あなたは僕の運命の番 出会えた奇跡に祝福を

羽兎里

文字の大きさ
38 / 74

決着に向けて 2

しおりを挟む
「シルビア、起きてる?」

背中に彼の体温を感じ、ウトウトし掛けていた。
ここ何か月、色々な事が有り過ぎた。
それでも、自分が正しいと信じた事。
それに伴った必要な事は全て完璧にこなしてきたつもりだ。
たとえそれが、結果的に報われなかったとしても、自分で決めて行動した事だ。
後悔などはしない。してはいけない。
だけどさすがに疲れたわ。

マシューの事は、ほぼ決着がついたと判断した私は、久々に休息を取る事にした。

「ん、何?」

私は体の向きを変え、イアンの温かい胸にすり寄る。
もうエリックを取り戻すことはできない。それは決定した。
後は明日ランセルと会って彼の知っている話を聞き、まだ私の持っていないピースを埋めるだけ。
それですべてが終わる。
いえ、まだやらなればならない後始末はかなり残されていたわね。
ライザー家の残債。
残っている社員を含め、全てきれいな形に納めなければ。

今回、一連の事を大掛かりに短時間で調べるにあたって、かなりの費用が要った。
それでも私は、エリックを取り戻したかった。

過去、ライザー家の周りのαは、エリックがΩだと知った途端手の平を反すように蔑むようになった。
それは今まで何も知らず、エリックを可愛がってきた兄弟にも強要された。
まるで洗脳のようだった。
少しでもエリックと遊んだり、優しくするだけで自分にまで非難が及ぶ。
結果、弟たちは他のαと同様に、エリックを見下すようになった。
でも私はどうしてもそれが納得できない。
“なぜ?兄弟でしょう。今まで仲よく遊んでいて、それを良しとしてきたじゃない。
それがΩだったからって遊んじゃいけないの?親しくしてもいけないの?
αって、Ωって何、同じ人間なのに。Ωが悪い事をしたの?”
そう思って反発していたけれど、結局は圧力に屈服してしまった。
負けたのだ。
だけど、私はエリックに暴言など吐きたくない。
だから、無視することにした。
そうすれば、エリックを罵ったり暴力を加えずに済む。
そして、周りのαの圧力から自分を守れる。
それが、若かった自分のできる精一杯の判断だった。

しかし、今は違う。
今の私にはある程度の地位や財産も有る。
他人に余計な事は言わせない。

でも、それは手遅れだったのね。
今の私の周りには、誰もいなくなってしまった。
さみしい、空しい。
でもやらなければならない問題は山積だ。
お父様達の残債や何やらで、色々調べていくうちに、いなくなったエリックの影がチラホラと浮かんで来た。
そして、私は夢中になって調べた。
頭をフル回転させ、自分の会社の株を手放してまで資金を調達してまで、その影を追った。
そしてだんだんその影は、形となって浮かび上がって来る。
その周りの背景と共に。
そしてそれが徐々に一つのパズルを形成していく。
足りないピースはまだ少しあるが、
そこにははっきりと、エリックの姿が映し出された。

いたわ!エリック。

私はまたエリックに会える。
それからまた、かなりの資金を使い、どうすればエリックを取り戻せるか情報を集めた。


それが今は、徒労に終わってしまったけれど。
でも、後悔をしてはいけない。
私は自分で決めた事をしてきたんだもの。
取り合えず、後始末を含め、かなりの会社の株を手放しはしたけれど、
それでも代表を名乗れるぐらいは残っているはず。
でも、ライザーの後始末で、全てを手放すかも……。
まあ、その時はその時。また一から始めればいいわ。
努力し、頑張れば、何とかなるはずよ。
でもその時は、イアンとは別れなければならないでしょうね。

「シルビア…。すまなかった。」

「いいの。すべて私が判断し、動いた結果だもの。
あなたは私がライザーの件に掛かり切りになっている間、
私の会社の事を、全て管理していてくれた。感謝しているわ。」

「だけど、私の知っていることを教えていれば、こんなにダメージは受けなかったはずだ。」

「だって、それはルール違反でしょ。
あなたはギラン側の人間。よく分かっているわ。
それでも私はあなたの傍に居たかったの。だからいいの。もう終わった事よ。」

そして全てが終わった後も、あなたは此処に居てくれる。
それって、ギランの命令?
それとも、少しは私に未練を持っているって、思っていいの?

「今回の事で、思い知った。
シルビア、私はもう現状のままでいることが出来ない。辛いんだ。」

そうよね…。その気持ちはよく分かるわ。
でも少しでも長く、あなたの傍に居たかったから、
あえてこの話題には触れないようにしていたの。
ずるい女よね、私って。
だけど、もう決着を付けなければいけないのね。
また私の傍から愛する人が離れていく…。

「これは、前から考えていた事なんだけど、辞めようと思うんだ。」

何を?単刀直入に言ってくれないと分からないわ…。
それはこのお付き合いの事?それとも私の会社のサポート?

「私はβだ。だから私の方からこんな事を言うのは烏滸がましいかも知れない。
でもね、よく考えて出した結論なんだ。もしシルビアさえ許してくれるなら……。」

「αだβだなんて関係ないわ。あなたはあなた。
あなたが自分で考えて出した結論ならば、それを尊重すべきよ。」

「そう言ってもらえると、嬉しいよ。」

そう言って私にキスをする。
そのキスはどういう意味なのだろう。

「私にできる事が有れば言って、他ならぬあなたの為ですもの、何でも協力するわ。」

「本当かい?それは心強い言葉だね。
実は君にしかできないことが有るんだが…、了承してもらえると、凄く嬉しい。」

嬉しい?助かるのではなく?
イアンは、私に回した腕に力を込めた。
まるで私を逃がさないとでも言うように。

「聞いてくれるかい?俺が立てた計画を。」

「いいわ。話して。」

あまり聞きたくはないけれど、今まで私を支えてくれ事への、せめてもの誠意だ。
これからの彼の力に、少しでもならなければ。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

回帰したシリルの見る夢は

riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。 しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。 嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。 執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語! 執着アルファ×回帰オメガ 本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます。 物語お楽しみいただけたら幸いです。 *** 2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました! 応援してくれた皆様のお陰です。 ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!! ☆☆☆ 2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!! 応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。

運命だなんて言うのなら

riiko
BL
気が付いたら男に組み敷かれていた。 「番、運命、オメガ」意味のわからない単語を話す男を前に、自分がいったいどこの誰なのか何一つ思い出せなかった。 ここは、男女の他に三つの性が存在する世界。 常識がまったく違う世界観に戸惑うも、愛情を与えてくれる男と一緒に過ごし愛をはぐくむ。この環境を素直に受け入れてきた時、過去におこした過ちを思い出し……。 ☆記憶喪失オメガバース☆ 主人公はオメガバースの世界を知らない(記憶がない)ので、物語の中で説明も入ります。オメガバース初心者の方でもご安心くださいませ。 運命をみつけたアルファ×記憶をなくしたオメガ 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

処理中です...