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聖女の本当の姿
しおりを挟む「何故、ここまでするの・・・」
国を守り導いてきたつもりだった、皆を慈しみ愛してきた。特に婚約者だった青年はレティシアにとって大切な人だったのに、彼に望まれていたのは死。何が神託だ、何が神の加護だ、そんなものいままで何も役に立たなかったではないか。
疑うことを許されない身。誰にでも救いをもたらす存在、それの裏をかかれてあの異世界の少女に何もかもを裏切られた。自分を守ってくれると約束してくれた護衛騎士や協会のシスター、司祭達が無事かどうかも何も分からぬままここに投げ出された。
そして、今魔物も住まう森に1人取り残され、殺気を放つ暗殺者を3人もレティシアにつかせ隙を見て殺すつもりなのだ。
「普通なら、聖女ならここで泣くんですよね」
フフッと密かに笑みを零す。誰もが勘違いをしている、聖女は神殿でただ守られ来た存在ではない。
きたる時国を脅威から、魔族から守る聖なる力を神から託されているのだから。
ーーーまぁ、国は私なしで大丈夫みたいね
ため息を吐いてレティシアは重い腰を上げ立ち上がろうとすると足に激痛が走り僅かにふらついた。体の節々が痛むのは追放され馬車に乗り込む時にあの悠里とやらに突き飛ばされたからか、それとも馬車の男に乱暴に降ろされたからか。真っ白だった聖女の礼装も所々血が滲み泥まみれだ。
だが、それを気にしている暇はない。
好機を待ちわびていた暗殺者がゆっくり背後から喉元を掻き切ろうと歩み寄ってきている。レティシアが戦うことも自分を守ることも出来ないと鷹を括って。
「か弱い女を背後から襲うだなんて」
暗殺者はすぐ背後まで迫り素早くレティシアの喉元にナイフを突きつけ思い切り引き抜いた、筈だった。
ーーーーおかしい!何かがおかしい!
今確かに金髪の女、元聖女の喉元を描き切った感覚があった暗殺者ケビンは困惑していた。王国の王太子と新たな聖女に頼まれあまりにも恐れ多い暗殺だが多額の報酬に目が眩みあっさり承諾したことが間違いだったのか!背後から奇襲すればか弱い女などすぐ殺れる筈だった、いや殺った筈だったのだ。仕留め損なったことなど1度もない、これまで様々な依頼を受け国のお偉いさんや帝国の最強騎士と呼ばれた男だって苦戦することも無く暗殺し凄腕の暗殺者と名高いケビンが、1人のか弱い元聖女だった女の暗殺をしくじるなんて有り得ないことだった。それは後ろに控えてた他の暗殺者も同様だ。殺し損ねた女は突然目の前から陽炎に消え気配さえも消えてしまったのだ。生まれて初めて焦りを知ったケビンは元聖女がまだこの近くにいると感じ後ろを振り向こうとした時、すぐ背後から酷く澄んだ女の声が聞こえた。
「こんにちは暗殺者さん私を殺しに来たの?」
誰もいなかった背後に、あの元聖女が恐ろしい程の笑み浮かべて立っていた。肩に置かれた真っ白い手、薄暗く煌めく暗い紫の瞳、人形のように美しいのに鳥肌がたつほど恐ろしい。ハッハッと息が自然と上がり体が震え出した。ゆっくり肩に置かれた手がケビンの首に添えられた瞬間女は耳元で囁いた。
「ここで私に殺されるか、国に戻り飼い主に依頼は失敗したと正直に吐き良くて牢獄悪くて処刑されるかどちらがお好みかしら・・・ね」
ーーー今逃げなければ、間違いなく俺たちが殺られる!
女神のように美しい女に囁かれた3人は余りの恐怖に脱兎のごとく逃げ出した。
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