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調査開始
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行方不明になったメイドは十五歳の見習いだったらしい。屋敷では仕事を教えてもらう立場で、買い物などの一人で屋敷の外に出る仕事はまだ任されていなかった。それは他のメイドからも証言が取れており、屋敷内で何かがあったと考えられる。
「うーん……、監禁されてるにしても、怪しい部屋はなかったんだよなぁ」
調査結果を思い出しながら、一通り案内された屋敷を思い浮かべる。どこかに隠し扉とかあるんだろうか。
「アフィシアさんは厨房をお願いしますね」
「わかりました」
翌朝になり早速仕事にとりかかる。まずは厨房で朝食の用意の手伝いらしい。専属の料理人がいるので、俺はひたすら補助へと回る。
「なかなか筋がいいじゃねぇか」
と専属料理人からお褒めの言葉をいただいた。
作る朝食の量としては特におかしなところはない。一人分増減したところで誤差の範囲内だし、そう気づけるものでもないけど。
「お、おい、大丈夫かよ」
配膳のために左腕にお皿を三枚乗せた俺を見て、料理人が慌てている。
「大丈夫ですよ。慣れてますから」
多少皿が重いが身体強化を使えば問題ない。そのまま隣の食堂まで料理を運び、姿勢が崩れないように優雅さを意識してテーブルへと並べていく。例え誰も見ていないとしても気を緩めてはいけない。
配膳が終われば朝食の始まりだ。俺たちメイドは壁際に立って給仕を行う。ここに集まっている男爵家の家族は、当主と長男の二人だけだ。夫人や他の兄弟たちは領地で生活しているという。
「アフィシアちゃんの作ってくれたスープ美味しいなぁ」
そしてちらちらと長男から向けられる視線が苦しい。なんとか顔に出さずには済んでいるが、これも仕事だし慣れないとダメだろう。
「あ、そうだ」
そして何かを思いついたらしく、こちらを向いた長男の顔には笑顔が浮かんでいる。俺にはすげー嫌な予感しかしないが。
「今度アフィシアちゃんと二人でご飯が食べたいなぁ」
その言葉にまたもや背中がぞわぞわとしてくる。俺としては絶対にお断りだが、貴族の要望はそうそう断れるものでもない。
「はは、ウェルネスはよっぽどアフィシアくんが気に入ったみたいだね」
当主である男爵様が微笑ましいものを見るかのように話に入ってくる。
「だけどもうちょっと、この屋敷での仕事を覚えてもらってからにしようか」
「わかりました。お父様」
諫める父親に見えなくもないが、結局はただの先延ばしである。否定はしてくれていないのだ。他のメイドの顔色も窺ってみるが、まるで能面みたいに無表情だ。
男爵家の朝食が終わった後は使用人たちでの朝食である。
「ウェルネス様も相変わらずですねー」
「ホントもう、何でなのかしらね?」
「……ウェルネス様ってどういう方なんですか?」
二人から長男への愚痴が出たことにこれ幸いと聞いてみる。
「あーっと、そうだね……」
「うーんと、小さい子どもが好きですねー」
言いにくそうに言葉を濁すコーデリアにかぶせて、ジェシーが間延びした声でストレートに告げる。その言葉はもう、ウェルネスの言動からくる俺の予想と完全一致していた。
「そ、そうなんですか……」
「あ、でも大丈夫よ。ウェルネス様も立場はわかってらっしゃるから」
「そうですねー。手を出してくることはないと思いますよー」
ドン引きする俺をフォローする言葉が出てくるけど、ホントかよ……。例の事件を調べに来ただけあって、ちょっと信じられない。部隊から支給されたダガーは太ももの内側に装備してるけど、出番がないことを祈るよ。
「……」
そんな俺たち三人を無言で見つめるアデリーさん。もしかするとアデリーさんが止めてくれるかもしれないとぼんやりと考える。会って間もないけど、なんとなく信じたい気持ちになっていた。
「さぁさぁ、食べたらまたお仕事ですよ!」
そして食べ終わったころ、アデリーさんの掛け声でみんな仕事に散っていくのだった。
「さてと、まずは建物の構造を把握しますか」
昼過ぎの休憩に入ったころ、俺は使用人用の部屋で精神を統一していた。それはもちろん魔術を使うためだ。今回は物体の構造を把握する魔術を使用するんだが、魔術領域の広い俺にかかれば広範囲に渡って調査が可能なのだ。
何せ発動中は調査結果が魔術領域に蓄積される仕様なのだから。
本来は鉱石や薬草の成分を調べたりする魔術『マテリアルサーチ』だ。一般的な効果範囲は手のひらに収まる程度らしい。精度を荒くすれば魔術領域の使用量も削減可能だが、焼き込まれた魔術ではそんな調整はできない。なので力技で行くのだ。
頭の片隅が活性化され、魔術が発動する。と、活性化された範囲が広がるようにして周囲の情報が入ってくる。
「あれ……? 地下室があるのか……?」
そして、さっそく隠し部屋らしき場所を見つけた。
「うーん……、監禁されてるにしても、怪しい部屋はなかったんだよなぁ」
調査結果を思い出しながら、一通り案内された屋敷を思い浮かべる。どこかに隠し扉とかあるんだろうか。
「アフィシアさんは厨房をお願いしますね」
「わかりました」
翌朝になり早速仕事にとりかかる。まずは厨房で朝食の用意の手伝いらしい。専属の料理人がいるので、俺はひたすら補助へと回る。
「なかなか筋がいいじゃねぇか」
と専属料理人からお褒めの言葉をいただいた。
作る朝食の量としては特におかしなところはない。一人分増減したところで誤差の範囲内だし、そう気づけるものでもないけど。
「お、おい、大丈夫かよ」
配膳のために左腕にお皿を三枚乗せた俺を見て、料理人が慌てている。
「大丈夫ですよ。慣れてますから」
多少皿が重いが身体強化を使えば問題ない。そのまま隣の食堂まで料理を運び、姿勢が崩れないように優雅さを意識してテーブルへと並べていく。例え誰も見ていないとしても気を緩めてはいけない。
配膳が終われば朝食の始まりだ。俺たちメイドは壁際に立って給仕を行う。ここに集まっている男爵家の家族は、当主と長男の二人だけだ。夫人や他の兄弟たちは領地で生活しているという。
「アフィシアちゃんの作ってくれたスープ美味しいなぁ」
そしてちらちらと長男から向けられる視線が苦しい。なんとか顔に出さずには済んでいるが、これも仕事だし慣れないとダメだろう。
「あ、そうだ」
そして何かを思いついたらしく、こちらを向いた長男の顔には笑顔が浮かんでいる。俺にはすげー嫌な予感しかしないが。
「今度アフィシアちゃんと二人でご飯が食べたいなぁ」
その言葉にまたもや背中がぞわぞわとしてくる。俺としては絶対にお断りだが、貴族の要望はそうそう断れるものでもない。
「はは、ウェルネスはよっぽどアフィシアくんが気に入ったみたいだね」
当主である男爵様が微笑ましいものを見るかのように話に入ってくる。
「だけどもうちょっと、この屋敷での仕事を覚えてもらってからにしようか」
「わかりました。お父様」
諫める父親に見えなくもないが、結局はただの先延ばしである。否定はしてくれていないのだ。他のメイドの顔色も窺ってみるが、まるで能面みたいに無表情だ。
男爵家の朝食が終わった後は使用人たちでの朝食である。
「ウェルネス様も相変わらずですねー」
「ホントもう、何でなのかしらね?」
「……ウェルネス様ってどういう方なんですか?」
二人から長男への愚痴が出たことにこれ幸いと聞いてみる。
「あーっと、そうだね……」
「うーんと、小さい子どもが好きですねー」
言いにくそうに言葉を濁すコーデリアにかぶせて、ジェシーが間延びした声でストレートに告げる。その言葉はもう、ウェルネスの言動からくる俺の予想と完全一致していた。
「そ、そうなんですか……」
「あ、でも大丈夫よ。ウェルネス様も立場はわかってらっしゃるから」
「そうですねー。手を出してくることはないと思いますよー」
ドン引きする俺をフォローする言葉が出てくるけど、ホントかよ……。例の事件を調べに来ただけあって、ちょっと信じられない。部隊から支給されたダガーは太ももの内側に装備してるけど、出番がないことを祈るよ。
「……」
そんな俺たち三人を無言で見つめるアデリーさん。もしかするとアデリーさんが止めてくれるかもしれないとぼんやりと考える。会って間もないけど、なんとなく信じたい気持ちになっていた。
「さぁさぁ、食べたらまたお仕事ですよ!」
そして食べ終わったころ、アデリーさんの掛け声でみんな仕事に散っていくのだった。
「さてと、まずは建物の構造を把握しますか」
昼過ぎの休憩に入ったころ、俺は使用人用の部屋で精神を統一していた。それはもちろん魔術を使うためだ。今回は物体の構造を把握する魔術を使用するんだが、魔術領域の広い俺にかかれば広範囲に渡って調査が可能なのだ。
何せ発動中は調査結果が魔術領域に蓄積される仕様なのだから。
本来は鉱石や薬草の成分を調べたりする魔術『マテリアルサーチ』だ。一般的な効果範囲は手のひらに収まる程度らしい。精度を荒くすれば魔術領域の使用量も削減可能だが、焼き込まれた魔術ではそんな調整はできない。なので力技で行くのだ。
頭の片隅が活性化され、魔術が発動する。と、活性化された範囲が広がるようにして周囲の情報が入ってくる。
「あれ……? 地下室があるのか……?」
そして、さっそく隠し部屋らしき場所を見つけた。
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