。

「あぁすまない。容姿ではなく雰囲気と言うか……いや、彼女とよく似たその髪の色が彼女を思わせるのかもしれない」
「はあ………」
「彼女と初めて会った時は、彼女はとても小さく可愛いかった。私はそんな彼女に惹かれ忘れられなくなった。それから10年以上経って、ようやく再び彼女に会う事が出来た。彼女は相変わらず可愛かった。いや、美しくなっていた………」

誰の話をしてるんですか?

「ほかの皆は、彼女の容姿を認めてくれなかったが、私にとって彼女は最初と何ら変わりは無かった。彼女が結婚を承諾してくれて、私は天にも昇る気持ちだったのだ………それをあの女が!!!」

アレクシス様の顔は、とても苦しそうで辛そうで、怒りに満ちていた。
あの~私は結婚を承諾した覚えがありませんが、そう言えば、巷では私の事は婚約者になっていたっけ。
なんか人生って不条理だ。
だけど、それってつまり、アレクシス様はコリアンヌ様と結婚したくは無いって事?
いやむしろ嫌い?恨んでいる?
それならコリアンヌ様は、なぜあんなこと言ったの?
訳が分かりません。


「エルちゃん無事!!?」

勢いよく扉を開け、隊長が飛び込んできました。

「ミラ姉様、ええ、無事ですよ」

胸ぐら掴まれましたけど。

「全く、フランツがなかなか放してくれなくて」
「そ、それは…私の事など気に掛けず、もっとゆっくりなさってもいいんですよ」
「そんな事する訳ないじゃない。私はエルちゃんがいちばぁ~ん好きなんだから」
「ありがとう…ございます。ミラ姉様、そろそろ出発の用意をしなくてはなりませんね」
「ええ、早く戻りましょう?」

隊長に手を引かれ、部屋に向かう。
あっ……。
私は振り向き、こちらをじっと見つめていたアレクシス様と目が合った。

「アレクシス様、ご無礼いたしました。もうお会いする事も無いでしょうが、どうぞお体に気を付けて、お元気で」

そう言い礼をとる。
それを聞いたアレクシス様が、目を見開いたような気がしたけれど、私目が悪いからなぁ。



「さてエルドレット君、もう一つの約束です。あなたへの力添えですが、メイドを一人付けさせていただくか、この石を所持していただくか。どちらがよろしいですか?」
「石で」

シャインブルク様の息が掛かったメイドを近くに置くなど、そそっかしい私の情報があなたに駄々洩れになるって事でしょう?
だったら石をもらう一択でしょう?

「おや残念ですね。彼女は腕も経つし、機転も聞く。あなたのいいサポーターになると思ったのですがね」
「自分の事は自分でやる主義なので」
「なるほど、ではこちらの石を」

そう差し出されたものは、小石ほどある赤く透き通った綺麗な石。
その中心には、複雑な模様が描かれていた。

「綺麗な石ですね。もしこれが本物の石だったなら、ものすごく高価なんでしょうね」
「まあ。これは最近開発された小型の通信用魔道具なんですよ。本物の宝石を加工した物ですが、宝石元々の価値よりはるかに高価な物です」

ほんもの!?その本物よりかなり高価!?
だったらこれ、とんでもない品物でしょう。
だって私は知っている。
ショーウインドウの中で、これよりずっと小さな石の前に、0が幾つも付いた値札が置いてあった事を。

「使い方はルドミラに聞いて下さい」
「いりません!」
「……なぜ?値が張るから?しかしあなたは私の願いを了承したのですよ?ならばその約束は守らなければね」

そして彼はクックックッといかにも楽しそうに笑う。
なんか悪戯を楽しんでいるように見える。
この人の考えが分からないわー。
そう言えば隊長は、この人には逆らうだけ無駄みたいな事を言っていたっけ。

「分かりました。有り難くいただいておきますって、あっと、これは貰えるのですか?それとも借りておくだけ?」

途端にシャインブルク様が、ブッ!と噴出した。

「君は本当にユニークな方ですね。とても魅力的だ。ただしルドミラの次にね。それに付いては差し上げてもいいし、もし必要が無ければ、全てが片付いた後に返していただいてもかまいませんよ。あなたの気持ちに任せます」

ただ疑問を言っただけなのに、何も笑わなくてもいいじゃない。
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