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ホムンクルス誕生
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「せ、成功か……!?」
微睡んでいるとどこからともなく興奮した声が聞こえてくる。何が成功したかどうかはわからないが、そんなことはどうでもいい。確か俺は一人で会社に残って仕事をしてたはずなんだが……。誰か会社に戻ってきたのかな。
ってか俺も寝てる場合じゃなかった。今日中にこのバグ修正しないと。ちょっとだけ休憩のつもりが寝てしまうとか。徐々に覚醒してきた意識とともに目を開ける。ぼんやりと視界に入るその景色は、まったく見覚えのないものだった。
「……えっ?」
冷たい台に寝かせられているようだが、どこなんだここは。仕事中にめまいがして、机に突っ伏してちょっと休憩しようとしたところまで記憶はある。
パソコンが置いてある職場とは違い、周囲にはよくわからない実験器具のようなものから、人形の手足のようなパーツが散らばっているのが見える。
「お、おおぉぉ……」
戸惑っていると、横からよくわからない感極まった声が聞こえてくる。顔をそちらに向けると、涙を流して感動する爺さんがいた。
「アフィーや……、ワシがわかるかい……?」
恐る恐る俺に向かって話しかけてくるが、アフィーって何のことだ。後ろを振り返ってみても壁があるだけだ。もしかしなくても俺のことなんだろうか。
「えーっと」
何と答えていいかわからずに言葉を濁してみるが、なんだか自分の声もおかしい。すげー甲高い子供っぽい声なんだが。
だが俺が発した声に、爺さんの表情がピクリと反応する。
「ほら……、ワシじゃよ。アフィーのおじいちゃんじゃよ」
俺のじいさんは十年以上前に亡くなってるんだが。というか俺はさっきまで会社で仕事をしていたはずなんだ。それがどうしてこうなった。全く身に覚えがないぞ。
不安そうに俺を伺う爺さんに、俺も不安になってくる。事情を聞きたいところだが嫌な予感しかしないのだ。しかしずっとこのままというわけにもいかない。俺にはこの爺さんに見覚えはないんだから。
「……どちら様でしょうか?」
意を決して言葉を発すると、案の定爺さんの表情が固まった。察するに、孫か何かに話しかけているような雰囲気だったからだ。事情が分からず孫の振りをするわけにもいかんし、変に期待をかけるのもダメだろう。
「……ほ、本当に覚えがないのかい?」
長い沈黙の後にかけられた言葉に、俺はゆっくりと頷く。爺さんは諦めた表情になり盛大な溜息を大きくつくと俺に向き直った。
「ははは……、そううまくはいかんか……。まぁ予想はしとったがの」
沈黙する爺さんに、今度は改めて自分の体を観察してみることにする。
「のわあっ!?」
なんじゃこりゃーーー!?
裸だった。それはもうすべてが丸見えだ。……いやそれはどうでもいい。全裸なんぞどうでもいい衝撃の事実が判明したのだ。爺さんからアフィーと呼ばれた名前からも分かる通り、この体の性別は女だったのだ。
微妙に膨らんだ胸に、息子のいない股間。何とも落ち着かない。息子がいないだけでこんなにも落ち着かないもんなのか。いや実際に俺に子供はいないので間違ってはいないが……。
「ふむ……。凶悪な人間じゃなくて安心したわい……」
慌てふためく俺の様子に、安堵の言葉を漏らす爺さん。凶悪ってなんだよ。まさか悪魔召喚をやって俺が現れたとか言うんじゃねぇだろうな。
「何が……どうなって……」
戸惑う俺に、正気に戻った爺さんが説明をしてくれた。
「まずはわしの名前はハワード・イグリス。お前さんはわしの孫娘じゃったアフィシアじゃ」
「だった……?」
過去形で話す爺さんに疑問を投げかけると、眉間にしわを寄せながらうなずいた。
「一年前にのぅ、娘が盗賊に襲われて殺されたんじゃ。一緒におったアフィーはそのまま攫われてしもうての……」
しばらく行方不明だった孫娘を探して二か月。ようやく見つけた盗賊のアジトで発見した孫娘は、酷い状態の遺体で発見されたらしい。それを国のホムンクルス研究所で働いていた爺さんが、体を修復してホムンクルスとして復活させたとのことだ。
「マジかよ……」
本来ホムンクルスはしゃべったりしないらしい。それを魂召喚の儀式でなんとか孫娘を生き返らせられないかと実験を行った結果が現在だということだ。
「じゃがもう安心してよいぞ。わしがアフィーの魔術領域をできうる限り拡張して、魔術も焼き込んでおいたからのぅ。じゃから盗賊なんぞに襲われても軽く返り討ちにできるわい」
爺さんの言葉にはマジでドン引きである。ラノベはよく読むほうだったが、爺さんから『魔術』という言葉を聞いてもまったくワクワクしてこない。自分の体をさらに見てみると継ぎはぎしたような跡があるし、そうすると周囲に転がってる人形のパーツと思ってたものはもしかすると……。
いやいや、変な想像するのはやめよう。なんか頭がくらくらしてきたし、怖すぎるから詳しく聞くのもやめておこう。それにあれだ……、きっとこれは夢なんだ。もうすぐしたら会社で目が覚めるはずだ。んで不具合修正の続きをやるんだ……。
こうして俺は爺さんのサイコパス具合に、少しだけ現実逃避するのだった。
微睡んでいるとどこからともなく興奮した声が聞こえてくる。何が成功したかどうかはわからないが、そんなことはどうでもいい。確か俺は一人で会社に残って仕事をしてたはずなんだが……。誰か会社に戻ってきたのかな。
ってか俺も寝てる場合じゃなかった。今日中にこのバグ修正しないと。ちょっとだけ休憩のつもりが寝てしまうとか。徐々に覚醒してきた意識とともに目を開ける。ぼんやりと視界に入るその景色は、まったく見覚えのないものだった。
「……えっ?」
冷たい台に寝かせられているようだが、どこなんだここは。仕事中にめまいがして、机に突っ伏してちょっと休憩しようとしたところまで記憶はある。
パソコンが置いてある職場とは違い、周囲にはよくわからない実験器具のようなものから、人形の手足のようなパーツが散らばっているのが見える。
「お、おおぉぉ……」
戸惑っていると、横からよくわからない感極まった声が聞こえてくる。顔をそちらに向けると、涙を流して感動する爺さんがいた。
「アフィーや……、ワシがわかるかい……?」
恐る恐る俺に向かって話しかけてくるが、アフィーって何のことだ。後ろを振り返ってみても壁があるだけだ。もしかしなくても俺のことなんだろうか。
「えーっと」
何と答えていいかわからずに言葉を濁してみるが、なんだか自分の声もおかしい。すげー甲高い子供っぽい声なんだが。
だが俺が発した声に、爺さんの表情がピクリと反応する。
「ほら……、ワシじゃよ。アフィーのおじいちゃんじゃよ」
俺のじいさんは十年以上前に亡くなってるんだが。というか俺はさっきまで会社で仕事をしていたはずなんだ。それがどうしてこうなった。全く身に覚えがないぞ。
不安そうに俺を伺う爺さんに、俺も不安になってくる。事情を聞きたいところだが嫌な予感しかしないのだ。しかしずっとこのままというわけにもいかない。俺にはこの爺さんに見覚えはないんだから。
「……どちら様でしょうか?」
意を決して言葉を発すると、案の定爺さんの表情が固まった。察するに、孫か何かに話しかけているような雰囲気だったからだ。事情が分からず孫の振りをするわけにもいかんし、変に期待をかけるのもダメだろう。
「……ほ、本当に覚えがないのかい?」
長い沈黙の後にかけられた言葉に、俺はゆっくりと頷く。爺さんは諦めた表情になり盛大な溜息を大きくつくと俺に向き直った。
「ははは……、そううまくはいかんか……。まぁ予想はしとったがの」
沈黙する爺さんに、今度は改めて自分の体を観察してみることにする。
「のわあっ!?」
なんじゃこりゃーーー!?
裸だった。それはもうすべてが丸見えだ。……いやそれはどうでもいい。全裸なんぞどうでもいい衝撃の事実が判明したのだ。爺さんからアフィーと呼ばれた名前からも分かる通り、この体の性別は女だったのだ。
微妙に膨らんだ胸に、息子のいない股間。何とも落ち着かない。息子がいないだけでこんなにも落ち着かないもんなのか。いや実際に俺に子供はいないので間違ってはいないが……。
「ふむ……。凶悪な人間じゃなくて安心したわい……」
慌てふためく俺の様子に、安堵の言葉を漏らす爺さん。凶悪ってなんだよ。まさか悪魔召喚をやって俺が現れたとか言うんじゃねぇだろうな。
「何が……どうなって……」
戸惑う俺に、正気に戻った爺さんが説明をしてくれた。
「まずはわしの名前はハワード・イグリス。お前さんはわしの孫娘じゃったアフィシアじゃ」
「だった……?」
過去形で話す爺さんに疑問を投げかけると、眉間にしわを寄せながらうなずいた。
「一年前にのぅ、娘が盗賊に襲われて殺されたんじゃ。一緒におったアフィーはそのまま攫われてしもうての……」
しばらく行方不明だった孫娘を探して二か月。ようやく見つけた盗賊のアジトで発見した孫娘は、酷い状態の遺体で発見されたらしい。それを国のホムンクルス研究所で働いていた爺さんが、体を修復してホムンクルスとして復活させたとのことだ。
「マジかよ……」
本来ホムンクルスはしゃべったりしないらしい。それを魂召喚の儀式でなんとか孫娘を生き返らせられないかと実験を行った結果が現在だということだ。
「じゃがもう安心してよいぞ。わしがアフィーの魔術領域をできうる限り拡張して、魔術も焼き込んでおいたからのぅ。じゃから盗賊なんぞに襲われても軽く返り討ちにできるわい」
爺さんの言葉にはマジでドン引きである。ラノベはよく読むほうだったが、爺さんから『魔術』という言葉を聞いてもまったくワクワクしてこない。自分の体をさらに見てみると継ぎはぎしたような跡があるし、そうすると周囲に転がってる人形のパーツと思ってたものはもしかすると……。
いやいや、変な想像するのはやめよう。なんか頭がくらくらしてきたし、怖すぎるから詳しく聞くのもやめておこう。それにあれだ……、きっとこれは夢なんだ。もうすぐしたら会社で目が覚めるはずだ。んで不具合修正の続きをやるんだ……。
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