【完結】無関心アルファと偽りの番関係を結んだら、抱かれないうちに壊れ始めました

第4章

21＊

『さっきまでどうしてた？』
「……前、弄って……でも、急にいけなくなった」
『そっか。後ろは触んないの？』
「後ろは、怖くて、したことない」

　何を馬鹿正直に答えているんだろう。
　やめろと脳内でもう一人の自分が止めているのに、甘やかすような声に惑わされる。

『じゃあ俺の手だと思って触ってみな』
「藤城の？」
『そ。ほら、ゆっくり後ろに触れてみて』

　未紘は徐おもむろにうつ伏せになると、尻だけを上げる体勢をとった。こんな姿を他人に見られたら、恥ずかしくて死ぬかもしれない。
　下から腕を回して、おそるおそる後孔に指を近付けていく。

　藤城だったらどんな風にここに触れるんだろう。きっと少しずつ焦らしながら、ゆっくりと手を伸ばして──。

「……っぅあ、なにこれ……」

　ほんのわずかに指が当たった瞬間に、ぴりっと全身に電流が走るような感覚に襲われた。
　一度も触れていなかったのに後孔の周りはぐっしょりと濡れているようだ。指に粘ついた分泌液が纏わりつく。

『指濡らしたら、ナカに一本挿れて』
「ん……」

　もう恐怖心はほとんどなかった。中指を入口に突き立てると、ぷつっと孔を突き破って中に侵入する。
　たっぷり濡れていたからか、痛みは全くなかった。腸壁がきつく指に纏わりついて、ぞくぞくと背中に熱が駆け上がる。

『挿れたら少し馴染ませてから、上の方をトントンってしながら探ってみな』
「っ、わかった」

　藤城に言われた通りに指を動かすのに集中する。抜き差しはせずに確認するように中で指を動かすと、ある一点に触れたときに唐突に下腹がきゅっと縮んだ。

「あっ……なんか、いま……」
『見つけた？　そこ重点的に弄ってみ』
「や、むり……んっ、あ、ああっ」

　ぐりっとそこを捏ねた瞬間、強すぎる快感が込み上げた。びくびくと身体を反らしながらいとも簡単に絶頂に誘われる。

　くたりと頬をシーツにくっつけて、目を白黒させながら息を整えた。

（嘘だろ。前も触ってないのに、こんなに簡単に……？）

　散々イけないと喚いていたのが嘘のようだ。頭が熱でぼんやりする。
　余韻のせいか、まだ中に入ったままの指が勝手にきゅうっと締め付けられて、再び小さく声を漏らした。

『もしかしてイっちゃった？』
「……ん、あっ、んう、はあっ」
『ねえ聞いてるんだけど。勝手に気持ちよくなるなよ』
「あっ、イった、ん、ゆび、きもち……」

　どこかで呼ばれているような気がするが、過ぎる快感が思考を奪う。
　熱は引かずに込み上げるばかりだ。堪え切れずに中をぐりぐりと動かしながら、次第に抜き差しも始めてみる。

　二本に増やした指で腸壁を擦り上げ、快感を喰らうことだけにのめり込んだ。

　藤城の指は華奢だけど俺のよりも長かった。あの指を挿れられたら、もっと奥まで届くのだろうか。

　きゅうっと奥が切なく疼くのがわかる。何故だか無性に藤城の顔が見たくなって、縋るようにスマホに擦り寄った。

「んっ、藤城、さみし……っ」

　頭がうまく働かなくて、自分が何を口走ったのかもよくわからない。
　ついさっきまで閉じていたはずの自分の尻から、はしたない水音が聞こえてくる。
　
『……おまえさ、わざとやってんならタチ悪いよ』
「ぅあ、んっ、なにが……はっ、ふじしろ、もっと……あっ、んぅ』
『………………はあ』

　呆れ混じりのため息がスマホを通して聞こえた。それでも中を擦る手を止めることはない。
　うつ伏せでいるせいで、シーツに陰茎が擦れるのが気持ちいい。腰を前後に動かしながら、前でも後ろでも欲を貪った。

「あっ、う、またイく……っ」

　限界まで自分を高め、びくびくと熱を発散した。全力で走った後のような汗と息切れが止まらない。
　独特の倦怠感に襲われ、口を半開きにしたままシーツにぐったりと沈み込む。

『……生殺しかよ』

　意識が飲み込まれる直前、スピーカー越しにそんな声が聞こえたような気がした。