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本性
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一人、使用人用の三人部屋のベッドで横になっていると、部屋へと向かってくる足音が聞こえてくる。それに合わせて俺は周囲の空間を探査する『サーチ』の魔術を使用する。これは『マテリアルサーチ』と違い、探査した範囲の情報を一定時間で更新をかける機能が備わっている。その分精度は低いが。
「アデリーさん?」
探査した情報から人物を特定する。てっきり長男のウェルネスと思ったが違ったらしい。他の二人のメイドはまだ仕事中なので部屋にはいない。睡眠薬でぐっすり寝ているはずの俺を連れ出すために来たのはアデリーさんなのか。
できるだけ音をたてないように静かに扉が開かれると、案の定アデリーさんが入ってきた。
「……ちゃんと寝てるわね」
確認するように静かに呟くと、ゆっくりとかぶっていた布団をはがされる。アデリーさんは俺に睡眠薬を盛ったことを知っているのか。ウェルネスから守ってくれていると思っていたアデリーさんだったが違うのだろうか。見た目と違って『優しい』と思っていたのは自分の妄想だったのか。ちょっとショックだった。
そのまま横抱きされる形で持ち上げられ、部屋の外へと連れていかれる。屋敷を出ると、例の地下室へと続く隠し扉を開けて中に入っていった。
コツコツと階段を降りる音が聞こえる。そのままガシャンと鉄格子っぽい扉を開ける音が聞こえ、冷たい地面へと降ろされる。ごそごそと音が聞こえ、カチリと首に何かを取り付けられた。
なんだろうこれは……。気になるけど動くとバレてしまう。
「ふん、さっそく目を付けられるなんてホント災難だわ……。ウェルネス様に食べられちゃう前に私が可愛がってあげるから、ちょっと待ってなさいね」
そう言葉を残すと、鉄格子らしき扉に鍵をかける音を響かせてアデリーさんは去っていった。
「……マジか」
食べられるって……、ウェルネスもやっぱりそういう人間だったのか。いやそれよりも、アデリーさんの『可愛がってあげる』というのもどういうことなのか。調べに来たはずの自分が当事者になっていることも、動揺している一因になっている。
「――まさか」
そこで思い出されるのは副隊長のセリフだ。
『そう構えないで気楽にしてください。黒なのは間違いないので』
気楽にってことは失敗しようがないってことで、つまり俺が狙われる予想がついてたってことか? いやいや、さすがにそれは考えすぎか? でも副隊長ボルドルの胡散臭さを思い出してより一層疑惑を深める。ありえるかもしれない……と。
それにしてもこの首につけられたコレは何だ。ぺたぺたと触ってみるが、継ぎ目のようなものが見当たらない。……コレ取れないんじゃなかろうか。
ラノベでよくあるのは隷属の首輪とかそんなやつか。あとは魔術や行動を封じる系の拘束系か。動けるから身体機能は問題なさそうだ。あとはとりあえず『マテリアルサーチ』を首輪に使ってみる。
「普通に使えるな……」
素材は鉄がメインか。あとはミスリルが少々と、魔術式が刻み込まれた魔石か。
「さすがにどんな魔術式かまではマテリアルサーチじゃわかんないなぁ」
マテリアルサーチの魔術式をいじって改造できればできそうな気がするが、今はそんな時間はなさそうだ。諜報部隊に魔術に詳しい人間はいなかったし、自分で魔術式を改造しようという発想すらなかった。
詠唱と共に魔術式を魔術領域に構築し、それを実行すると魔術が発動すると教えてもらっただけだ。実行するにも意識を集中させる必要があるが、俺には構築の手間がないのだ。逆に、カスタマイズして構築することができないとも言えるが。
「ここから逃げてもいいけど、どうしようかな……」
目の前には鍵の掛かった鉄格子があるが、攻撃系魔術を使えば脱出することは簡単だろう。だけど直接俺に害が及んだわけじゃないから、衛兵に捕らえてもらうにはちょっと弱いかもしれない。結局ここにいなかったココルさんがどうなったかも聞きたいし。また来てくれるまで待つとしますか。
「あら、起きてたのね。無理しなくていいのに」
時刻は夜中だろうか。アデリーさんが地下室へと入ってきて、鉄格子の向こう側からこちらを見下ろしている。
「こ、ここはどこですか……?」
あくまでも怯えた芝居をして、相手が優勢だと思わせるように努める。人間余裕があるほうが、いろいろ喋ってくれそうな気がするし。
「うふふ、ここは屋敷の地下よ」
アデリーさんは嗜虐的な笑みを浮かべると、鉄格子越しに腕を差し入れて俺の頬へ手を添える。
「安心して、何も怖くないわよ。優しくしてあげるから」
「……ココルさんはどうなったんですか?」
豹変したアデリーさんに尋ねると、その表情が恍惚としたものに変化する。
「ココルさんはもういないわよ。いい声を聞かせてくれてたのに、急に静かになっちゃったから」
まったくとんでもない事件に発展したもんだ。まさかの快楽殺人者なのか?
「あなたが殺したんですか?」
「あはは! 結果的にはそうかもしれないわね」
あー、うん。言質は取れたけどなんだかなぁ……。優しい人に見えたのに、残念で仕方がない。
俺は何ともいえない気持ちになりつつも、アデリーさんの行動を待つことにした。
「アデリーさん?」
探査した情報から人物を特定する。てっきり長男のウェルネスと思ったが違ったらしい。他の二人のメイドはまだ仕事中なので部屋にはいない。睡眠薬でぐっすり寝ているはずの俺を連れ出すために来たのはアデリーさんなのか。
できるだけ音をたてないように静かに扉が開かれると、案の定アデリーさんが入ってきた。
「……ちゃんと寝てるわね」
確認するように静かに呟くと、ゆっくりとかぶっていた布団をはがされる。アデリーさんは俺に睡眠薬を盛ったことを知っているのか。ウェルネスから守ってくれていると思っていたアデリーさんだったが違うのだろうか。見た目と違って『優しい』と思っていたのは自分の妄想だったのか。ちょっとショックだった。
そのまま横抱きされる形で持ち上げられ、部屋の外へと連れていかれる。屋敷を出ると、例の地下室へと続く隠し扉を開けて中に入っていった。
コツコツと階段を降りる音が聞こえる。そのままガシャンと鉄格子っぽい扉を開ける音が聞こえ、冷たい地面へと降ろされる。ごそごそと音が聞こえ、カチリと首に何かを取り付けられた。
なんだろうこれは……。気になるけど動くとバレてしまう。
「ふん、さっそく目を付けられるなんてホント災難だわ……。ウェルネス様に食べられちゃう前に私が可愛がってあげるから、ちょっと待ってなさいね」
そう言葉を残すと、鉄格子らしき扉に鍵をかける音を響かせてアデリーさんは去っていった。
「……マジか」
食べられるって……、ウェルネスもやっぱりそういう人間だったのか。いやそれよりも、アデリーさんの『可愛がってあげる』というのもどういうことなのか。調べに来たはずの自分が当事者になっていることも、動揺している一因になっている。
「――まさか」
そこで思い出されるのは副隊長のセリフだ。
『そう構えないで気楽にしてください。黒なのは間違いないので』
気楽にってことは失敗しようがないってことで、つまり俺が狙われる予想がついてたってことか? いやいや、さすがにそれは考えすぎか? でも副隊長ボルドルの胡散臭さを思い出してより一層疑惑を深める。ありえるかもしれない……と。
それにしてもこの首につけられたコレは何だ。ぺたぺたと触ってみるが、継ぎ目のようなものが見当たらない。……コレ取れないんじゃなかろうか。
ラノベでよくあるのは隷属の首輪とかそんなやつか。あとは魔術や行動を封じる系の拘束系か。動けるから身体機能は問題なさそうだ。あとはとりあえず『マテリアルサーチ』を首輪に使ってみる。
「普通に使えるな……」
素材は鉄がメインか。あとはミスリルが少々と、魔術式が刻み込まれた魔石か。
「さすがにどんな魔術式かまではマテリアルサーチじゃわかんないなぁ」
マテリアルサーチの魔術式をいじって改造できればできそうな気がするが、今はそんな時間はなさそうだ。諜報部隊に魔術に詳しい人間はいなかったし、自分で魔術式を改造しようという発想すらなかった。
詠唱と共に魔術式を魔術領域に構築し、それを実行すると魔術が発動すると教えてもらっただけだ。実行するにも意識を集中させる必要があるが、俺には構築の手間がないのだ。逆に、カスタマイズして構築することができないとも言えるが。
「ここから逃げてもいいけど、どうしようかな……」
目の前には鍵の掛かった鉄格子があるが、攻撃系魔術を使えば脱出することは簡単だろう。だけど直接俺に害が及んだわけじゃないから、衛兵に捕らえてもらうにはちょっと弱いかもしれない。結局ここにいなかったココルさんがどうなったかも聞きたいし。また来てくれるまで待つとしますか。
「あら、起きてたのね。無理しなくていいのに」
時刻は夜中だろうか。アデリーさんが地下室へと入ってきて、鉄格子の向こう側からこちらを見下ろしている。
「こ、ここはどこですか……?」
あくまでも怯えた芝居をして、相手が優勢だと思わせるように努める。人間余裕があるほうが、いろいろ喋ってくれそうな気がするし。
「うふふ、ここは屋敷の地下よ」
アデリーさんは嗜虐的な笑みを浮かべると、鉄格子越しに腕を差し入れて俺の頬へ手を添える。
「安心して、何も怖くないわよ。優しくしてあげるから」
「……ココルさんはどうなったんですか?」
豹変したアデリーさんに尋ねると、その表情が恍惚としたものに変化する。
「ココルさんはもういないわよ。いい声を聞かせてくれてたのに、急に静かになっちゃったから」
まったくとんでもない事件に発展したもんだ。まさかの快楽殺人者なのか?
「あなたが殺したんですか?」
「あはは! 結果的にはそうかもしれないわね」
あー、うん。言質は取れたけどなんだかなぁ……。優しい人に見えたのに、残念で仕方がない。
俺は何ともいえない気持ちになりつつも、アデリーさんの行動を待つことにした。
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