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番外編 ベンジャミン 2
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「結婚!?何馬鹿なこと言っているんだよ。」
「はは、信じられないよね。僕が結婚なんてさ。」
「……誰なんだよ。」
「え?」
「相手だよ、結婚相手。」
「マティアス・ワロキエ様。知ってる?」
知ってるさ、この地方の有力者だ。知らない奴の方が少ないだろう。
「僕がΩでもいいんだって。こんな僕でも貰ってくれるって。
たとえ運命の番でなくてもいいって言ってくれたんだ。
僕さ、家では何の役にも立っていなくてさ、いつも何かしなくちゃって思っていたけど、
これでやっとお父様達の役に立つみたい。」
Ωだからいいの言い間違いだろう。αなら従順なΩを欲しがるものだ。
本当のお前の良さを知らない、上っ面しか見ないような奴にとって、お前は理想的な相手に映ったのだろう。
「何だよそれ、お前そんな理由で結婚するのかよ。
お前の気持ちはどうなんだよ。
もっと自分を大事にしろよ。」
そんな、あからさまな政略結婚。
ワロキエだって、好んでお前を欲しいって言っている訳じゃないだろう。
「断っちまえよ、そんな話。」
「ダメだよ、もう決まった事だもの。」
「あと5年、いや、3年待てないか。」
「ダメだと思う。もう結婚式の日取りまで決まっているから。」
くそっ!俺がちゃんと確固たる足場を固めて、お前を迎えに行きたかったのに。
「……、なあ、俺が逃がしてやろうか。」
二人で逃げて、しばらく暮らせるぐらいの金なら有る。
その間に仕事を見つけてこいつを養うために、死に物狂いで働くぐらい、俺にとって何の苦にもならない。
「何で?」
「だって、お前無理やり家の為に結婚するんだろ。」
「そんなことないよ。
マティアス様優しいし、何より役立たずの僕が、家の為になるんだからすごくうれしいよ。」
馬鹿かこいつ。
「今度の日曜は、マティアス様と出かける約束なんだ。」
「お前、本当に嫌じゃないのか?」
「ないよ。」
そう言って屈託のない顔で笑うエリック。
だめだ、こいつはもう決めている。
こういう顔の時のこいつはもう翻らない。
「そうか…、幸せになれよ。」
「ありがとう。」
俺はそう言うしかなかった。
完敗だ。
俺がもう少し早く、行動に移せばよかった。
大学を卒業したら申し込もうなんてのんきな事、思わなければよかった。
そうすればマティアスとの話が出る前に、こいつに申し込んで、
二人の家にも認めてもらえたかもしれないのに。
そんなこんなと有って、俺達は卒業し、俺は大学の事も有り、エリックともあまり連絡を取らなくなっていた。
ところがある日新聞を見ると、マティアス・ワロキエに運命の番が見つかった事が報じられている。
その記事の番の名はエリックでは無く他の名前が載っていた。
『マティアス・ワロキエ氏に運命の番現る。
……………元婚約者エリック・ライザーとの式直前に出会った二人は、まさに運命の出会いを果たした。
……………「どこかでシャルルの存在を感じていたのだと思います。今はただ神に感謝するのみです。」そう語るワロキエ氏、二人はまさにお似合いの番となられた。
本当に、元婚約者と式を挙げる前に出会えて良かったですね。
式を挙げた後ではいろいろな問題が起きるところでした。…………』
いかにも美談か、お伽噺のように書かれていた記事に、俺は激怒した。
何だよこれ‼
エリックは一体どうしたんだよ。
確認すると、二人が会ったのはこの新聞発行の2週間も前だという。
「バカヤロウ‼」
俺は慌てて家を飛び出した。
エリックの家に着いた俺はチャイムを連打した。
中から出てきた執事にエリックの事を問いただす。
「申し訳ございません、エリック様は今ご不在でして……。」
「彼はどこにいるんですか?会いたいんです。」
会ってどうするつもりだ?
…決まってる。奴はきっと落ち込んでいるはずだ、慰めてやらなくては。
下心が無い訳では無いが彼を慰めたい。
今の俺には心配する気持ちの方が勝っていた。
すると後ろから男性が二人現れた。
「失礼します。先日ご依頼が有りましたエリック君失踪の件について伺いたいことがございまして…。」
エリックが失踪?
エリックは失踪しているのか?行方不明なのか?
「すいません、一体エリックはどうしたんですか?此処には居ないんですか!?」
「大変申し訳ございません、詳しいお話は出来かねまして…。これから警察の方とのお話も有ります。申し訳ございませんが、お引き取り願えますでしょうか。」
俺は引き下がるよりなかった。
だが、諦めない。また来る。
そして俺自身も出来る限り調べてみよう。
それから何度か彼の家に足を運んだが、これと言った成果は得られなかった。
地方の知り合いにも写真を送り聞いてもらったが知っている奴は現れなかった。
俺自身も大学の合間、時間が出来れば宛もなく写真を持って出歩き、見かけた人がいないか聞きまわった。
地方の新聞も取るようにした。
何か情報が無いか、小さな記事まで隅から隅まで読む。
死亡欄や身元不明者の記事も辛いが逃さず読み、該当しないと胸をなでおろす。
そんなΩの事など放っておけと、あきれられたが、諦めきれない。
俺はエリックを見つけ出す。
たとえ何年かかろうとも。
「はは、信じられないよね。僕が結婚なんてさ。」
「……誰なんだよ。」
「え?」
「相手だよ、結婚相手。」
「マティアス・ワロキエ様。知ってる?」
知ってるさ、この地方の有力者だ。知らない奴の方が少ないだろう。
「僕がΩでもいいんだって。こんな僕でも貰ってくれるって。
たとえ運命の番でなくてもいいって言ってくれたんだ。
僕さ、家では何の役にも立っていなくてさ、いつも何かしなくちゃって思っていたけど、
これでやっとお父様達の役に立つみたい。」
Ωだからいいの言い間違いだろう。αなら従順なΩを欲しがるものだ。
本当のお前の良さを知らない、上っ面しか見ないような奴にとって、お前は理想的な相手に映ったのだろう。
「何だよそれ、お前そんな理由で結婚するのかよ。
お前の気持ちはどうなんだよ。
もっと自分を大事にしろよ。」
そんな、あからさまな政略結婚。
ワロキエだって、好んでお前を欲しいって言っている訳じゃないだろう。
「断っちまえよ、そんな話。」
「ダメだよ、もう決まった事だもの。」
「あと5年、いや、3年待てないか。」
「ダメだと思う。もう結婚式の日取りまで決まっているから。」
くそっ!俺がちゃんと確固たる足場を固めて、お前を迎えに行きたかったのに。
「……、なあ、俺が逃がしてやろうか。」
二人で逃げて、しばらく暮らせるぐらいの金なら有る。
その間に仕事を見つけてこいつを養うために、死に物狂いで働くぐらい、俺にとって何の苦にもならない。
「何で?」
「だって、お前無理やり家の為に結婚するんだろ。」
「そんなことないよ。
マティアス様優しいし、何より役立たずの僕が、家の為になるんだからすごくうれしいよ。」
馬鹿かこいつ。
「今度の日曜は、マティアス様と出かける約束なんだ。」
「お前、本当に嫌じゃないのか?」
「ないよ。」
そう言って屈託のない顔で笑うエリック。
だめだ、こいつはもう決めている。
こういう顔の時のこいつはもう翻らない。
「そうか…、幸せになれよ。」
「ありがとう。」
俺はそう言うしかなかった。
完敗だ。
俺がもう少し早く、行動に移せばよかった。
大学を卒業したら申し込もうなんてのんきな事、思わなければよかった。
そうすればマティアスとの話が出る前に、こいつに申し込んで、
二人の家にも認めてもらえたかもしれないのに。
そんなこんなと有って、俺達は卒業し、俺は大学の事も有り、エリックともあまり連絡を取らなくなっていた。
ところがある日新聞を見ると、マティアス・ワロキエに運命の番が見つかった事が報じられている。
その記事の番の名はエリックでは無く他の名前が載っていた。
『マティアス・ワロキエ氏に運命の番現る。
……………元婚約者エリック・ライザーとの式直前に出会った二人は、まさに運命の出会いを果たした。
……………「どこかでシャルルの存在を感じていたのだと思います。今はただ神に感謝するのみです。」そう語るワロキエ氏、二人はまさにお似合いの番となられた。
本当に、元婚約者と式を挙げる前に出会えて良かったですね。
式を挙げた後ではいろいろな問題が起きるところでした。…………』
いかにも美談か、お伽噺のように書かれていた記事に、俺は激怒した。
何だよこれ‼
エリックは一体どうしたんだよ。
確認すると、二人が会ったのはこの新聞発行の2週間も前だという。
「バカヤロウ‼」
俺は慌てて家を飛び出した。
エリックの家に着いた俺はチャイムを連打した。
中から出てきた執事にエリックの事を問いただす。
「申し訳ございません、エリック様は今ご不在でして……。」
「彼はどこにいるんですか?会いたいんです。」
会ってどうするつもりだ?
…決まってる。奴はきっと落ち込んでいるはずだ、慰めてやらなくては。
下心が無い訳では無いが彼を慰めたい。
今の俺には心配する気持ちの方が勝っていた。
すると後ろから男性が二人現れた。
「失礼します。先日ご依頼が有りましたエリック君失踪の件について伺いたいことがございまして…。」
エリックが失踪?
エリックは失踪しているのか?行方不明なのか?
「すいません、一体エリックはどうしたんですか?此処には居ないんですか!?」
「大変申し訳ございません、詳しいお話は出来かねまして…。これから警察の方とのお話も有ります。申し訳ございませんが、お引き取り願えますでしょうか。」
俺は引き下がるよりなかった。
だが、諦めない。また来る。
そして俺自身も出来る限り調べてみよう。
それから何度か彼の家に足を運んだが、これと言った成果は得られなかった。
地方の知り合いにも写真を送り聞いてもらったが知っている奴は現れなかった。
俺自身も大学の合間、時間が出来れば宛もなく写真を持って出歩き、見かけた人がいないか聞きまわった。
地方の新聞も取るようにした。
何か情報が無いか、小さな記事まで隅から隅まで読む。
死亡欄や身元不明者の記事も辛いが逃さず読み、該当しないと胸をなでおろす。
そんなΩの事など放っておけと、あきれられたが、諦めきれない。
俺はエリックを見つけ出す。
たとえ何年かかろうとも。
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